海光電業の20年度事業戦略 物流費高の価格転嫁を推進 売上高320億円(前年並み)、収益改善へ


独立系大手電線問屋である海光電業の19年度(20年1月期)通期業績は、売上高324億円(前年度比17・8%増)と大幅な増収を計上。東京五輪関連の施設建設に都市再開発等の案件などが重なり、過去最高の売上高となった。ただ、適正利益の確保が進まず、さらに物流費高や切断・加工費の上昇分の価格転嫁も未達となり、収益は目標値に及ばなかった。一方、同社は20年度(21年1月期)新事業計画を打ち出し、売上目標320億円(前年度並)の達成と増益を目指す。


海光電業は、『新たなステージへの挑戦と成長』をテーマに、20年度(21年1月期)の新基本方針を打ち出した。

テーマについて神山欣也社長は、「今年の干支はネズミとなり、物事が新たに始まる意味を持つ。さらに元号も改まり令和の時代が始まった。また、奇しくも、新時代を祝うかのように今年は東京五輪が開催される。同時に、当社にとっても将来に向けた新ステージのスタートを切る年を迎え、大きな成長に向けて弾みをつけたい。成長は、果敢な挑戦なくしてできない。全社員一丸となって、あくなき挑戦を続け、また、新たに社業の発展を成し遂げたい」と語る。

19年度業績は売上高が324億円(前年度比17.8%増)と過去最高を計上した。東京五輪関連の施設建設に、都市再開発や駅舎・駅前再開発などの案件等が重なったことが背景にある。この一方、適正利益の確保が進まないところに、運賃の値上げや切断・加工費上昇分の価格転嫁の未達が重なって、収益面でのハードルが上がってしまい、当初の収益目標をクリアできなかった。

20年度事業計画では売上高320億円(前年度並み)で増益を目指す。神山欣也社長は、「今年になって2、3月は、東京五輪関連の需要がほぼ終焉を迎えたことで、電設需要は一段落する見通し。従って20年度の需要環境は、19年度よりも、やや厳しく、凌ぎの時期に入るとみられる」と語った

また、「中型や小型案件の需要捕捉に積極的かつ丁寧に取り組むのと並行して、建販電線の販売価格の底上げや配送問題の解決を推進し、収益の改善を図りたい」とした。

計画達成に向けた具体策は、「重点4項目」を含む①~⑦の細やかな7戦略事項に沿って取り組む。このうち①の重点施策が、メインになる。これは同社が成長路線を辿りながらも、企業の足固めや磐石の体制を築くことを主眼にした次の4項目から構成されている。

①重点施策=第1項目:中期経営計画「NEW4Eプラン」に沿いながら、顧客・商材・業態の拡大(Expansion)とサービスの充実(Enhance)を推進する。

第2項目:社内のコミュニケーションの徹底=社員同士の意思疎通を充実・強化する仕組みをつくりながら、一層の透明性を図る。例えば縦軸となる役員や事業部門長が明かりを灯すと、横軸にあたる各グループ長や課長、係長クラスがより一層連絡・連携を密にして、最終的に迅速に全社員に明かりが灯るようにする。

第3事項:会社が成長するための人財(人材)育成に取り組む=人財・社員こそが会社の宝であり、各自の能力を遺憾なく発揮できるようにする。事例を挙げると企業の発展のために、業務関連の知識向上および電気技術の修得を目指す。

第4項目:物流費の確保=ヤマト運輸や日本郵便などが値上げした配送費の実費上昇分の価格転嫁をしっかりと推進していく。

与信管理確実に 非電線も強化へ

②変革の時代に対応する事業計画の作成(中期3カ年計画)=部長クラスや課長が核になり「明日の海光電業を考える会」を立ち上げて、全社員参加型の事業計画にする。現場サイドの担当者から顧客の生の声を取り上げながら、変貌する顧客ニーズに即した事業展開を、最適に図れるようにする。

③非電線の「自家消費型太陽光発電システム」、「PCS制御装置」および「CFB」の販売推進を行う。

「自家消費型太陽光発電システム」は、当社のPCSコントローラを搭載し、発電した電力を無駄なく活用して、電気料金削減を最大化する。スーパーなどを対象に3年後には年商20億円以上を見込む。

「PCS制御装置」は技術開発本部を設置し、独自開発した新開発製品。太陽光発電システムのパワーコンディショナーを効率的に制御し、太陽光発電のメリットを高める。同装置ビジネスを早期に軌道に乗せていく。

「CFB」は、特許申請が受理されたカーボンフォームバッテリーという蓄電池。リチウムイオン電池の代替として性能やコスト等の面で優れており、災害時などに緊急バックアップ電源としてスーパーや病院などへの普及が期待できる。

④ISO9001・14001、BCP(事業継続計画)のさらなる改善=最近、災害が多発したことを踏まえ、電線流通として品質マネジメントシステムや環境マネジメントシステムなどを一層改善し、企業の品質や磐石性を強化していく。

⑤与信管理と売掛金回収の徹底を遂行=電設向けを軸に建販分野の需要が堅調に動き、この繁忙期こそ、与信の危険性が高い。つまり、今まで以上に与信管理へ注意を払い、細やかな売掛金回収を、より一層徹底する。

⑥無事故・無災害の徹底=引き続き無事故・無災害の達成を目指す。これを永続的にするため、各支店・営業所を含め全社員で創意工夫を重ねる。

⑦明るく・健康・和=同社の根幹でもあり、時代や商環境が変化しても、「明るく・健康・和」をモットーに、チームワークを強化し、①~⑥の事業戦略を展開していく。

電線新聞 4190号掲載