コロナ後新ニーズ対応が必要 沖縄物流拠点など新設
泉州電業株式会社 西村元秀社長
泉州電業の西村元秀社長は、取材のなかで「コロナ後のニーズの変化に即した製品展開や販促策が求められる」と述べた後、「注力製品として、ビニルハウス向け農業用アビルヒーターや協業型ロボット(オムロン製)を据え、(双方とも高付加価値製品であり汎用性が高く)期待している」と語った。また、物流・加工、営業面でも充実・強化を図る。「その第1弾として、5月6日に沖縄物流センター(那覇市)を設立した。第2弾として、名古屋にFAセンターを新設し、23年の業務開始を目指す。営業面では、コロナ後の需要増に応じ、ここ3年間のうちに新拠点・店舗を増やす」意向を示した。
―コロナ禍において御社のビジネスへの影響はどうか?
「コロナ禍の影響は受けたものの、回復が早かった。特にこの上半期は予想以上、早期に盛り返し、需要は上向いてきた。
例えば、当社の21年10月期上期(20年11月~21年4月)の連結業績予想は、当初は増収減益だった。しかし実際の上期業績は、11.9%増収、経常利益9.3%増になるなど全利益で好転した。要因は、半導体製造装置市場の活況のほか、中国市場のコロナ禍からの立ち上がりが早かったためである。さらに銅価高も寄与した。
加えて、通期(20年11月~21年10月)連結業績予想も上方修正し、増収、全利益で増益を見込む。今後、ワクチン接種が進めば、感染者数が減り、景気が好転し、当社にとってもビジネス環境は上向く」
―御社の分野別の市場見通しは?
「当社は①直需(工作機械・産業機械、自動車設備、半導体・液晶製造業向けなど)、②電材・市販(電設資材販売者向け)、③電設(電気工事業者向け)の3分野で構成されている。①直需は、半導体製造装置が、IoT、DX、5G用の電子・デジタル機器向けに一部の部材等で品薄感が発生するなど活況なうえに、先行きグローバルで工作機械や自動車設備分野は徐々に上向くだろう。また、倉庫や工場の自動化がさらに進むと捉えている。②電材・市販向けも最悪期を脱し、次第に動き出す見通し。③電設は、大阪地区再開発、万博関連の各種建設や首都圏再開発などが控えている」
―銅価高や石化高への対応は?
「もともと電線のビジネスは薄利。そうした中、銅価高や石化高で仕入れ価格がアップしている。この材料費のコスト増分の値上げ交渉を進めることが急務。コスト高になることを顧客にきちんと説明し、理解し納得していただけるよう、不退転の決意で取り組む」
―物流費の上昇への対応は?
「物流費高分の値上げ交渉も、市販向けを中心に進んでいる。ただ、未達なケースもあり、今後とも粘り強く値上げ交渉に取り組む」
上期連結業績子会社が健闘
―あらためて伺うが、御社の概要は?
「事業所は、国内に17拠点(うち加工は7工場)を持ち、さらに増やす方針。子会社は国内に5社、海外5カ国に6拠点を抱える。これに加えて、8月1日には米国に拠点(SEA社、本紙8月9日付け号参照)を設立し、グローバル展開を一段と加速させる。
得意先は4千社近くあり、幅広い業種で構成しているのが特色だ。仕入先は約300社。電線ケーブルの常備在庫数は、約5万品種以上。倉庫総床面積は約6万㎡で、さらに拡大する予定。これらをベースに即納態勢、オリジナル商品、商品加工のビジネスモデルで技術商社を目指す。同時に業容を広げる。
一方、分野別の売上高割合については、①直需30%、②電材・市販50%、③電設20%。先行きは銅価変動を除き、活発な海外展開などもあり、①直需の割合が増える見込みである」
―ところで御社の上期業績で、特徴的なことは?
「上期連結業績では、親会社・本体よりも、国内外子会社の方が貢献した。国内子会社の大半は、ここ10年以内で当社グループ傘下に入った。これら国内子会社の貢献度が特に大きく、当社にとってM&Aが大切と思った。
とりわけ、半導体用コネクタの製造子会社や、自動車製造ライン向け電気設備を担当している子会社などの業績の好調が目立った。今後も、当社の事業に近いところでシナジーが発揮できる企業があれば、積極的にM&Aを行いたい」
―今年度の事業戦略で特徴的なことは?
「営業拠点のスクラップ&ビルドを進めた。スクラップの点では、営業面での効率化を主眼に、東京東営業所(千葉県)を4月末に閉鎖した。東京東営業所の商圏を、東京支店と埼玉営業所でカバーしている」
沖縄物流センター開設 新FAセンターも計画
―ビルドの事業戦略は?
「コロナ後を見据え、物流・加工、営業拠点面での充実・強化を図る。
第1弾として、5月6日に沖縄物流センター(那覇市)を設立した。1階平屋建てで、広さは300~400坪。物流機能だけに限らず、営業マンが常駐し、沖縄エリアの販促展開も図る。従来は福岡支店(福岡市)がカバーしていたが、現地の需要増を見込んで沖縄拠点を設けた。
第2弾は、名古屋にFAセンターを新設する計画。その土地の確保に動いており、22年に着工し、23年には竣工して業務を開始したい。総工費は約15億円。
名古屋支店は、設立後30年経過し、手狭になってきた。そのため名古屋支店では、倉庫や制御盤などの加工工場を方々に賃借しながら凌いできた。それを新FAセンターに集約して、効率的な運営を図る。名古屋支店と新FAセンターとの両輪で、新しいニーズに対応していく。
新FAセンター設立後は、約2千坪のスペースと加工・物流能力(名古屋支店を含む従来比5割増)を備え、名古屋支店の一部業務も移管する。事業の主軸は、自動車製造設備関連になるだろう。
営業面ではコロナ後の需要増に応じ、ここ3年間のうちに新拠点・店舗を増やすプランだ」
―御社の注力製品は?
「いくつかあり、例えば、ビニルハウス向け農業用アビルヒーターや協業型ロボットなどである。アビルヒーターは、省エネでカーボンニュートラルに最適。さらに苗付け後に設置でき、作業性が良い。植物の生育促進、導入費用が安価で大きな設備を必要としないなどのメリットを持ち、農家の反応も好評である。また、これは醸造業にも活用できる可能性を備えている。協業型ロボット(オムロン製)は、各種の工場向けなどで拡販する意向だ。
一連の注力製品をはじめ、取扱全製品について、コロナ後にニーズが変化し、それにマッチした製品が求められるだろう。いずれにしても変化に適した製品や販促策が必要になる」
―中期経営計画については?
「24年10月期には、連結売上高1千億円、営業利益50億円を目指す。今期の業績次第では、前倒しで達成できそう。ただ、これは一里塚に過ぎず、さらに上を目指す」
―今年の重要課題は?
「コロナ禍・コロナ後を生き抜き、新しい成長路線に乗ることである」