街路灯・公園灯・道路灯特集

安全・安心だけでなく人や景観などへの配慮も

横浜市ではリース契約でのLED化を始める
IoTなどを活用し 情報化照明の展開も

道路灯や街路灯、公園灯といった屋外照明は、道路や公共空間に欠かせない。最近は、LED化だけでなく、情報化の動きも見られる。今回、そうした道路灯や街路灯、公園灯などの現状を報告する。

道路灯で事故が大幅減少
道路灯や街路灯、公園灯といった屋外照明は、道路施設や公共空間の重要な構成要素をなす。とりわけ、そこを行き交う人々の安全・安心を確保する手段としては、不可欠のものだ。
とくに道路照明の場合、その有無と交通事故の発生との間には密接な関係があるといわれ、その役割は大きい。時間帯別の交通事故発生状況を見ると、死亡事故は日没後の18〜20時にピークがあるとされる。陽が落ちて薄暗くなり、ドライバーのものの見え方(視認性)が低下することなどが要因と推察されている。さらに時間帯別の死亡事故率は、18時ごろから上昇し始め、24時〜6時に著しく高くなっている。居眠りなどと合わせ、やはり視認性の低下が影響を及ぼしているものとみられている。
ドライバーの視認性には、自動車のヘッドライトや沿道の明るさ、交通量も影響を与えているが、中でも決定的に重要なのが道路照明だといわれる。道路照明を設置・改善したことで、ある高速道の区間では夜間の交通事故が56%も減少したという調査結果もある(パナソニックホームページ)。道路照明が、人の安全・安心にとって不可欠とされるのは、こうした理由からだ。

快適性、今後一層重要に
もちろん屋外照明にとって必要な要素は、安全・安心にとどまらない。
周辺に配慮することも重要なことだ。道路を明るくするだけではなく、その光が道路以外のスペースに漏れないようにする。道路沿いに住宅や店舗があれば、それらに影響を与えないようにするといったことだ。
光害に配慮することも求められる。2008年には、上方光束比が依然として増加しており、業界の掛け声にも関わらず光害対策が進んでいないことが明らかになった。実効のある対策を真剣に考える必要がある。
人への配慮も必要だ。最近は屋外灯の光源もLEDが増え、それに伴ってまぶしさ(グレア)を訴える人が出ている。道路灯などを主力製品としているメーカーでは、グレア対策に最大限の力を注いでいるところもある。
忘れてならないのが、景観への配慮だろう。照明器具のデザインや光源の光色は街並みを構成する重要な要素だ。夜間だけでなく、昼間の時間帯にも周囲になじむことが要請される。
安全・安心に対比させるなら、これらは照明の快適性要素といえるだろうか。人の心理や生理面にも影響を及ぼす照明は、機能性だけでは語れない。これからの時代には、そういった心に寄り添う部分もより重要性を増していくことだろう。

屋外照明もLED化進行
「道路照明」という言葉は1937(昭和12)年ごろから使われ始めたが、それが普及したのは高度成長期に入った60年代における高速道路の整備によってだとされる。63年には道路照明基準が制定された。70年代初頭には第一次石油ショックが起こり、エネルギー効率の高いナトリウムランプ(HID)が道路照明光源の主流に躍り出た。
07年になると、日本初の白色LEDを使用した道路照明が、大阪府道14号大阪高槻京都線に設置される。LEDは長寿命であり、発光部も小さく用途に応じたデザインがしやすいうえ、調光制御ができるという、これまでにはない構造上の特徴を有していた。以後、屋外照明の世界でもしだいにLEDが主流になりつつある。
高度成長期以降に大量に設置されてきた道路照明は、一部で老朽化も進む。全国の自治体の中には、ここにきて道路照明の長寿命化や省エネ計画に取り組むところが少なくない。例えば、群馬県は「道路照明の省エネ・長寿命化計画」を立て、2015年から21年にかけて灯具のLED化を進めている。愛知県岡崎市では、約2500基の道路照明を管理しているが、その多くは高度成長期に設置されたもので、老朽化が目立つ。市では修繕計画を策定して、維持管理に取り組む。神奈川県の寒川町は道路照明施設計画を立て、水銀灯をLED道路灯に更新する作業などを行っている。
光源の特性を考えれば、HIDが主流を占めていた屋外照明も間もなく大半がLEDに置き換わっていくのは間違いないだろう。

防災・創エネ新たな潮流
既存の設備の更新が始まる一方、新たな動きも見られるようになってきた。横浜市は今春、リース契約を活用した道路照明のLED化を始めた。17年に「水銀に関する水俣条約」が発効したのを機に、一般の水銀灯約1万6千基を、18〜19年の2か年計画でLEDに置き換える。市がリース事業者とリース契約を結んでLED照明器具を納入してもらい、それを保守委託業者(市内の中小企業)に支給するというものだ。残りの水銀灯である特注水銀灯約1万基も、現行の保守委託内で個別に交換し、同じく19年を目途にLED化を目指すという。埼玉県日高市は、昨年度に市内の300W以下の道路照明灯約4千基をやはりリース方式でLED器具に更新した。
東京都町田市は、停電した時にもあかりが消えない「消えないまちだ君」を数年前から市内各所に設置している。既存の街路灯の柱の中に蓄電池を設置。普段は系統電源で照明しながら蓄電池に充電し、災害時には蓄電池の電気であかりを灯す。どんなときでも、住民に安全・安心を届ける仕組みだ。
パナソニックソーラー街路灯は、さらに一歩前を行く。晴天時には太陽光で発電した電気を蓄電池に溜め、夕方周囲が暗くなると自動的に点灯する。もちろん災害時も、消灯の不安はない。しかもコンセントがついているので、非常時にはスマートフォンや携帯電話に充電したり、ラジオにつないだり、拡声器の電源を取ったりすることもできる。創エネ機能に防災機能も備えた街路灯だ。三井不動産リアルティ(東京都)は、それらに防災用品も整備したソーラーLED街路灯の設置を全国で進めている。 最近は、技術革新の動きを反映し、IoTなどを活用したさまざまな情報化照明の展開も。軸受け大手のNTN(大阪市)は、太陽光や風力でLED照明を自動点灯するNTNハイブリッド街路灯に、大阪大学が開発した無線LAN通信設備を連携させた情報インフラの構築に取り組んでいる。最近は、技術革新の動きを反映し、IoTなどを活用したさまざまな情報化照明の展開も。軸受け大手のNTN(大阪市)は、太陽光や風力でLED照明を自動点灯するNTNハイブリッド街路灯に、大阪大学が開発した無線LAN通信設備を連携させた情報インフラの構築に取り組んでいる。

電材流通新聞2018年6月28日号掲載