職種によって異なるワーキングウエア
ビジネスマンのワーキングウエアといえばスーツだ。ビシッと着こなせば〝仕事モード〟、ネクタイをゆるめれば〝帰りにちょっと一杯モード〟、上着を脱ぎ捨てネクタイを頭に巻けば〝宴会ハシャギすぎモード〟と、オン・オフの切り替えも容易である。
つかみの冗談はさておき、ワーキングウエア――つまり仕事着とは元々、農民や漁民、商人、職人などが働くときに着る衣服のことを指した。たとえば、野良着(のらぎ)、田んぼ着、山着、働き襦袢(じゅばん)などと呼ばれた衣類がそれだ。今はオシャレ着や部屋着として人気の「もんぺ」もそう。動きやすいいでたちで仕事の能率を高め、汚れや危険を防ぎ、寒暑や風雨から身を守るための労働服、作業服である。とはいえ、昔の農山村などでは仕事着を一日中着用していたようだ。
かように、日本の伝統的な衣装といえる仕事着が洋風化するのは、もちろん明治以降のこと。文明開化の先駆けとして、いわゆるツメエリの洋服が軍や警察、学校などの制服に採用されるようになり、明治の中頃には一般の会社員が三つ揃い、スリーピースのスーツを着て通勤するようになったという。ちなみに、女性の洋装化はもう少し後になる。
元は仕事着だったファッションアイテム
今、私たちが普段から愛用しているファッションの中にも、元々は仕事着だったアイテムは意外と多い。その、ほんの一例を紹介しよう。
【ジーンズ】
ジーパンとも呼ばれるジーンズは19世紀後半、ゴールドラッシュに湧くアメリカの鉱山で働く労働者のための仕事着、頑丈なワークパンツとして誕生した。オーバーオールも元は作業服である。
【MA-1】
さまざまなメーカーから発売されている若者に人気のアウターだが、元は1950年代初頭にアメリカ軍が開発したフライトジャケット。軍事パイロット用の仕事着だ。
【ダッフルコート】
学生向けのイメージが強いコートだが、起源は北欧の漁師の仕事着といわれる。戦時中にイギリス海軍で採用され、戦後にその余剰在庫品が市場に出回り一般化した。
【作務衣】
部屋着や普段着に愛好者の多い和服で、陶芸家や書道家など芸術家用の着物といったイメージがあるが、本来は禅宗寺院で僧が身に付ける作業服である。
【スペース・ルック】
宇宙ルックとも呼ばれるファッションの総称。映画「スター・ウォーズ」などの影響から、宇宙服をイメージしてつくられた衣服を身にまとう。
電気工事士のための作業服
汚れも傷みもいとわないワーキングウエアは、工事現場で働く人にとって強い見方だ。現場によっては服装自由の場合もあるが、安全性と快適性、作業のしやすさなどを考えれば、専用の仕事着に勝るものはないだろう。感電や火災といった事故のリスクが伴う電気工事の場合はなおさらだ。特に冬は静電気が発生しやすくなり、その放電によって思わぬ事故を招く場合もあるため、「静電気帯電防止作業服」の着用を義務付けている現場もある。その場合は、JIS(日本工業規格)T8118に適合した作業服であることが必要だ。
ともあれ、今はさまざまな繊維が開発され、軽くて丈夫な、薄くて温かい、そして動きやすい作業服がたくさんある。デザインやカラーも豊富で、レディースも充実している。最近はタウンユースとしても人気のようで、ワーキングウエアがちょっとしたブームだ。世間もようやく気づいたのではないか。スーツにネクタイのビジネスマンも格好いいが、作業服を着て現場で働く電気工事士もカッコイイのだ。