光の国から大勢やってきた
令和の今、男の子が憧れるヒーローといえばメジャーリーガーの大谷翔平選手か、プロボクサーの井上尚弥チャンピオンか、はたまた歌って踊る三代目 J SOUL BROTHERSか、意外とお笑いコンビのサンドウィッチマンか!? いや、昔も今も変わらないでしょう。ヒーローといえば、光の国から僕らのためにやってきた『ウルトラマン』です。
戦後20年を経た昭和41(1966)年1月、怪獣だけが登場するSF特撮テレビドラマ『ウルトラQ』が放送を開始。次いで同年7月、いわゆる初代の『ウルトラマン』が始まりました。そして時は流れて令和5(2023)年7月、シリーズ最新作の『ウルトラマンブレーザー』がスタート。60年近くにわたって40作以上のシリーズが生まれ、もはや何人いるかよくわからない永遠のヒーロー! それが『ウルトラマン』なのです。
ヒーローといえば、ひっさつ技だ!
ライダーキック、かめはめ波、筋肉バスター、ハニーフラッシュ(?)などなど、ヒーローといえば必殺技です。漢字だとちょっと怖いので、子ども向けの本のように「ひっさつ技」と書くことにします。
ちなみに、平成25(2013)年の『ウルトラマンギンガ』以降は“ニュージェネレーションヒーローズ”と呼ばれ、現時点で一番新しいのが『ウルトラマンブレーザー』で、そのテーマは“コミュニケーション”だそう。いかにも新世代ヒーローらしく時代を反映した設定のようですが、しかし、ウルトラマンシリーズは昔から単純な勧善懲悪のストーリーではなかった気がします。子どもながらに考えさせられる話が多いのです。今だに根強い人気の『ウルトラセブン』など、ダンとアンヌの関係性にドギマギしたものです。……それはちょっと意味が違いましたね。
さて、それはともかくとして、ここでは初代『ウルトラマン』のひっさつ技に注目してみましょう。そう、スペシウム光線です。
スペシウムって何だ?
男性なら、まねしたことがないとは言わせません。左腕を横に右腕を縦に、両腕を十字形にクロスして腰を低く落とし、狙いを定めて放つスペシウム光線のポーズを。僕たち地球人の手からは何も出ないので、口で「ビーーーッ」などと言いますが、ウルトラマンの右の手刀部分からは青白い光線が勢いよく放射され、怪獣をババーンと爆破します。
最初から出せばいいのにと子ども心に思ったスペシウム光線ですが、そもそも「スペシウム」とは何でしょう? 調べてみると、火星に存在するという元素でした。原子番号は133番。名称はスペース(宇宙)とイウム(物質を意味する接尾語)を合わせた造語と考えられます。もちろん、これはウルトラマンシリーズだけに登場する架空の物質であり(作品によって設定は多少違うようです)、現実の世界で発見されている原子は今のところ118番のオガネソンまでですが、もし「スペシウム」が見つかれば、地球人も光線が撃てるようになるかもしれませんね。知らんけど。
スペシウム光線は“レンチン”なのか!?
ウルトラマンのスペシウム光線にはマイクロ波が含まれているのではないか、というのが『空想科学読本』の著者である「空想科学研究所」柳田理科雄先生の考察です。
マイクロ波とは、ごく簡単に説明すると、電磁波の一種で電気と磁気の波のことです。波とはつまり電波のことで、電磁波の一種であり、空間を伝わる電気エネルギー波です。……すみません、堂々巡りになってしまいました。専門的なことは分かりませんが、とにかく、マイクロ波はさまざまな分野に応用されていて、身近なところではテレビの放送や携帯電話の通信、カーナビのGPS、電子レンジなどにも使われています。
そう、電子レンジはマイクロ波で食べ物を温めます(「電気の豆知識」2022.03.02も見てね)。マイクロ波を食物に照射すると、食物の中の水の分子が1秒間に24億5千万回も振動し、摩擦熱が発生して食物を温めるという仕組み。その温度は百数十度です。一方のスペシウム光線は、なんと50万度! 太陽の表面温度の80倍以上ですから怪獣もたまらないでしょう。さらに――
「ピコーン、ピコーン、ピコーン……」
おおっと、カラタイマーが点滅し始めました。もう帰らなければいけません。それでは、お先に失礼します。シュワッチ!
ウルトラマンのDATA
★身長・・・・・・40メートル
★体重・・・・・・3万5千トン
★最大飛行速度・・マッハ5
★出身地・・・・・M78星雲・光の国
(「円谷ステーション」ホームページより)