富士キメラ総研 「Society5.0」の実現に寄与 する電子部品の世界市場調査

市場は着実に拡大

富士キメラ総研はこのほど、「Society5.0」の実現に寄与する電子部品の世界市場を調査した。この調査では、Society 5.0関連の電子部品として、センシング・非接触HMI関連15品目、精密制御関連6品目、無線通信関連3品目、低損失伝送・ノイズ対策関連部材4品目、その他注目デバイス4品目の市場を調査したほか、Society 5.0に関わるサーバー・エッジ機器10品目の市場を調査・分析し、将来を展望した。

Society 5.0とは、2016年に内閣府による第5期科学技術基本計画において提唱された、日本が目指すべき超スマートな未来社会の姿である。Society 5.0では、IoTで人とモノがつながることで情報を共有し、AIでの解析などにより必要な情報を見つけて分析し、ロボットや自動走行車などを自動制御することで様々な課題の解決が期待される。現在、IoTやロボット、AI、ビッグデータといった新たな技術が進展しており、これらの先端技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れることで経済発展と社会的課題の解決を両立していくSociety 5.0の実現に向けて、準備が進められている。また、それらで使用される様々な機器で採用される電子部品の需要増加も予想される。

■Society 5.0関連の電子部品市場

2021年の市場は前年比15.1%増の4兆2887億円が見込まれる。20年時点で1兆円以上の市場規模であるセンシング・非接触HMI関連デバイスや低損失伝送・ノイズ対策関連部材は今後も市場をけん引していくとみられる。また、精密制御関連デバイスや無線通信関連デバイス、その他注目デバイスも高い伸びで推移するとみられ、27年には2020年比2・3倍の8兆4610億円が予測される。

【センシング・非接触HMI関連】
最も市場規模が大きいのはミリ波レーダーで、ADASの進展により自動車における搭載員数が増加している。また、自動運転において安全性に寄与するデバイスであることから需要が高く、今後も高い伸びが期待される。空中ハプティクスデバイスは、現在サンプル出荷段階であるが、新型コロナの感染拡大を受けて非接触操作のニーズが高まっていることから、今後採用が広がるとみられる。

【精密制御関連】
最も市場規模が大きいのはピエゾアクチュエーターで、特に、データセンターで需要が増加しているHDD向けの採用が増えている。そのほか、空気圧ゴム人工筋肉は産業用・介護用でソフトロボティクスを実現する部品として注目されており、今後高い伸びが期待される。

【無線通信関連】
セルラーモジュール・AiPが市場をけん引しており、近年は自動車で採用が増加している。そのほか、LPWAは電源確保が課題のIoTセンサー向けの低消費電力通信デバイスとして伸長するとみられ、物流やインフラ監視用途などで採用が広がると予想される。

【低損失伝送・ノイズ対策関連部材】
最も市場規模が大きいのは積層セラミックコンデンサーで、自動車での搭載員数の増加やIoT化によるセンサーモジュールなどの増加により伸びている。誘電対応銅張積層板は高速伝送に欠かせないデバイスとしてサーバーやRFモジュールで採用が増えるとみられ、さらなる低誘電化を目指した開発が進められている。

【その他注目デバイス】
小型酸化物系全固体電池は、2021年以降量産開始を予定している企業が複数あることから市場は拡大していくとみられる。今後、IoTセンサーユニットなどで採用が進むと予想される。

【注目の市場】
●LPWA


LPWA(Low Power Wide Area)は低消費電力で広域をカバーする無線通信技術であり、主にIoT用途で使用される。免許不要の周波数帯域を用いる規格(アンライセンスバンド)と、セルラー通信をベースに構築され、免許が必要な規格(ライセンスバンド)に大別される。
スマートメーターの普及率上昇や、製造業・物流業における無人化・省人化の流れを背景に、市場は拡大してきた。2020年は新型コロナの感染拡大を受けて上期に実証実験や設置工事の滞りがみられたことから伸びは鈍化した。一方、新型コロナの影響によりさまざまな用途で無人化・省人化のニーズが高まっており、21年は新規の案件増加に加え、前年の反動もあり市場は前年比29・3%増が見込まれる。

●積層セラミックコンデンサー


酸化チタンやチタン酸バリウムなどの誘電体と電極を多数積み重ねたチップタイプのセラミックコンデンサーを対象とする。
2020年は、新型コロナの感染拡大を受けてスマートフォンや自動車の生産が下方修正されたことから伸び悩みが懸念された。しかし、年間を通してPC関連需要の増加、下期にはスマートフォン関連の需要の回復などにより、生産量が拡大した。21年は、スマートフォン関連の需要が停滞しているものの、ノートPCや自動車関連の需要が好調であることから、前年比7・9%増が見込まれる。今後もカーナビやECUなど自動車での搭載員数の増加やIoT化によるセンサーモジュールなどの増加により、市場拡大するとみられる。

●非接触スイッチ


ディスプレイと組み合わせて用いられる非接触タッチパネルと、オン/オフ操作などのタッチスイッチを非接触対応させた非接触タッチスイッチを対象とする。
2020年は新型コロナの感染拡大により、非接触タッチスイッチやタッチパネルのニーズが高まったことから各メーカーによる開発、製品化が活発化した。21年には昇降機向け非接触タッチスイッチや航空チケット自動受付端末向け非接触タッチパネルがそれぞれ実用化し、市場が立ち上がるとみられる。今後も非接触・コンタクトレスニーズは高まると予想される。特に、FA機器や自動券売機など不特定多数の人が操作を行う端末で需要が増加し、市場拡大が期待される。

電材流通新聞2021年10月14日号掲載