トップインタビュー 全電連 西村元秀会長

全電連 西村元秀会長


全日本電線販売業者連合会(全電連)の新会長に就任した西村元秀氏は、「銅価の高騰により、電線販売業者の売上は上がり、利益も確保できるようになってきたが、取引適正化ガイドラインと商慣習の改善は行き渡っていない。全電連が中心となって改善していく」と述べた。コロナに関しては「コロナ明けにはDX化が進み、工場の無人化・省力化への投資も進むことから、FA・ロボットケーブルの需要は高まる」とした。全電連の最重要課題としては「組合員全社がコンプライアンスを遵守しながら、1社残らずに利益を上げていくことだ。全電連としてサポートしていく」と述べた。


22年度電線需要 大阪万博、IR案件に期待
最重要課題「組合員全社の利益確保」

—全電連の新会長に就任しての抱負は?
「全電連の組合員数は全国に100社あり、非常に大規模な組織である。銅価の高騰により、電線販売業者の売上は上がり、利益も確保できるようになってきた。しかし、取引適正化ガイドラインと商慣習の改善が行き渡っていないという一面がある。全電連が中心となって改善し、電線販売業界に貢献していく。
コロナ禍で進む企業のDX化については、この波に乗れるように、組合員各社の先導役を担っていく。電線業界に適したデジタル技術の活用について、組合員各社と連携し、生産性を上げていきたい。
そして利益を確保し、働き方改革に取り組みながら、優秀な人材を確保していく。現在、電線流通業界は若返りの時期にある。若い世代の経営感覚を生かして業界全体を盛り上げてもらいたい。
また、電線工業会との情報交換、官公庁との連携は、これまで以上に強めていきたい」

—建設・電販の市場動向は?
「足元の4月、5月の銅電線出荷量は少し下がっている。現在は底で、今後上がっていくと考えている。コロナ禍が明けつつあるので、全国で工事案件が活発になり、建設・電販市場も上向きになるだろう。
関西では25年に大阪万博がある。万博に伴うインフラ整備の需要に加え、その後はIR案件などの需要が控えている。もともと市場が大きい東京では、都市再開発案件が多数ある。現在は五輪後で大型案件は少ないが、中核都市での建設案件も増え、今後上がっていくだろう。
また太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー関連市場は、カーボンニュートラルへの流れもあり、案件が増えている」

コロナ明けDX化に期待

—中長期的な電線需要の見通しは?
「データセンター、物流センターなどの案件が増え、明るいと考えている。設備投資全般でみると半導体関連は活況で、半導体不足が解消されれば自動車関連では挽回需要が見込める。コロナ明けには企業のDX化が進み、さらに工場の無人化・省力化への投資も進むことから、FA・ロボットケーブルの需要は高まるとみている」

—商慣習の改善については?
「物流・配送費の問題は、一部の電設分野を除いてほぼ解決に向かっている。リベート問題については時間をかけて解決していきたい。件名先物問題と年号問題も解決に向かっているが、これまでの『取引適正化ガイドライン』『金属産業取引適正化ガイドライン』に加え、政府より発信された『パートナーシップによる価格創造の為の転嫁円滑化施策パーッケージ』に沿って、さらなる商慣習の改善に取り組んでいく。商慣習の改善については5年ほど前から事業計画のひとつとして掲げているが、現状では、市販関連は7合目、電設関連は5合目くらいまで改善されている」

—建設・電販以外の組合員各社との連携については?
「情報通信、自動車、エレクトロニクス分野などの組合員も増えてきた。電線業界のなかでも、特定の分野だけに傾注してしまうと凝り固まってしまう。ダイバーシティ&インクルージョンというべきか、さまざまな情報を交換し合って連携を強め、お互いの事業に生かすことで、全電連の組合員を増やしていきたい」

—エコケーブル、アルミケーブルの普及については?
「環境にやさしく燃焼時に有害物質が発生しないエコケーブルは、今後普及が期待される。アルミケーブルは銅価高騰から需要が伸びているが、世界基準でみると、日本でのアルミケーブルの普及は遅れている。従来のガソリン車に比べると、EV車では電線ケーブルの量が約4倍になると言われていることから、自動車業界でのさらなる需要増に期待している。アルミケーブルは比較的安価で軽量なことから、優位性を今後もアピールしていく」

—コロナ、ウクライナ紛争、円安などによる物流への影響は?
「2月24日にロシアがウクライナに侵攻して、原油高をはじめエネルギー費が高騰し、銅価も高騰している。諸外国はインフレを警戒して利上げを実施しているが、日本は緩和政策を進めているため、金利差から円安が進んでいる。結果、国内銅建値は5月まで上昇を続け、電線関連各社は製品価格に転嫁することとなった。対応としては銅建値の上昇を顧客・ユーザに説明し、価格交渉を続けていくこと。国際情勢により変動する原材料を使った製品を取り扱っているため、今後も、銅価格の変動は起こる。相場に合わせた製品価格であることを理解していただきたい」

電線の日制定から4年社用車も「1118」

—電線の日(11月18日)については?
「19年に制定された電線の日は、電線業界にとってはとても歓迎すべきことだ。電線をもっと一般的に広めるため、メーカー各社とも連携していく。電線工業会公認の電線アンバサダーに就任した石山蓮華さんは、文筆家や俳優など、活動の幅が広いので、その発信力に期待している。一度、電線流通業界の役割について説明させていただけたらと思っている。また、「1118」という数字も気に入っている(「111」は電線、「8」は無限を表す)。私の社用車も同じナンバーにしている」

—カーボンニュートラルへの取り組みは?
「電線業界全体で取り組む課題のひとつだ。電線工業会の伊藤雅彦会長も、22年度重点活動テーマ4事項のなかで、一つめに掲げている。組合員各社が、電気使用料削減、紙のリサイクル、LED照明への切り替えなど、それぞれ取り組んでいる。
サプライチェーン全体でみると、販売・物流の過程でCO2を排出している。CO2排出を抑えていくことは、解決すべき課題だ」

—全電連の最重要課題は?
「組合員全社がコンプライアンスを遵守しながら、利益を上げていくことだ。1社残らず利益を上げられるよう、全電連としてサポートしていく」

電線新聞 4285号掲載