電工さんの工具箱 第1回「圧着ペンチ」 ディス・イズ・アッペン!

電気工事士の頼れる相棒
日本工業規格JIS C 9711に屋内配線用電線接続工具(Compression tools for wire connectors of interior wiring)と規定されているのが圧着工具だ。

一口に圧着工具といっても豊富な種類があり、手動片手式、手動両手式、手動油圧式、電動油圧式などに大別されるが、常に電気工事士の腰ベルトに収められているのは手動片手式だろう。これを、職人たちは親しみを込めて「アッペン」と呼ぶ。圧着ペンチ、略して圧ペンである。

一般の人から見れば、ペンチのイメージとは程遠い大柄なボディで、どう扱えばいいか分からない不敵な面構えをした工具だが、ひとたびグリップを握れば圧着端子を静かに、しかし力強く押さえ込んで、たちどころに電線をつないでしまうのだ。余計なことは一切しない。電線同士をつなぐ架け橋としての役割を黙黙とこなすその仕事ぶりは、まさに職人魂。電気工事士にとって実に頼れる相棒なのである。

国産第1号はマーベル社製
圧着工具がない時代は電線をハンダ付けで接続していたわけだが、電設工具メーカーの株式会社マーベルによると、同社が1958(昭和33)年に開発・販売した「ハンドプレス(手動式圧着工具)」が、おそらく国産第1号だという。

今では多彩なラインアップを誇るマーベルのハンドプレスには、同社のモノづくりに対するこだわりが随所に光る。例えば、圧着端子の仮押さえができる特殊構造。端子を刃先で挟む際にワンギアだけ進めると、端子が抜け落ちることなく絶妙な具合でキープでき、電線をスムーズに挿入することが可能だ。また、端子を圧着する部分にも磨きをかけているため、刻印がくっきりと現れるなど。

もちろんマーベルの他にも、用途に合わせてさまざまなタイプのものが各社から販売されている。

いずれにしても、電線の接続は確実に行わなければ火災の原因にもなるため、信頼できる圧着工具を選びたい。