電気の豆知識 ~いつか役立つ!? 電気にまつわる雑学篇~ 「扇風機」

秋は、いずこに

子どもの頃、こんな童謡をよく歌いました。「小さい秋、小さい秋、小さい秋~♪」見つかりません! 秋の風情はどこへやら、いつまでも暑い現代日本の夏。エアコンは今や生活必需品といえますが、皆さん、扇風機をお忘れではないでしょうか。最近は羽根のない扇風機や、扇風機とは似て非なるサーキュレーターなど、新しいタイプも登場しています。

ということで今回は、地味に活躍している扇風機に注目してみましょう。いえ、地味どころか、その進化に驚いて目を回してしまうかもしれません。扇風機だけに。

昔の扇風機は手回し

電気のない時代、人々はうちわや扇子でパタパタとあおぎ、暑さをしのいでいました。でも、そのうち、どこかの誰かが考えるわけです。「もっと楽に大きな風を起こせないものか」と。知らんけど、きっとそうなのです。そして、実際に作ります。5、6枚のうちわを円状に取り付けた手作り扇風機を。これは「うちわ車」と呼ぶそうで、江戸時代の書物などにその絵が描かれています。

今の時代から考えれば冗談みたいですが、当時としては画期的な発明品で、それなりの値段だったのでしょう。商家などで使われていたようです。もちろん手動です。手でグルグルと回して風を起こします。よけい暑くなりそうな気もしますが……。

江戸時代から明治時代にかけてのうちわ車は少数ながら現存していて、中には著名な絵師がうちわの絵柄を描いたものもあり、生活道具というよりは芸術品さながらの趣です。元来、日本の夏は風流だったのです。

目まぐるしく進化する扇風機

世界で初めて電気で動く扇風機が誕生したのは19世紀後半のアメリカといいますから、今から130年ほど前です。発明者は一般的にエジソンといわれていますが、他説もあり、定かではないようです。

国産初の電気扇風機が登場したのは明治27(1894)年、東芝の前身である芝浦製作所が開発しました。

引用:東芝未来科学館

黒く厚い金属の羽根で、直流エジソン式電動機の頭部には白熱電球が付いており、スイッチを入れると羽根が回ると同時に電球が点灯するというもの。一般社団法人家庭電気文化会の「家電の昭和史」サイトによると、当時の電気は電灯しか認められていなかったために電球を付けたといわれているそうです。

大正の頃には他メーカーも参入して、昭和期には色もデザインも豊富になり、プラスチックの羽根が採用され、高さ調節、タイマー、ワイヤレスリモコンなど、特に戦後から高度経済成長期にかけて機能性がアップします。もちろんモーターも小型軽量化されて性能が良くなり、運転音や振動が少なくなりました。

扇風機とサーキュレーターはどう違う?

令和の今、扇風機は家庭用から工業用まで多種多様です。形状も床置き型から卓上用、壁や天井に取り付けるタイプ、クリップ式、最近では手持ちや首に掛ける超小型の扇風機まであります。

そして、記憶が正しければ、日本では2000年代に入ったあたりから急速に普及したのが「サーキュレーター」です。当初は「ズボン」をおしゃれに「パンツ」と呼ぶようになったのと同じで、単に扇風機の呼び名を変えただけかと思っていたのですが、違いました。どう違うのか?

扇風機は、うちわや扇子と同様、人体に風を当てて涼しさを感じ取るものです。一方のサーキュレーターは、冷暖房の効率を高めるなどの目的で、部屋の空気を循環させるもの。従ってサーキュレーターは年中使用します。双方の基本的な構造はほとんど変わらないそうですが、扇風機は風を広範囲に送るのに対して、サーキュレーターは風を直線的に遠くまで送れるよう設計されています。

まあ、サーキュレーターの風だって体に当てれば涼しいのですが。とにかく、いつの時代も扇風機は私たちに新しい風を送ってくれるのでした。