EV普及を支える充電インフラ設置 EV・PHV用充電器および関連機器特集

国内外の自動車メーカーが電気自動車(EV)の開発に取り組む動きが相次いでいる。
そのEVの普及を確実なものにするために不可欠なのが、EV充電インフラだ。EV充電インフラとその周辺の状況を報告する。

EVが次世代車の主流に

電気モーターを動力源として走る電気自動車(EV)が俄然、存在感を増している。象徴的な出来事が、日産自動車のEV、新型リーフの登場だ。
1回の充電で約400走行(JC08モード)できるようになり、エンジン車と比べてもほとんどそん色がなくなった。価格も400万円を切るものが現れている。EVは地球環境に優しいと理解されながらも、これまでは1充電で走れる走行距離が短いことや高価格が普及を図る上でのネックになっていた。新型リーフは、そんなユーザーの意識を変えてくれそうだ。
他社もEV化の動きを加速させている。トヨタ自動車は、2020年までにEVの量産体制を整え、市場に本格参入する方向という。さらにマツダやデンソーなどとはEVの共同技術開発のための会社設立を決定した。ホンダ技研工業は2030年にEV・PHV・FCVの販売比率を3分の2に引き上げるとしている。三菱自動車は20〜21年をめどに、スポーツ用多目的車と軽の2車種のEV販売を目指している。
こうした“EVシフト”の背景にあるのは、いうまでもなく地球温暖化への意識の高まりだ。走行時に二酸化炭素を排出しないEVは、地球温暖化対策の大きな解の一つとみなされている。
そうした認識はもちろん日本だけに留まらない。
米国、欧州、アジアのいずれもがすでに、エンジン車の販売禁止や、EVの普及促進へと舵を切っている(表参照)。

課題は集合住宅

EVの普及を支えるために欠かせないのが、充電インフラの設置だ。政府(経産省)は16年、「EV・PHVロードマップ検討会 報告書」を作成。インフラ普及のための青写真を描きながら、補助金なども使って設置を後押ししてきた。進捗状況を見ると、とくに同年以降、設置が進み、17年現在、設置された基数は約2万8千基に上っている(グラフ参照)。

充電インフラには急速充電器と普通充電器があるが、急速充電器は15〜30分程度で約80%の充電が可能。一方、普通充電器は十分な充電までに8時間とか10数時間かかるのが一般的。したがって、急速充電器は経路充電といった道の駅や高速道路などへの設置に向いている。これに対し、普通充電器は、住宅(基礎充電)やショッピングセンターなどの身近な商業施設、宿泊施設、駐車場など(目的地充電)に設置されることが多い。急速充電器よりも低価格なため、導入しやすいともいわれる。政府は、経路充電、目的地充電、基礎充電などごとに設置目標を設定し、普及を図っている。
課題は、集合住宅への設置がほとんど進んでいないことだ。日本の住宅は4割が共同住宅で、EV試乗希望者の住居も4割が共同住宅とされる。にもかかわらず新築マンションでの充電設備の設置比率は1%未満という状況だ。道路や宿泊施設などと比べても、遅れが際立っている。このため政府は、マンションへの設置率を上げるためには、業界をあげての取り組みが必須と訴えている。
住宅への普及についても「既設住宅への工事費が高いから、整備が進まない。まずはデベロッパーに設備の必要性を認識してもらい、新築住宅に充電器を標準装備してもらう。そうすることでユーザーの認知へという好循環につなげていきたい」と考えている。

エネ・マネには不可欠に

消費するエネルギーを、省エネや、エネルギーの創出で賄おうという住宅が「ネットゼロエネルギーハウス(ZEH)」。政府は地球環境保全の重要な取り組みの一つとして、この普及を位置付けている。流れが本格化していけば、エネルギーの効果的な管理がより求められるようになる。そこで「ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)」と並んで注目されているのがEV充電インフラだ。
家庭内で消費した太陽光発電の電気の余りは、EVインフラを通してEVの蓄電池に充電しておけば、その電気をEVの走行以外にも自由に使えるなど、有効活用が見込める。EVの電気を家庭内で使うことで、電気使用料を減らしたりピークカットが行えるなど、メリットは大きい。三菱電機はここに早くから目をつけ、EV用パワーコンディショナー「スマートV2H」で、太陽光で発電した電気をEVに充電したり、EVの電気を取り出して家庭で使ったりできることをアピールしている。充電インフラは従来、住宅からEVに充電するだけの一方向型が主流だったが、これからはEVから住宅に給電もできる双方向型が主流になっていきそうだ。
4月に東京で開かれた「スマートエネルギーウィーク」でも、ニチコンがEVの役割を「街中を走る」ものから「家庭で使う」ものへ転換させようと、双方向型の「EVパワーステーション」を展示。大きめのスーツケース大の可搬型給電器「パワームーバー」も併せて訴求した。東光高岳は、EV用パワーコンディショナー「スマネコV2H」を出展。充電も給電もできることを訴えた。
さらにここにきて新たな関心を集め始めているのが、ワイヤレス給電システムだ。非接触による電力伝送方式で、地面などに送電装置を、車に受電装置を設置、充電場所に車を止めるだけで充電ができる仕組みだ。いずれは、次世代の選択肢として普及が進むと見込まれている。電材・電気工事業界にとっても、新たな技術の展開には目が離せない。 各国で進むEV化の波 (大和住銀投資顧問作成) 急速充電器と普通充電器の内訳(出典:経済産業省)

電材流通新聞2018年5月17日号掲載