安全安心な社会は 経済回復の大前提 セキュリティ関連製品特集

自然災害にコロナ禍加わり 防犯防災意識さらに高まる

世間一般の防災・セキュリティ意識は、自然災害の相次ぐ発生に加えて新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、さらに高まっている。テレワークが急速に進むなか、経済産業省と電子情報技術産業協会はスマートホームのセキュリティ対策ガイドラインを策定した。

8月26・27の両日、インテックス大阪で「防犯防災総合展2021」が開催された。西日本最大の防犯防災分野の展示会として犯罪災害対策から日頃の備えまでリスクと危機管理の最先端を発信し、コロナ禍を踏まえた感染症対策フェアや労働環境改善コーナーといった特別企画も実施された。

8月に開催された防犯防災総合展

10月21〜23日には、東京ビッグサイトで「危機管理産業展(RISCON TOKYO)2021」が開催される。危機管理をテーマにした国内最大級の総合トレードショーとして事業活動を取り巻くあらゆるリスクに対処する最新の製品・サービスが一堂に集結するほか、緊急企画展として「感染症対策TECH」も予定されている。

昨年の危機管理産業展のようす(公式サイトより)

近年の社会経済情勢の変化は、一方で犯罪の多様化や巧妙化を招いている。工場、倉庫、資材置き場等への不審者の侵入・放火が相次ぎ、商品等への異物・毒物混入などは企業の社会的責任の根幹を大きく揺るがすものとなっている。

コロナ禍の影響で1年延期となった東京オリンピック・パラリンピックは、今月5日のパラリンピック閉会式で全日程を終えようとしている。コロナ禍収束後の社会がどこまで変化するかは不透明だが、より高度なセキュリティの構築が求められることになんら変わりはない。

京都コングレスであいさつする菅首相(首相官邸ホームページより)

 今年3月、京都で「第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)」が開催された。オープニングセレモニーに出席した菅義偉首相は、あいさつのなかで「新型コロナウイルス感染拡大という未曾有の危機に際し、世界でサイバー攻撃やオンライン詐欺などが相次ぎ深刻な問題になっているが、こうした犯罪は危機の中で堪え忍ぶ人々の心を踏みにじり、世界が危機を克服することを妨げる。安全安心な社会は社会経済の回復を実現するうえでの大前提であり、国際社会が団結して対処する必要がある」としたうえで、「安全安心な社会づくりには法の支配が極めて重要であり、日本はその確立に向けた国際協力も進める。持続可能な開発のための法の支配の推進、犯罪のない社会の実現に向けた国際協調を掲げる『京都宣言』が今回採択されたが、誰一人取り残さない包摂的で安全安心な社会の実現に向けてしっかり取組みたい」と強調した。

テレワークの急速な普及などいわゆる「おうち時間」が増えるなか、経済産業省は4月、電子情報技術産業協会(JEITA)と連携して策定した「スマートホームの安心・安全に向けたサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」を公表した。詳細は、本紙でもすでに紹介しているが、ガイドライン策定のねらい等について、経産省ならびにJEITA双方のコメントでいま一度確認したい(いずれも公式ホームページより)。

 ■経産省コメント
経産省では、平成30年3月13日に産業サイバーセキュリティ研究会ワーキンググループ1(WG1)の下にスマートホームサブワーキンググループ(スマートホームSWG)を設置し、スマートホームにおける安心で安全な暮らしを実現するための基本的な指針の考え方について検討を行ってきた。
我が国が提唱する「Connected Industries」の重点分野のひとつであるスマートライフ分野では、スマートホームがひとつの核となる。スマートホームは、「子育て世代、高齢者、単身者など、様々なライフスタイル/ニーズにあったサービスをIoTにより実現する新しい暮らし」であり、IoTに対応した住宅設備・家電機器などがサービスと連携することによって住まい手や住まい手の関係者に便益が提供される。
一方で、一般の家庭においてはIoT機器の導入や維持・運用に一貫した計画性がないことが多く、誤使用が発生する可能性もあり、サービスによってはサイバー空間における問題が想定外の開錠や閉じ込めといった現実空間における問題を引き起こす可能性がある。このような問題に対しては、従来からの機器単体におけるサイバーセキュリティ対策に加え、住まいや住まい手の特性も含めて、多様なステークホルダーを交えた検討が不可欠となる。
そのため、スマートホームSWGでは、スマートホームにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策の考え方や各ステークホルダーが考慮すべき最低限の対策をまとめたガイドライン原案について昨年7月29日から8月31日までパブリックコメントを実施するなど策定に向けた検討を進めてきた。
ガイドラインでは、知識やバックグラウンドが様々なステークホルダーに対応するため、シンプルな対策ガイドから具体的な対策要件や国際標準との対比までセキュリティ対策を階層的に整理している。今後、ガイドラインを活用することでスマートホームにおける住まい手の安心・安全の確保に向けた取組が進展することを期待している。

 ■JEITAコメント
スマートライフの中核であるスマートホームは、「子育て世代、高齢者、単身者など、さまざまなライフスタイル/ニーズにあったサービスをIoTにより実現する新しい暮らし」であり、IoTに対応した住宅設備・家電機器などがサービスと連携することによって、住まい手ならびに住まい手の関係者に便益が提供される。
一方で、スマートホーム特有のサイバーセキュリティ上の脅威として㈰膨大な攻撃対象(世帯数はおよそ5300万世帯)㈪マネジメント不在に起因する脆弱性(統制された管理・運用がされなく、セキュリティ対策が不十分)㈫利用者側の誤操作等による想定外のインシデントなどが挙げられ、スマートホームにおけるサイバーセキュリティはサプライチェーン全体で守ることが必要となる。しかしながら、スマートホームへのサイバー攻撃は、住まい手の生命財産に直接に影響するにも関わらず、スマートホームの利用者を含む幅広い関係者全体に向けたセキュリティ対策に関する文献はこれまで存在していなかった。
そこで、JEITAスマートホーム部会では、スマートホームに関係する家電・住宅設備メーカー、サービス提供事業者、住宅デベロッパー等の幅広い関係者の参加を得て日本初となるスマートホーム市場に関わるステークホルダーごとの対策指針を経済産業省サイバーセキュリティ課の委託事業としてまとめた。
ガイドラインを策定したことにより、スマートホーム分野でIoT機器を通じたさまざまなサービスを利用する上で生じる可能性がある情報漏洩、サイバー攻撃、フィジカル空間への被害などへの対策を促し、スマートホーム利用における住まい手の安心・安全の確保の一助になることを期待している。

全日電材連は昨年に続き、全国3都市で「経営戦略としてとらえる事業継続(BCP)策定講座」を開催する。策定講座は当初、自然災害が相次ぐなかで災害があることを前提とした事業活動に備えるとの観点から企画されたが、昨年からのコロナ禍対策としても有効なものとなることが期待されている。
電材流通新聞社が今春実施した全日電材連傘下の主要組合員への「景況アンケート調査」では、期待できる商品として「防災・セキュリティ関連」が依然として各地区で上位にあがっている。
▽全国 58.2%
▽東北 62.5%
▽関東 84.2%
▽中部 62.5%
▽近畿 58.6%
▽九州 62.5%
ユーザーの関心の高まりを受けて、各メーカーは自社が保持する技術を応用したセキュリティ関連の製品を数多く発売している。
「工・製・販」がより緊密な連携をはかることにより防災・セキュリティ市場の活性化はもとより、電材業界そのものの活性化につなげることが求められている。

次のページはメーカー各社の商品戦略です