光の新たな市場への挑戦が始まる
光源は、白熱灯や蛍光灯といった旧光源からのLED化が進み、それにつれて光の見せ方も制御などが大きな要素として登場してきた。光の新たな市場への挑戦も始まっている。
提供側の視点が問われる
人と動物とを分ける決定的な要素は、火の使用であるといわれる。人類が発火法を発明したのは140万年ほど前のことと見られている。
火は当初、照明だけでなく調理や暖房の機能も兼ね備えていた。その後、文明の発展につれ、それらの機能は分化、照明は独自の発展を遂げる。
長い火による照明の時代を変えたのは、1879年に実用電球を発明したエジソンだった。さらに21世紀に入ると、白熱電球や蛍光灯とは発光原理をまったく異にするLED照明が登場する。
2010年ころを境にして、LEDは急速な進化を遂げた。LEDの質を大きく向上させたのは製造方法の工夫だった。それまでの表面実装方式(SMD)からチップを基板に直接実装するチップオンボード(COB)に変えたことで光量がアップし、光の制御などがしやすくなった。
さらに電子機器であるLEDを光源とすることで波長制御が容易になり、欲しい光が得られるようになってきた。逆に、それによって忠実な色再現を求めるのか、光を当てるものの色の鮮やかさを重視するのかなど、まさに提供する側の思想、哲学も問われるようになっている。
近年は、チップ(発光素子)に、目に対する刺激の強い青色LEDに代え、紫色LEDを用いる製品が見られるようになってきた。数種の蛍光体と組み合わせることで、より太陽光の自然なスペクトルに近づけることができ、目にやさしい光を提供することができる。光源の新たな発展方向として、今後の動向が注目されている。
多領域とのコラボ必須に
今日、変化を遂げているのは光源だけではない。照明は多領域とのコラボレーションが求められる時代に入ってきた。
象徴例のひとつがワゴジャパンの「WAGO-I/O-SYSTEM」。照明に加え、電気設備や空調設備なども一体的に運用・制御しようというソリューションだ。空調などを制御するBACnetにつなげることで、空調・電力設備、ブラインドなども統合的に制御できる。同社の担当者は「照明と空調などを連動させないと、省エネや環境基準を達成できない時期に来ている」と話す。照明業界は、自らの外にある世界にも目を向けることが課題になりつつあるということだろう。
岩崎電気がプロ野球中日ドラゴンズの本拠地、ナゴヤドームに施した照明設備は、このほど照明学会の「第37回日本照明賞」を受賞した。同社としては、4回目の受賞となる。
評価されたのは「ドーム球場における体験・体感型照明空間の創出」。DMX制御によって光を制御することはもちろん、光を映像や音響と融合させる。コンサートや展示会などにも使用されるドーム球場の魅力を最大限引き出そうという試みだ。
照明賞がナゴヤドームやソニービジネスソリューションなどとの共同受賞となった事実は、異分野とのコラボの実践を裏付ける。
条件見つけ一歩前へ
米中貿易紛争に見られるように、社会は混迷し先行きは不透明化しつつある。それは照明業界も変わらない。
LEDをめぐる環境も決して万々歳ではない。そんななか、果敢に市場を切り開こうとする動きも見られる。
大光電機は、アウトドア製品の押し出しに戦略的に取り組む。5月に東京で開いた製品発表会「DAIKO ADVANCE STAGE」では、アウトドア製品「ZERO」の機能拡充をアピールした。
もともと同製品は塩害に強いのが大きな特徴だが、その性能にさらに磨きをかけている。背景には、ZEROが海に囲まれた沖縄でこの種の照明器具では断トツのトップを走っているという事情がある。
同社の前芝辰二社長が見据えるのは、同製品の機能を他社の追随を許さぬレベルにまで引き上げ、圧倒的シェアを確立することだ。アウトドア分野を確立することで、今後、住宅の新築着工が減少していこうとも新たな利益確保につながると読んでいるのは間違いない。
同社は、フリーアドレス化などオフィスレイアウトの自由化が広がるなかで、それに対応する照明のあり方にも気を配る。昨年、東京では対応するセミナーを3回にわたって開いた。
今年から来年にかけ照明業界全体に取って追い風となりそうなのが、照明の「2020年問題」だ。
水銀条約の発効によって、21年以降は多くの蛍光灯や水銀ランプが使えなくなる。従って20年末までに、LEDや高圧ナトリウムランプ、対応する照明器具などに取り替えていく必要が出てくるわけだ。
業界には折に触れユーザーにランプ交換や照明器具取替工事の必要性を説くことが求められている。