電工さんの工具箱  第33回「レーザー距離計」長い距離も瞬時に計測。

日本を歩いて測った江戸時代

「千里の道も一歩から」というけれど、伊能忠敬(いのうただたか)が歩いた距離は3万5000キロメートルというから、八千里以上だ。というか、ほぼ地球1周だ。そう、伊能忠敬とは、江戸時代の後期に精密な日本地図をつくった人物である。寛政12(1800)年からまさに足掛け17年、4000万歩を歩きながら測量し、日本列島の正確な形を明らかにした。驚くのはまだ早い。忠敬が測量の旅に出たのは50代半ば、計10回の全国測量の旅を終えたときは71歳になっていた。しかも、平均寿命が30~40代とされる江戸時代での偉業。これはもう偉人というより超人だ。
江戸時代の商人であり、地理学者・天文学者の顔も持つ忠敬は、弟子たちとともに列島の海岸線を歩き、当時の測量技術を駆使して少しずつ地図を作製した。といっても200年以上前のこと、なにか便利な機械があるわけではなく、簡単にいうとA地点からB地点に目印を立てて距離を測るのである。距離の目安は忠敬の歩幅、69センチメートル。いつでも正確に一定に歩けるよう、あらかじめ訓練をしたそうだ。まさに一歩一歩、道なき道を進んでつくった“伊能図”とも呼ばれる「大日本沿海輿地全図(だいにほんえんかいよちぜんず)」は、現代の地図と比べても見劣りしない驚異的な精度だという。

伊能忠敬さんにもおすすめしたい

ボッシュ株式会社 レーザー距離計 GML50C Professional

忠敬さんは腰を抜かすほど驚くことだろう。なにしろレーザー距離計は数百メートル、物によっては1000メートル以上の距離を瞬時に計測してしまうのだからビックリ仰天である。一度これを使うと、その便利さから、もう手放せなくなるらしい。
レーザー測定器やレーザー測距計などとも呼ばれるレーザー距離計は、文字通り、レーザー光線を用いて距離を測定する機器であり、さまざまな工事現場や製造現場、また土地の調査などに幅広く使われている。電気工事も現場が工場や大きな商業施設などの場合、あるいは障害物があって巻き尺では測れないときなど特に重宝する。
レーザー距離計は、さまざまなメーカーから多種多様な製品が販売されているが、大きく分けると次の2タイプがある。

〈屋外対応タイプ〉

数十メートル、数百メートルといった比較的短い距離をミリ単位の誤差で正確に測定するタイプと、誤差は大きいものの1000メートル前後まで測定できるタイプとがある。

〈屋内用タイプ〉

数メートルから100メートル以下の距離を極めて少ない誤差で測定できるタイプが豊富にそろっていて、価格も比較的リーズナブルなものが多い。

また、最近はBluetooth(ブルートゥース)などの機能を使って、測定データをパソコンやスマートフォンに転送できるタイプが人気のようだ。歩幅で測っていた時代から、今やレーザーで測ってデジタルで管理する時代だ。測定技術も日進月歩である。