生産額が1000億円の大台を突破
2018年度のインターホンの生産額が1千億円の大台に載せたが、これは通過点にすぎず、多少の紆余曲折があっても、金額が上積みされていくのは間違いなく、その動因となるインターホン工業会(市川周作会長)の各種事業には、これからも目が離せない。
通過点のひとつとはいえ、18年度においてインターホンの生産額が1千億円の大台に載せた。インターホンの動向と不可分の関係にある住宅着工が足踏み状態にあるだけに、関係者にとっては達成にひとしおのものがあるかも知れない。
昨年の需要環境について市川会長は、年頭所感のなかで「新築住宅着工は戸数で前年同期比(1月~10月)97.1%の77万9千戸となった。また、工業会生産統計は、国内総需要期間合計で同104.6%(同)となり、集合住宅向けが牽引している」と振り返った。
もとより、生産額の増加については、工業会の各種活動が貢献しているのもたしかだ。自主認定制度「HQI(High Quality Interphone)」の普及と認知度向上、リニューアル促進といった活動が代表例である。
インターホン自主認定制度は、「戸建住宅、集合住宅、病院などで重要な役割を担うようになったインターホンについて、個人・法人のお客様に選択の便をはかるため、インターホン工業会がその機能・性能に関わる技術上の必要な基準を定め、インターホン自主認定技術基準に申請品が適合していると評価した製品を『HQI認定品』として認定する制度(機関誌「たいわ」より)」である。
その認定マークは、ISO9001認証を取得し、国内においてアフターサービスなどの実施体制が整備されたメーカーが申請して工業会の自主認定技術基準に適合した機器であることを示すものである。対象製品には、非常警報付を含むドアホンをはじめ集合住宅インターホンの集合玄関機・管理室親機・増設管理室親機・住宅親機・増設親機・住戸玄関子機のほか、ナースコールインターホンの親機がある。
一方、リニューアル促進の活動(インターホン設備更新の認知度向上)では、劣化診断資格者講習会開催のほか、劣化診断資格者制度の認知度アップを展開している。
劣化診断資格者講習会は昨年同様、今年も東京(年1回)で開くが、来年は関西など地方で開催することも検討中。
15回目となる今回は、8月27日、東京都港区芝浦のTKPガーデンシティPREMIUM田町4階が会場となる。
これらの活動と関連して、同工業会はWebサイトで「安全・安心にインターホン設置(システム)をお使いいただくために… インターホン劣化診断と保守契約・定期点検」を推奨している。
劣化診断は、比較的長期間使用している設備を対象に、通常の保守・定期点検では確認困難な環境・経年による劣化度を、診断資格者が多項目の診断表にもとづき、専門的かつ客観的に診断、評価して、顧客へのアドバイスを行うもの。
診断する資格者は、同工業会が開催する資格者認定講習会において業務に必要な知識・試験で所定の成績を修め、工業会に登録されている者。
同工業会では、「インターホン機器は、家庭や集合住宅および病院・高齢者施設などで“なくては困る”必需品として年々重要な位置を占め、利用者の安全と安心に深く関わってきている。集合住宅のオートロックシステム、病院・介護施設・高齢者住宅の連絡システムとして、日常から緊急時まで24時間活躍しているインターホン。もし使えなくなったらどうしますか。インターホンは電気製品なので、電子部品の劣化などでいつかは故障する。突然のダウンで大きなトラブルになる前に、いま一度メンテナンスが必要」と呼び掛けている。
ところで、同工業会の事業として、その動向が注目されるもののひとつに「Vision2025」がある。工業会の設立50周年を機に作成され、新たな社会的ポジションを確立しつつ、持続的成長をめざすのが狙い。
昨年1年間の成果として、市川会長は「着実に実践することができた。具体的には、工業会Webサイトで“インターホンの日”クイズ懸賞キャンペーンを実施し、8千人の応募をいただき、一般家庭における使用期間等の情報が得られた。また、戸外表示器(SD)審査の効率化への取り組みや、インターホン自主認定制度における住宅向けナースコールの認定数増加への取り組み、劣化診断資格者認定制度では、資格者へヒアリングを実施。さらに、インターホン更新推進キャラクター『こうし・ん君』によるリーフレット展開など、一層の発展への取り組みを進めた(「たいわ」年頭所感より)」と振り返る。
「Vision2025」の概要は次の通り。
□重点施策
①顧客との「つながり」を保ち、安心して使える環境を提案
②最新技術との「つながり」による安全、安心、快適、便利の追求
③関連業界・システムとの「つながり」に取り組み、多様化するニーズに対応
□課題
①市場成長減速への対策
コモディティ化への対応(新たな付加価値検討)、新市場探索・関連市場への拡大検討
②設備ライフサイクルのしくみ構築
長期使用に伴うビジネスリスクへの対応(経年劣化事故への対応)、住宅ストック市場への対応
③周辺システムとの連携拡大への対応
他システムとの連携ニーズ拡大への対応(新たな制度対象化)、連携拡大に伴う複雑さ・あいまいさへの対応(手間、リスクの増加、責任分解点不明確化)
④フローバル化への対応
国際規格化への対応(国内標準から国際標準への進化←グローバル化への対応)、EPA・FTA進行への対応検討
何度もいうように、インターホンの生産額1千億円突破は、通過点のひとつにすぎない。今後、多少の紆余曲折があっても各種事業を通じて金額を上積みしていくことは間違いない。そういった意味でも、今後の動向と併せて、工業会の活動に注目していきたい。