月を掘った電動ドリル!?
電動ドライバーは、モノによっては1分間に1000回転以上もする。1秒間に16回転以上だ。まさに早業、手動ではとても太刀打ちできない。インパクトドライバーなどは、高速回転しながら打撃も加える。連続回し蹴りのようなものではないか。とてもじゃないが、かなわない。
持ち運びができる電動ドリルを世界で初めて開発したのは、アメリカの電動工具メーカーである「ブラック・アンド・デッカー」だそう。大型の固定式工具が主流だった時代、1916年に発売された“ピストル型”だ。
日本でいえば大正5年である。当時のものであろう新聞広告に、本当にピストルと対比する形で電動ドリルの写真を載せているのが衝撃的だ。約半世紀後の1961年には世界初のコードレス電動ドリルを発売し、1971年にアポロ15号が月面着陸した際、月のサンプル回収に同社のコードレスドリルが使用されたという。
ちなみに、世界最古の電動工具は1895年、ドイツのファイン社が開発したといわれている。
熟練の技はもういらない!?
ドイツといえば、日本でも幅広く事業を展開している世界的企業の「ボッシュ」がある。1932(昭和7)年には世界初のハンマードリルを、1952(昭和27)年には世界初の二重絶縁構造の電動工具を開発するなど、さまざまな“世界初”を世に送り出している。
現在、ボッシュの電動工具には全て二重絶縁構造が採用されているそうだ。
日本発の世界的な電動工具メーカーといえば「マキタ」だ。電気工事士用ではないが、1958(昭和33)年に国産初の携帯用電気カンナを開発・販売して以来、電動工具のトップランナーとして走り続けている。
電動ドライバーがなくても、ドライバーがあれば素人にもネジは回せる。しかし、電気カンナがなくて、普通のカンナがあっても素人には使いこなせない。熟練の大工にしかできなかった技をDIYでも手軽にできるようにした電気カンナは、そういう意味で電気ドライバーよりも画期的な製品かもしれない。
では、熟練の技はもう必要ないのかといえば、もちろんそんなことはない。手動も、日々進化を続けているのだから。