電工さんの工具箱 第9回「メジャー」計り知れない進化。

 一寸法師の身長は何cm? 

日本でメートル法が完全実施されてから、実はまだ半世紀ほどしかたっていない。それまでは尺貫法が使われていた。尺貫法とは、中国大陸や朝鮮半島から伝来し、独自の発展を遂げた日本古来の度量衡法であり、長さの単位に「尺」、質量の単位に「貫」、体積の単位に「升」、面積の単位に「歩(または坪)」を用いる。明治以降はメートル法と併用されていたが、1959(昭和34)年に原則として廃止され、1966(昭和41)年にはメートル法に統一された。以後、取り引きの書類などを尺貫法で記入すると5万円以下の罰金が課せられたという。5万円といえば当時の大卒初任給の倍ほどの値段である。しかし、実際はメートル表記の後にカッコ書きで尺や坪が併記されるなど、やはりすぐにはなじめなかったようだ。
「巻尺」という名称も、巻尺によく見られる5.5mや7.5mといった半端な長さも、尺貫法の名残りだろう。建築業界では今でも尺貫法が残っている。ちなみに、尺貫法には、建築などに用いる曲尺(かねじゃく)と和裁などに用いる鯨尺(くじらじゃく)とがあり、前者の1尺は約30.3cm、後者の1尺は約37.9cmだ。1寸は1尺の10分の1なので、昔話の「一寸法師」は鯨尺でも身長4cm足らず…、お椀から顔が出ないのではないだろうか。

必要なのは正確さと腰の強さ

巻尺は現在、メジャー、スケール、コンベックスと、さまざまな名称で呼ばれているのはご存じの通り。長さや材質、用途なども多種多様であり、細かくいえば定義や規格も異なるようだが、広い意味ではすべて同じものを指す。電気工事士はスケールと呼ぶ人が多いのではないだろうか。いずれにしても、現場作業において計測は基本中の基本だ。安価なスケールの中には、先端部の爪を押し当てたときと引っ掛けたときの寸法が違うといった困った物もあるので、信頼できるメーカーの製品を選びたい。正確さは当然として、もう一つ必要なのは腰の強さだ。たとえば、脚立に乗って天井面の長さを測るとき、遠くまで伸びるテープの腰の強さである。測っている途中でテープが「カシャン…」と折れるほど空しいことはない。そのため、幅20mm以上のスケールを使っている電気工事士が多いようだ。

株式会社マーベル:マグネット付メジャー『インチワイドGP ゴムプロテクター』

さらに最近は、誤って落とした際に床材へのダメージを最小限に抑えるラバーで覆われたタイプ、ベルトホルダーに素早く着脱できるタイプ、傾斜角も測れる角度計付きのタイプ、そして非導電タイプなど、高性能で多機能な製品が数多く登場している。
スケールの進化は計り知れないのだ。