発電時に二酸化炭素を排出しないため、クリーンな電力として知られる「太陽光発電」。太陽の光を利用して発電するため、石油のように枯渇してしまう恐れもありません。
太陽光発電は家庭でも導入できるため、自宅で発電した電気で光熱費を節約できるというメリットがあります。さらに、ソーラーパネルを設置する最大のメリットとしては、余った電力を電力会社に売却できるという点が挙げられるでしょう。そんな太陽光発電ですが「2019年問題」と呼ばれる電力の販売価格に関する課題が残されています。
2019年問題について触れる前に、まずは、太陽光発電の歴史について確認してみましょう。
太陽光発電の歴史
次世代の電気エネルギーというイメージが強い太陽光発電ですが、その歴史はなんと1839年まで遡ります。その頃の日本はまだ江戸時代で、大塩平八郎の乱が起こり、まだ開国もしていなかったような時期でした。フランスの物理学者、アレクサンドル・エドモン・ベクレルが物体に光を当てると電力が発生する現象「光起電力効果」を発見しました。
この発見が、太陽光発電の元となる太陽電池開発に繋がるのは、さらに115年後のこと。1954年、アメリカのピアソン、フラー、シャピンという3人の研究者たちが「結晶シリコン太陽電池」と呼ばれるものを開発したのです。
実はこのシリコン太陽電池、開発しようとして生まれたわけではありません。元々、従来の乾電池では熱帯地域など過酷な環境では耐えられず、代替となる電池を開発する必要があったため生まれたもの。それが現在まで浸透している太陽光電池に繋がるというわけです。
そして1958年、ついに太陽電池が実用化されます。今でこそ、一般家庭でも導入されている太陽電池ですが、当時はとても高価なものでした。さらに、当時の太陽電池は電力変換率が6%(現在の太陽電池の電力変換率が約15〜20%)だったこともあり、一般層には普及しませんでした。
ではどこで使用されていたかというと、人工衛星の電力源でした。宇宙空間では、電力を外部から補充することができません。そこで活躍したのが太陽電池。1958年、アメリカが打ち合げた人工衛星「ヴァンガード1」に太陽電池が搭載され、その後6年間ヴァンガード1の電力を供給し続けたのです。(衛星写真はイメージです)
世界で太陽電池が生まれた翌年、日本でも太陽電池が開発されます。とはいえ、やはり一般家庭などで使用されることはなく、限定的な場面でのみの利用に留まっていました。
そんな太陽光発電が、いよいよ電力として注目を浴びることになるのは1974年のこと。1973年に第四次中東戦争が勃発したことによる第一次石油危機、いわゆる「オイルショック」が起こったことがきっかけでした。
当時、ほとんどのエネルギー源を石油でまかなっていた日本にとって、このオイルショックはかなりの打撃に。自動車や鉄道といったダイレクトに影響のある部分だけでなく、紙やトイレットペーパーの買い占め騒動、節電やテレビ番組の休止など、影響は多岐に渡りました。
そして、いかに日本が石油に頼っていたかということが明らかになりました。結果として、太陽光をはじめとする、原子力や風力など新たなエネルギー源を導入していこうという流れになったのです。
太陽光発電を導入するメリットは?
さて、現在では一般家庭にも浸透している太陽光発電ですが、冒頭で触れたように「2019年問題」が懸念されています。
2019年問題について知るには、2009年に開始した「固定価格買取制度(FIT制度)」という制度に触れる必要があります。この制度は、家庭で発電した電力を、電力会社が一定期間決まった額で買い取ることを保証するというもの。ソーラーパネルなどを設置するのにも費用がかかりますし、固定の価格が保証されているのは大きなメリットですよね。
FIT制度が定めた一定の期間というのが「10年間」。つまり、制度が開始した2009年の10年後となる2019年に、買取が保証されなくなってしまう、というわけなのです。もちろん、FIT制度の期間を過ぎたからといって売却自体ができなくなってしまうわけではありません。
しかし、徐々に売電価格は下がりつつあります。例えば、10kW未満(出力制御対応機器設置義務なし)の売電価格は、2018年は26円/kWh、2019年は24円/kWh、そして2020年には21円/kWhと目に見えて下がっているのです。せっかく太陽光発電を導入するなら、やはりできるだけ高く電気を買ってもらいたいものですよね。
では、2020年現在、太陽光発電を導入するメリットはあるのでしょうか?売電価格は下がっているとはいえ、やはり光熱費を抑えられるという点はかなり大きいでしょう。また、災害が起こったときにも非常用として電力を使用できるというのも安心できるポイントのひとつ。
導入当初のシステム価格を見てみると、現在のソーラーパネル設置費はかなり下がっています。(図A参考)つまり、今太陽光発電を導入するなら設置コストはかなり低くて済むというメリットがあるのです。
【図A-太陽光発電の国内導入量とシステム価格の推移】
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/solar/index.html
出典:エネルギー白書
とはいえ、2019年問題も含め、天候の変化により電力が得られる割合が変わるなど、まだまだ課題もある太陽光発電。環境に優しく、ローリスクハイリターンという印象がある太陽光発電ですが、やはり万能なエネルギー源というのはなかなか実現しないようです。
オイルショック後の日本では「1つのエネルギー源に頼りきらない」ということが指針となりました。複数のエネルギー源を組み合わせることでリスクを分散するという狙いがあるのです。
さらに、現在の日本においてエネルギー源は「3E+S」という、「エネルギーの安定供給(Energy Security)」「経済性(Economy)」「環境保全(Environmental Conservation)」に「安全性(Safety)」という4つの観点が重視されています。2011年に起きた東日本大地震と、それによって起きた福島第一原子力発電所事故をきっかけに制定されました。
実際、オイルショック以前には石油の供給が75.5%だったのに対し、2016年には39.7%と大幅に下がっています。代わりに、オイルショック当時は1.0%程度だった再生エネルギーの利用が、7.0%にアップしています。(図B参考)
【図B-日本の一次エネルギー国内供給構成の推移】
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/energyissue2018.html
出典:総合エネルギー統計 経済産業省 資源エネルギー庁より
2019年問題や天候問題など、太陽光発電がさまざまな問題を抱えていることは事実です。しかし風力発電や水力発電などと組み合わせることによって、これらの問題は必ずクリアできるはず。今後は地球温暖化などの環境問題の救世主となるべく、またエネルギーの安定供給といった観点からも、さらに太陽光発電が普及していくことを願いたいものです。