大手電線4社21FY決算 コロナ前の水準に回復

4社ともに増収増益 銅価高騰、円安の影響も

大手電線メーカー4社の21年度決算が出そろった。全社が増収となり、利益面でも営業利益・経常利益ともに、全社が増益となった。コロナ禍の影響を大きく受けた20年度から業績が回復し、新型コロナの影響をまだほとんど受けていなかった19年度と比べても、フジクラがわずかにその水準に届かなかったほかは、3社が前々年度の売上高を上回った。

大手電線メーカー4社の21年度業績は、前年度と比べて大きく改善したが、実際にはこの改善傾向は、前年度下期から始まっていた。20年度はコロナ禍が始まった上期の落ち込みを下期の回復で取り戻すには至らなかったが、21年度業績は全体的に期間を通じて堅調で、コロナ前の水準まで回復した。
各社の増収に関しては、銅価の高騰や円安の影響も大きかった。利益面では、業界全体で原材料価格・輸送費高騰の影響を受けている。
各社ごとにみると、住友電工は、すべてのセグメントで増収となったが、自動車関連事業と情報通信関連事業は減益となった。自動車では、資材価格の高騰や、グローバルな物流混乱に伴う物流費の増加、半導体不足による自動車生産の減産の影響を受けた。情通では、光・電子デバイスの品種構成の変化に伴い収益性が低下した。また、環境関連エネルギー事業が、売上高8千300億円(前年比31%増)、営業利益440億円(同76%増)と大きく増加し、全体に占める割合も増えており、業績を牽引している。
古河電工も2桁増収、営業利益・経常利益で大幅な増益を計上した。光ファイバ・ケーブルの北米での販売増加、車載関連の需要取り込みなどが牽引した。営業利益のプラス要因は、実質的な変動(34億円)のほか、為替の影響(26億円)も大きかった。
フジクラは、売上高では小幅な増加にとどまり、20年度の水準にわずかに届かなかったが、営業利益および経常利益は大幅な増益、当期純利益も黒字転換した。特に、採算重視の受注戦略を進めたエレクトロニクス事業部門が減収増益となったのが大きかった。
昭和電線も、大幅な増収増益となり、当期純利益では過去最高益となった。各事業で売上高が軒並み増加。産業用デバイスの製造拠点の海外移管の完了、ワイヤーハーネスの中国新工場の稼働なども増収に寄与した。
22年度業績の見通しは、営業利益・経常利益ベースでは大手4社ともに増収増益を予想している。しかし、コロナや為替、各種のコスト増のほか、ロシア・ウクライナ情勢など新たな懸念材料もあり、楽観視できない。

電線新聞 4279号掲載