新社長に聞く/因幡電機産業 玉垣雅之社長

因幡電機産業株式会社 玉垣雅之社長

—社長に就任しての抱負は?

 「2月26日にメディア向けに発表があったが、その1カ月ほど前に喜多肇一社長(当時)と守谷承弘会長(当時)に呼ばれ、社長をやってくれないかと単刀直入に持ちかけられた。理由を聞くと、喜多社長から、会社のことをよく理解していること、バランスよく複数の事業部門を経験していることと告げられた。入社して38年になり、会社に恩返しができるのであればと思い、社長になる覚悟を決めた。現在はまだ、社長として果たして何ができるのか自問自答している状態だ」

 —就任後にまず取り組みたいことは?

 「できるだけ早く短い期間で、それぞれのカンパニーのお客様の会社に出向いてご挨拶することだ」

 —これまでで印象的だった仕事は?

 「プライベートブランド『JAPPY』の開発に携わったことだ。各メーカーが一から設計・製造するのではなく、各メーカーの標準品をJAPPYブランドとしてラインナップしている。JAPPYは、全国の物流拠点に必ず在庫を置くことがコンセプトで、在庫量も多いため顧客に対して即納体制で対応できる。メーカー側としては、発注ロットが多いため製造時のコストを低減でき、販売拠点も多いため、メーカーも当社もウィンウィンとなる。従来からJAPPYブランドは存在したが、こうしたコンセプトを編み出して軌道に乗せたことが印象的だ」

 —これまでの経歴で経営者として生かしたいことは?

 「経営企画室長時代に、上場企業のあり方を学んだことを生かしたい。投資家対応に従事する中で、投資家はスチュワードシップコードをもとに活動し、企業側はコーポレートガバナンスコードに沿って経営するという資本市場の枠組みが多少は身に付いた。これは今後も避けては通れない世界であるため、こうした知識を深めていきたい。

 また、産業機器カンパニー時代の営業経験で鍛えられた部分は、生きてくるだろう。メーカー様やお客様を大切にすること、素早い対応、礼儀作法などは、経営者になっても変わらないビジネスの本質だろう」

 —24年度の事業実績を振り返ると?

 「売上高3千840億1千200万円(前年度比11.2%増)、営業利益255億5千600万円(同19.9%増)の増収増益で、4期連続で過去最高業績を更新した。売上高2桁増に伴い利益率も増加しているので、販管費では物流費や、昇給やベースアップを含む人件費の上昇分をカバーできている」

都市再開発物件が大型化

 —25年度の業績見通しは?

 「売上高3千920億円(前年度比2.1%増)、営業利益267億円(同4.5%増)で微増の見通しだ。電設市場が端境期にあたるため、控えめな見通しとなっている。施工現場では人手不足や労働時間の規制がありながらも、都市再開発の物件は大型化している。全体的にみると物不足は解消されているが、受配電盤はまだ需給が逼迫している。工期が後ズレしてしまい、その分減収になる可能性がある。こうした背景から控えめな見通しとなっているが、ここ数年は営業努力により、最終的には増収増益となっている」

 —25年度の電設資材事業の見通しは?

 「銅ベースに左右されるが、現在1㌧あたり150万円前後で推移し、事業見通しとしては、昨年の上昇分からは少し落ち込むと予想している。今後は原材料の高騰から、人件費や物流費の高騰が理由の値上げが続いて原価はアップするが、数量を増やしていく方針のため、微増の見通しだ」

 —25年度の産業機器事業の見通しは?

 「昨年度は電子部品や制御機器の在庫が増え、上期は足踏みしたが、第3四半期から受注が回復した。今年度の第1四半期は前年同期比では復調している。ただし、半導体関連がブレーキとなり、期初に想定していたほどは伸びないだろう」

 —FA・ロボット市場の見通しは?

 「当社は協働ロボットを中心に取り扱っているが、大きな伸びはなさそうだ。当社のロボット取り扱いは、海外製のユニバーサルロボットの代理店業務からスタートし、やがて産業ロボットのAGVが売れるようになった。自動化や省人化といった市場は今後も拡大するため、Slerと連携したソリューション展開を推進している」

 —25年度の自社製品事業の見通しは?

 「自社製品事業は、ルームエアコンと業務用エアコンの売上にかかっている。日本冷凍空調工業会の自主統計によると微減の見通しだが、今後も当社のシェアを維持することが重要だ。トレンドとしては、温暖化の影響で北海道や東北でも夏用のエアコンが売れる傾向にある」

通信サブコン向けエンジニア人材を強化

 —今年4月の組織変更の狙いは?

 「電設カンパニーでは、エンジニアリング統括部を、情報通信設備を取り扱うエンジニアリング第1統括部と、発電システムを取り扱うエンジニアリング第2統括部に分割した。電気設備事業でエンジニアの人材を強化するためだ。オフィスビルや商業施設では設計段階から通信サブコンありきで進むことが増えてきたため、市場が伸びている通信設備と電気設備を分けて提案力を磨き、それぞれの機能を明確にすることが狙いだ」

 ——米関税の影響は?

 「現場からもはっきりした影響は聞こえてこない。まだ、米政府の動きをしっかり注視しておくという段階だ。米中貿易摩擦や追加関税の影響で、米国内の景気が冷え込むことが懸念事項だ」

 —コスト高の影響は?

 「適正な売価への価格転嫁で対応している。少子高齢化により人材確保が日本の社会課題になってきたため、人件費高騰分の価格転嫁はしやすくなっている」

 —北米への拡販に向けた事業方針は?

 「販社の開拓など流通経路の拡大を進めている。米国内に在庫を置いて販売していくという物流網の整備にも取り組んでいる。これまでは米国向けはスリムダクトがメインだったが、アステム(ASTM)規格を取得できたため、今後は被覆銅管も販売していく」

 —欧州への拡販は?

 「まだ拠点を持たないため、マーケティング活動を推進している。米国・日本とは文化が違い、カラーだけでも好みがあるため、欧州向けの必要な製品ラインナップを調査している。また、販社の開拓など流通経路の確保にも取り組んでいる」

 【趣味】読書(伝記)とゴルフ。

 【略歴】玉垣雅之(たまがきまさゆき)氏は、1964年1月27日生まれ、大阪府出身。87年3月に同志社大学商学部を卒業し、同年3月に因幡電機産業に入社。08年4月Eテック事業部東日本営業部長。13年4月商品事業部企画部長。14年4月商品事業部商品開発部長。16年4月商品本部JAPPY部長。17年4月PB統括部長兼eビジネス営業部長。18年7月執行役員経営企画室長。23年4月執行役員経営企画室長兼サステナビリティ推進室長。24年4月執行役員経営企画室長。25年4月執行役員。25年6月代表取締役社長に就任。

電線新聞 4401号掲載