アイキャッチ:グーグルのデータセンター
OTT牽引、規模10倍超 電力、通信インフラがボトルネック
データセンター(DC)市場が、好調に推移している。ガーファ(GAFA=グーグル、アップル、フェースブック、アマゾン)などOTTが需要を牽引しているためだ。一方、それ以外の一般企業向けDC市場は微増程度。従ってOTT向けの電線や光ファイバ、コネクタ、ラック、サーバなどのメーカー・商社等と、そうでないケースでは受注等にやや温度差が発生。ただ今後、5G(第5世代移動通信システム)時代の到来を控えていることも含め、DCサプライヤーは総じて活気がある。
好調なDC市場を牽引するのはOTTが軸となっている。OTTのDC建設規模は、一般的な国内DCに比較し、10倍以上に達する。いわゆるハイパースケールDCだ。OTTでは同時に、BCPやバックアップを兼ねて同じ規模のDCを3棟建設する。
業界では21年には世界のDCトラフィックは、年間153ゼタバイト(ZB=1兆ギガ)に達すると予想。この世界全体IPトラフィック量の内訳は、OTTのDC内またはDC同士のやり取りが75%、一般DC15%、その他DC。これだけOTTはDC需要の主流になっている。さらに日本でOTTのDC建設投資が活発なのは、光海底ケーブルの陸揚げ拠点・アジアへの中継拠点があることによる。一方、OTTを除く国内DC市場は、微増または横バイの年間1千500億円程度に留まっている。
増設を進めるOTTサイドなどからは、国内の既存の電力網と情報通信網の脆弱さを指摘する声が挙がっている。これは、今までと桁違いの電力・情通インフラが必要になるためだ。
ちなみに現状、OTT等のDCが多い地域は、東京圏は千葉・印西市と東京・多摩地区、関西圏は兵庫・三田と大阪・茨木市などと名古屋の一部。いずれも大都市及びその近くにあり、大電力や大容量・高速伝送/処理に適しているためだ。これ以外に地盤が固く地震に強いことも条件となる。とりわけ印西市にOTTのDCが多いのは、地盤に加え、米国等からの光海底ケーブル陸揚げ拠点・施設に近いという要因もある。
また、寒冷地はDCの排熱処理に適していても、最近の異常気象や温暖化で、寒冷地でも気温上昇を想定した温度調節設備が必要なうえに、大都市圏並みまたはそれ以上の電力・情通のインフラ配備も求められる。
また、このDC需要の恩恵を受ける日本の電線メーカーなどは一部に留まる模様であり、受注するのは、光ファイバを含め高付加価値及び最先端の製品、特に低価格な製品を供給したりしている企業といえる。または北米等で海外生産し販促力にたけたケースに限られている。また、情通系はほとんどが光配線のみ。
OTTはDC建設で、日本での現地調達に適したもの以外は、欧米勢システムインテグレータによって全てグローバル手配し、北米等の本国から日本へ船便コンテナで輸送する。製品は、サーバーや光ファイバ等のキー製品に限らず、椅子一つまで選定されている。CVなどの電力ケーブル周りも同様。
5G本格的に動けば、DC市場は一層拡大
DCフロアー内の設備・配線の構築は、各種の機器とその光ケーブルなどは既に、キッティング(設定)されており、まるでプラモデルを作るようにキットで組み上げる仕組みで実施。この方式の方が工期が短縮でき、高品質なためという。電源・電気系の配線は、管路を用いたバスダクト方式をメインに天井型もあり、いずれも予めキッティングしてある。一方、日本方式は、ラックを配備してから、配線などを行うケースが大半で、工法や製品選定に大きな差がある。
従って現在、日本の電線メーカー等のDC対象市場は、年間1千500億円規模の見込み。対照的にOTTの市場(国内のみ)は単純計算すると1・5兆円強となる。
ただ、5Gの流れが本格化すると、市場が大きく変貌する可能性も秘めている。OTTだけでは、対応できなくなる場合も想定できる。例えば5G網を利用した自動運転の時に、クルマのセンサー信号処理は僅かの遅延も許されず、一般DCの対応が必要になり、DC需要は未知数だ。
電線新聞4156号掲載