電化製品になったトイレ

「おしりだって、洗ってほしい。」というキャッチフレーズで「TOTOウォシュレット」が世に登場したのは1982(昭和57)年のこと。「手が汚れたら洗いますよね、こうして紙で拭く人っていませんわよね」と、“元祖ふしぎちゃん”と呼ばれる戸川純さんが手に付いた絵の具を紙で拭くテレビCMは衝撃的でした。手のひらに広がる絵の具を見て「確かに!」と激しく納得させられたものでした。安心してください、絵の具は青色です。
実は、ウォシュレットが発売されたのはその2年前なのですが、このCMが世間の認知度を一気に高めました。広告表現として巧みだっただけでなく、お茶の間で家族そろって見ていたテレビで、トイレだのおしりだのと大っぴらにいうこと自体が驚きでした。
ついでに申しますと、当時の広告業界は“コピーライターブーム”で、このキャッチコピーは、業界では有名な仲畑貴志さんの代表作の一つです。
ちなみに「ウォシュレット」はTOTOの、「シャワートイレ」はINAX(LIXIL)の登録商標です。それらの言い換えは「温水洗浄便座」といいます。従来は建築設備であり衛生器具であったトイレを電化製品にしたのは、この温水洗浄便座でしょう。
日本人のおしりはピカピカ⁉︎
TOTOのテレビCMがセンセーショナルだったので、てっきりINAXが後発かと思いきや、日本初の温水洗浄便座は、INAXの前身である伊奈製陶が1967(昭和42)年に発売した「サニタリイナ61」という製品だそうです。スイッチを足で踏むとノズルが伸びて温水を噴射し、スイッチから足を離せば温風が吹き出す仕組みで、当時のカタログに記載されている通り「トイレの常識を打ち破った」画期的な新製品だったようです。
今や海外の人々が一様に驚くわが国の多機能トイレですが、温水洗浄便座は日本発祥ではありません。米国で医療用に開発されたのが始まりで、1964(昭和39)年に東洋陶器(TOTOの前身)がアメリカから、伊奈製陶はスイスから、それぞれ輸入・販売を開始しています。それらも主に医療用で、一般家庭のトイレはまだ和式が主流でした。
和式トイレから洋式トイレへの転換が急速に進んだのは1970年代後半です。昭和世代にとって洋式トイレは“未知との遭遇”でした。公共施設などで初めて洋式を見て使い方がわからず、和式のように便座にまたがって用を足す人もいたくらいです。
令和の今、ご存じの通り一般家庭でも公共施設でも主流は洋式トイレで、温水洗浄便座の普及率も、水洗トイレで2人以上の世帯では80%を超えているそうです。もちろん、ダントツで世界一です。
私たちはもう何もしなくていい
乾いた土や砂、植物の葉や茎、海藻、木の皮や木片、縄、わら、トウモロコシの毛や芯……。これらは、トイレットペーパーがない時代に人間がおしりを拭いていたとされる物の例です。なんだか痛そうです。
それが今や、トイレは洗濯機と同様、全自動の時代になりました。最新の温水洗浄便座は単なる電動ではなく、制御用マイコンを内蔵することで自動化・多機能化を実現しています。
便座を温めて待っていてくれて、おしりを温水で洗い、温風で乾かして、臭いまで消してくれます。おしりだけでなく便器も自動洗浄で、最近は便座のふたも自動開閉です。そのうち、パンツまで下ろしてくれるかもしれません。








