電気の豆知識 第5回 「電池」の種類と将来の可能性

⚫︎電気は貯めることが難しい??

「電気は貯めることが難しい」といわれてきました。
電気は貯められないから、発電したらすぐ使わなければならない。もし、ダムに水を貯めるように電気を大量に蓄えて、それを私たちが消費することができたら、どれほど便利だろう…そんなことを考えた人も多いのではないでしょうか。
一方で、電気を蓄えるための乾電池やバッテリーなども存在しています。これって矛盾しているのでは?
まずはそのあたりの疑問からお答えしようと思います。

電池にはテレビのリモコンなどに入っている使い切り型の乾電池と、自動車バッテリーのように充電して繰り返し使うことのできる蓄電池があります。前者を一次電池、後者を二次電池といいます。

次に電気の作用について見てみましょう。
電気には大きく分けて3つの働きがあります。

1・発熱作用
これはニクロム線などに電流を流すと発熱するというもの。電気コタツ、電気ストーブなどはこの作用を利用しています。イギリスの物理学者・ジュールによって発見されたため、これをジュール熱といいます。

2・電磁界作用
電気が発生する電磁界を応用したもので、各種モーター、電磁石、電磁波を扱うテレビ、電子レンジ、携帯電話などに応用されています。

3・化学作用(プラスイオンとマイナスイオン)
これは電気の働きによって、さまざまな物質が化学反応を起こすというもの。バッテリー、金メッキ、水の電気分解などはこの作用を利用しています。

以上が「電気の3大作用」というものです。
このうちの「化学作用」が、二次電池(蓄電池)と深い関係があるのですが、それは後ほど説明したいと思います。

⚫︎電気をエネルギーに変えて貯める方法

先ほど「電気は貯めることが難しい」といいましたが、「電気を別のエネルギーに変えて蓄える」ことは可能です。では、その代表的なものをご紹介しましょう。

・揚水発電
余った電気を使って下のダムから上のダムへ水を汲み上げ、必要なときに上から下へ流して水車を回し、これで発電するというもの。電気エネルギーを位置エネルギーに変換して貯めています。

・フライホイール
フライホイールとは回転を安定させる円盤のことで「弾み車」ともいわれています。電気エネルギーを使って真空に保たれた容器の中でホイールを回転させ、必要なときにこれを利用して発電器を回して発電します。これは電気エネルギーを運動エネルギーに変えて貯めているのです。

・蓄電池
蓄電池は充電を行うことによって、電気を蓄える電池のことです。充電というと電気エネルギーを貯めているように聞こえますが、実際には化学反応を使って電子のやりとりをしているのです。前述したように、電気エネルギーを化学エネルギーに変えて貯めているのです。

⚫︎蓄電池の仕組みとその種類

この蓄電池について、さらに詳しく説明いたします。
蓄電池は、電池内部の化学反応によって、電気を取り出したり(放電)、取り込んだり(充電)することができます。
蓄電池の内部は、2つの電極(おもに金属)と電解液からできています。この2つの電極には、一方は電子を放出したい物質(負極・マイナス極)、もう一方に受け取りたい物質(正極・プラス極)が使われています。電池内部において負極側に貯まった電子を正極側に送ることを放電。電子を逆に流すと、逆の化学反応が起こり充電ができるというわけです。
蓄電池は二次電池やバッテリーとも呼ばれ、私たちの身近でさまざまな種類の蓄電池が活躍しています。しかしその原理は基本的にはどれも同じといえます。

では「蓄電池」にはどんな種類があるのか、それを順番に紹介していきましょう。

・鉛蓄電池
多くは自動車のバッテリーとして使われています。

・ニッケル水素電池
環境への影響が少ないため、充電型の乾電池に多く使用されています。

・リチウムイオン電池
パソコン・スマホなどのバッテリーとして広く利用されています。また電気自動車や航空機での需要も伸びています。

・NAS電池
大容量化が可能で、数百世帯の電気を貯めることが可能なものもあります。

ここまで「二次電池(蓄電池)」の仕組みと、その種類について説明してきました。次に紹介する「燃料電池」は、前述した一次電池や二次電池(蓄電池)とは違う特徴を持った電池です。
この「燃料電池」は、近年はFCV(電気自動車)などに搭載され、めざましい発展を遂げている次世代型の蓄電池なのです。

⚫︎燃料電池の仕組み

「燃料電池」とは、燃料(ある物質)と酸化剤(酸素)を外部から供給して反応させ、電気を取り出す電池のことです。現在のところ、燃料には水素を、酸化剤として酸素を化学反応させるタイプが、もっとも多く実用化されています。
燃料電池は充電ができませんが、その代わりに燃料を追加し続けることで、長時間連続して電気を取り出すことが可能です。つまり、燃料電池とは、水素と酸素のもつ化学エネルギーを電気エネルギーに変換する「発電設備」といってもいいでしょう。

従来の発電設備(火力発電所など)は、燃料を燃やした熱で水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回して発電します。つまり燃料のもつ化学エネルギーを熱エネルギーに変換し、さらに運動エネルギーに変えてから、ようやく電気エネルギーを得ていました。これらを変換する過程で、多大なエネルギーの損失が生じます。水力発電や原子力発電も基本的な原理は同じです。しかし燃料電池は、それらと全く違うシステムで電気を取り出すことができるのです。

燃料電池は、以下の4つの特徴があります。

・発電効率が高い
燃料電池は燃料のもつ化学エネルギーが直接電気エネルギーに変換されるため、損失が非常に少なくてすみ、発電効率が高い。

・環境にやさしい
発電時に生成されるのは水だけで、二酸化炭素や窒素化合物など、地球温暖化ガスや大気汚染物質をほとんど排出しません。

・資源が豊富
燃料となる水素は、無尽蔵にある水を電気分解することで得られるほか、天然ガス・LPガス・石油・バイオマスガスなど、さまざまな原料から得ることができます。

・静粛性に優れている
エンジンやタービンなどと比べると極めて低騒音・低振動です。

以上のような理由から「燃料電池」が次世代の発電装置として期待されていることがお分かりいただけたと思います。
現在ではFCVのほか、家庭用蓄電池(エネファーム)、携帯電話の充電システムなどに活用されており、今後急速に需要が伸びていくことが予想されます。

⚫︎太陽光発電と家庭用燃料電池の併用(ダブル発電システム)

2019年11月以降、太陽光発電のFIT(固定価格買取制度)が順次終了となっていきます。それゆえ、太陽光発電と家庭用燃料電池を併用して、自家で電気をまかなおうという動きが進んでいます。
燃料電池のメリットは「簡単に電気を作ることができ、使いたいときに自由に使えること」です。これを太陽光発電と組み合わせることで、そのメリットを最大限に生かすことができます。「ダブル発電システム」といわれているものです。

「ダブル発電システム」には以下のようなメリットがあります。

・昼間に発電した電気を夜間に使い続ける
・「固定価格買い取り制度」が満期終了しても損をしない
・災害時や非常時において長時間電気を使える

さらに、これを都市単位で大規模に行おうという計画もあります。すでにスマートハウスからスマートシティへの拡大計画に取り組んでいる自治体もあります。そのうちの電気エネルギー関連事業について、その流れを見てみましょう。

・大規模な太陽光発電設備で作った電力で水を電気分解する。

・電気分解して作った水素を大量に貯蔵し、各家庭や事業所に配給する。

・それぞれが設置した燃料電池で、この水素を使って発電する。

・その電気を各家庭が消費する。これを永続的に繰り返す。

いかがでしょうか?
太陽光発電や風力発電など、環境にやさしい発電システムと、燃料電池を組み合わせることによって、これまで難しいとされてきた「電気を貯める」ことが実現可能となるのです。
これによって深刻なエネルギー問題が解決するだけでなく、地球温暖化や環境汚染問題もよい方向へと向かっていくことが期待されています。
「燃料電池」を含めた電池の可能性を、今後も見守っていきたいものです。