無電柱化推進特集 各種製品・システムの 低コスト化を前面に

■無電柱化推進計画の概要

我が国では、昭和60年代初頭から電線類を地中へ埋設するなど無電柱化について計画的に取り組まれてきており、一定の整備が図られてきた。しかしながらその水準は、欧米はもとより、アジアの主要都市と比較しても大きく立ち後れている状況である。全国には依然として、道路と民地をあわせて約3600万本の電柱が建っており、減少するどころか増加しているのが現状である。

これまで無電柱化は、防災性の向上、安全性・快適性の確保、良好な景観形成の観点から実施してきたが、近年、災害の激甚化・頻発化、あるいは高齢者の増加等により、その必要性が高まっている。特に、近年の台風や豪雨等の災害では、倒木や飛来物起因の電柱倒壊による停電並びに通信障害が長期間に及ぶケースも報告されており、電力や通信のレジリエンス強化も求められているところである。

このような状況から令和2年12月に閣議決定された「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」により、電柱倒壊のリスクがある市街地等の緊急輸送道路の無電柱化が進められている。

また、新型コロナウイルスの感染拡大による観光への影響は大きいが、訪日外国人をはじめとした観光需要が再び増加することを見据え、観光地等において良好な景観を形成していく必要がある。

無電柱化を強力に進めるため議員立法により、平成28年12月に無電柱化の推進に関する法律(無電柱化法)が定められた。

国では、平成30年に無電柱化法第7条の規定に基づく「無電柱化推進計画(前計画)」を策定し、無電柱化の推進に向けた着実な取組を行ってきたところであるが、多くの課題が残っている。

本計画は、前計画での成果や課題を踏まえ、我が国における無電柱化を一層推進するべく、無電柱化法第7条の規定に基づき、無電柱化の推進に関する施策の総合的、計画的かつ迅速な推進を図るため定めるものである。

■無電柱化推進に関する基本的方針

【取り組み姿勢】
諸外国に負けない我が国本来の美しさを取り戻し、安全で災害にもしなやかに対応できる「脱・電柱社会」を目指すため、以下の姿勢で無電柱化を推進する。

▽新設電柱を増やさない・特に緊急輸送道路については無電柱化を推進し電柱を減少させる
▽徹底したコスト縮減を推進し限られた予算で無電柱化実施延長を延ばす
▽事業の更なるスピードアップを図る

【適切な役割分担による無電柱化の推進】
無電柱化の目的に応じ、従来方式に加えて適切な役割分担により更に推進する。
なお、無電柱化の目的は複合的であるため、以下の役割分担を基本に手法を選定し、無電柱化を推進する。

①防災・強靱化目的
市街地の緊急輸送道路など道路の閉塞防止を目的とする区間は、占用者が一者で電線共同溝方式が困難な区間を除き道路管理者が主体的に実施する。
長期停電や通信障害の防止を目的とする区間、占用者が一者で電線共同溝方式が困難な区間は電線管理者が主体的に実施する。上記が重複する区間は道路管理者、電線管理者が連携して実施する。

②交通安全・景観形成・観光振興目的
安全・円滑な交通確保を目的とする区間、景観形成・観光振興を目的とする区間は道路管理者、地方公共団体等が主体的に実施する。
その他、新設電柱を増やさないため、道路事業や市街地開発事業等が実施される場合には、道路管理者、電線管理者及び開発事業者等の事業者が連携して無電柱化を進める。

11月10日は「無電柱化の日」各地でイベントを開催


京都市無電柱化完成式典(テレビ大阪ニュースより)

東京都オンラインイベント㊤フォトコンテスト入賞作品と㊦パネルディスカッション
(東京都ホームページより)

国土交通省では、無電柱化の取組みの重要性について理解と関心を深めることを目的に11月10日を「無電柱化の日」と制定している。「1」を並ぶ電柱に見立て、それを「0」にするという意味で11月10日としている。
今年の無電柱化の日も、各地でイベントが開催された。
京都市は、先斗町通の無電柱化事業が完了したことを受けて、先斗町歌舞練場で記念式典を行った。
東京都は、2部構成のオンラインイベントを開催。第1部では、無電柱化フォトコンテストの入賞作品発表ならびに表彰を行い、第2部では国土交通省との共催で学識経験者や無電柱化に積極的に取り組む自治体、電気・通信事業者によるパネルディスカッションを行った。

電材流通新聞2021年11月18日号掲載