電気の豆知識 ~いつか役立つ!?電気にまつわる雑学篇~ 「大型映像装置」

近未来ニューヨークの「強力」なCM

SF映画の金字塔、1982(昭和57)年に製作された『ブレードランナー』の舞台は近未来のロサンゼルス(設定は2019年)。その未来都市にそびえる巨大なビルの壁面に、なぜか日本の胃腸薬「強力わかもと」のCMと芸者らしき女性がでかでかと登場します。これを見た日本人は一様に驚きましたが、なんと当時は無許可だったらしく、一番びっくりしたのは当のわかもと製薬の人たちだったとか……。この無国籍で混沌としたロスの街の雰囲気は、リドリー・スコット監督が自ら訪れた歌舞伎町に着想を得たといわれています。
ともあれ、現実に21世紀の今、大型映像は屋外広告をはじめ、各種の案内表示や展示演出、コンサートやスポーツなどのイベントにも欠かせないツールとなっています。今回は、そんな大型映像の小ネタをちょっと集めてみました。

東西の大型映像から宇宙まで

1980(昭和55)年4月、東京都新宿区の「新宿アルタ」というビルの壁面に、縦7.2m・横12.8mの巨大な「アルタビジョン」が登場しました。これが日本初の大型街頭ビジョンだそうです。当初はオレンジ色の白熱電球を用いたモノクロームの映像でした。LEDに変わるまでは、けっこう電気代が高かったのではないでしょうか。その「新宿アルタ」も2025(令和7)年2月に閉館し、ビジョンも放映を終了しましたが、かつてビル内のスタジオでは、平日お昼の名物テレビ番組『森田一義アワー 笑っていいとも!』の公開生放送が行われていたのでご存じの人も多いでしょう。
一方、西に目を向けると、アルタが登場した翌年の1981(昭和56)年7月には阪急の大阪梅田駅1階コンコースに、その名も「BIG MAN」という大型ビジョンがお目見えしました。何度かリニューアルされ、現在の大きさは縦2.6m・横4.6m。大阪キタの待ち合わせ場所としても親しまれています。
80年代の大阪で待ち合わせ場所といえば、思い出されるのがミナミの「ロケット広場」でしょう。南海なんば駅に隣接した吹き抜け空間は現在「ガレリアコート」と呼ばれていますが、その昔は「ロケット広場」という失礼ながら少々やぼったい名称で、その名の通り、全長30m以上もあるロケットが地下1階から空に向かって立っていました。その傍らに、当時流行のDCブランドファッションを身に付けたオシャレな男女が待ち合わせで立っていたのです。なぜロケットなのかというと、1977(昭和52)年に日本初の静止衛星「きく2号」打ち上げられ、また、アメリカ映画『スター・ウォーズ』が公開されるなど、当時は宇宙ブームだったらしく、広場のロケットは「きく2号」を搭載した「N-1ロケット」の原寸大レプリカで、本物と同じく三菱重工業が製造したのだそう。単なるオブジェではなかったのですね。
ついつい話が横道にそれてしまいましたが、「ガレリアコート」となった広場には今、「なんばガレリア ツインビジョン」が設置されています。

ネコ飛び出しちゃった3D映像

最近の大型映像は大きいだけでなく、飛び出すのでびっくりです。有名なのが、2021(令和3)年7月に突如現れた「新宿東口の猫」。JR新宿駅東口駅前、旧「新宿アルタ」の隣に立つビルの最上階にある「クロス新宿ビジョン」から巨大な三毛猫が飛び出しました。しかも、動いたり鳴いたりしゃべったりするではありませんか。その様子はSNSやメディアを通じて大きな話題となり、今や新宿の新しいランドマークです。
ビジョンの大きさは縦8.16m・横18.96mという150㎡を超える大型で、画質は4K相当とのこと。しかし、どうして飛び出して見えるのでしょう。公式ホームページから抜粋すると、「人の目の錯覚を利用して、新宿東口の駅前広場からクロス新宿ビジョンを見た時に、立体的に見えるように細かく計算して、動画を制作しているため」だそう。また、「背景の白い部屋の手前に、猫の耳やしっぽを出すことで、人間の脳が勝手に奥行きを感じて、飛び出したように感じ」るのだとか。なるほど、うーん、アタマから「?」がいっぱい飛び出します。

巨大で幻想的な水のスクリーン

現在(2025年4月13日~)開催されている「大阪・関西万博」でも、国内外のパビリオンやイベント会場の「EXPOアリーナ」など、さまざまな場所に大型映像装置が導入されています。中でも注目を浴びているのが、サントリーホールディングスとダイキン工業が共同出展している水上ショー「アオと夜の虹のパレード」でしょう。
ショーの映像を映し出すのは水。つまり、ウォータースクリーンです。水上に設置された門型のモニュメントから流れ出る水のカーテンに動画が投影されます。その大きさは高さ約18m・幅約17mという巨大さで、約300基の噴水やレーザー光線、音楽、炎といった演出と連動して夜空に幻想的な世界を描き出します。
水質の関係で一時休止されていますが、再開されれば、ぜひ見ておきたいエンターテインメントです。