【市場動向】HEMS特集~新たな機能でさらなる進化~

エネルギー利用最適化に不可欠
新たな機能でさらなる進化

HEMS市場は、2016年の約66億円から、2025年には、16年比81.1%増の120億円へ拡大するといった見方もあるなかで今後、どのような進化、拡がりをみせるのか。さらに、これに向けた電材業界の取り組みなど、注目すべき点が多い。

「家庭用エネルギーマネジメントシステム。IT(情報技術)を活用して、一般家庭における家電などのエネルギー消費効率化を図るシステム。各種の電気機器をネットワークで連結し、センサーでとらえた室内状況(人の有無など)に応じて各機器を最適に自動制御する」(大辞林第三版より)
断るまでもなくHome Energy Management Systemの解説だが、この程度の知識なら誰しも持ち合わせている。というよりも、その発展形としてのZEHなどに市場の関心が集まっているようだ。 また、最近、AIマンションが市場を賑わせつつある。
ZEHには搭載されていない学習能力をもつAI機能が搭載されているのが大きな特色だ。
AIマンションは、顔認証システムでドアのロックが解除され、部屋に入れば、センサーが感知して自動的に照明が点灯し、空調が作動するというもの。センサーの多用により、人間の動作の約8割をAIが代行できるという。
コスト的に高くつくこともなく、健康な人体の維持に疑問符が付く以外、とくに問題はないようだ。
このAI機能がZEHに搭載されれば、加速度的に普及が伸びるとみる意見もある。
ところで、こうした市場の動きに対して電気工事ならびに電材業者はどのような取り組みをみせるのか、この点が大いに気になるところ。
その一環と位置づけられるのが、工・販・製が三位一体となって新しい電気のカタチを提案する「スマートパワーネットワーク活動(スマートパワー運動)」だ。
この点について、全日本電気工事業工業組合連合会の米沢寛会長は、本紙インタビューのなかで次のように語る。
「いままで、製・販・工でいろんな話をさせていただいたが、AIやIoTに関しては、我々はメーカーさんや電材店さんの力を借りなければならない。これがうまくいけば、リニューアルや新築の仕事が入ってくると思う。
ただ、現状をみていると、それぞれのメーカーさんが機能を開発しているが、メーカー間の互換性があまりない。便利な機能なのに、つながりがうまくない。これは問題である。
それぞれは良いものなので、どこかで調整する必要がある。顧客の方は知識を持っているので、それぞれのメーカーの製品を選んだ場合、さまざまなリモコンが必要になるのでは困る」
一方、電材業者はどうか。全日本電設資材卸業協同組合連合会の若林邦彦前会長の総会の席上でのあいさつから、関連部分を摘記する。
「全日電工連の米沢会長から我々に依頼があったのは、IoTについての勉強会をメーカーさんと一緒になって開催してほしいということ。
2016年に電力小売りの完全自由化、2017年の都市ガスの小売り自由化、確定はしていないが、2022年にはスマートメーターの完全設置完了を目標としている。2022年がIoT元年になるのではないか。
これにともなって、電気工事士の資格にプラスして、通信の資格もないと工事が請けられないという状況になってくる。
業界そのものが高齢化してくるので、新たな人材もしくは再教育ということになるが、我々としては、工・販・製の三位一体でしっかりと取り組んでいきたい」
要約すれば、IT(情報技術)の取り込みにより、電材業界にもinnovation(イノベーション、技術革新)の波が押し寄せている。HEMSは、その代表的なもののひとつといえるだろう。
ところで、シンクタンクの見方によれば、2016年のHEMS市場は約66億円だった。それが2025年には、16年比81・1%増の120億円へ拡大する見込み。
これは、新築住宅のZEH化や、蓄電池の導入の増加などから、エネルギー利用の最適化にHEMSが必要とみられるためだ。
いずれにしても、HEMSは、新たな機能の追加によりさらなる進化、拡がりをみせる可能性があり、今後とも市場の動きに目が離せない。

電材流通新聞2018年8月2日号掲載