新ブランド広める役割 SFCCに数十人出向
古河エレコム株式会社 代表取締役社長 福地光氏
古河エレコムの福地光社長は、取材の中で、昭和電線HDと古河電工による建販電線の販売統合会社SFCCについて「4月1日から、営業を開始した。SFCCには、当社から工事用汎用線事業を譲渡し、数十人が出向している。このコロナ禍のなか厳しい環境だが、順調に立ち上がってほしい。また、当社も電材フィールドを中心に、SWCC・FURUKAWAブランドを広める役割を担っている。ともに発展できるよう協力したい」と述べた後、 物流網に関して「製造元であるSFCC、古河電工ともよく協議しながら、ユーザーに対し一層きめ細やかなサービス、より効率的な運用を念頭に取り組みたい」と語った。
―御社ビジネスへの20年東京五輪延期を含む新型コロナウイルス影響や、市場見通しから伺いたい。
「まず、東京五輪延期に関しては、大型施設などの建設は既に終わっており、延期そのものによる影響は、ほとんどないだろう。
新型コロナウイルスの影響については、つかみきれていないこともあるが、概ね次のように捉えている。①建販市場では、工事現場の自粛などは確認されていない。例えば、工事現場関係者の感染発生などによる工事遅延が発生するケースがあっても、1カ月程度の遅延に留まるだろう。従って工事の中止もなく、影響は軽微とみている。②ビル・マンションと住宅の新規着工や設備投資に関しては、20年度上期は抑制される見込み。
(①、②の)こうした状況から、20年度上期の建設電販需要予想は、前年同期比10~20%程度の減少、同第3Q以降は、同5%減~±ゼロとみている。ただ、状況によって、さらにこれを下回ることも考えられる。なお、正常化した場合には同第4Q以降には、積み増しも期待したいが、人手不足も響き、ピーク対応による積み増しは、あまり望めないだろう」
―エレクトロニクス、自動車関連、FA関連市場への新型コロナの影響は?
「当社ユーザーの事業計画の修正は、現時点では正確には把握しきれていないものの、20年度上期の減少幅は相当大きいとみており、前年同期比30~40%減少する可能性もある。同第3Qは、垂直立ち上げとなるのか、緩やかな回復になるか見極めようとしている状態」
―コロナを除く御社を取り巻く市場環境の現状と今後の見通しは?
「新型コロナの影響を除けば、電線工業会がまとめた需要見通しによると、20年度以降も建販市場は、堅調また微減少と予想されている。当社でも再開発、強靭化、老朽化対策、太陽光(ピークアウトしてはいるものの)など、引き続き堅調を予想していた。また、電装・エレクトロニクス関係においては、米中貿易摩擦などで多少の不安定な動きはあるものの、堅調な需要とみていた」
アルミ導体ケーブル 本格普及できる環境
―物流費の値上げへの対応は?
「物流費の価格上昇については、より効率的な配送などを実施したうえ、さらに工夫を重ねるなど自助努力を行いながら、特殊配送、特殊梱包、短尺の切り分けなどに対しては、今まで通りユーザーから理解を頂きながら負担をお願いしていく」
―ところで今回、昭和電線HDと古河電工によって、建販向け工事用汎用電線のアライアンス販売会社SFCCが設立されたが?
「SFCCは4月1日から、営業を開始した。SFCCには、当社から工事用汎用線事業を譲渡し、数十人が出向している。このコロナ禍のなか厳しい環境だが、順調に立ち上がってほしい。また、当社も電材フィールドを中心に、SWCC・FURUKAWAブランドを広めていく役割を担っている。ともに発展できるよう協力していきたい」
―御社の注力製品と注力技術については?
「人手不足に対応した『らくらく商品群』を、引き続き広く市場に浸透させていきたい。特にアルミ導体のケーブル類については、端子などの開発も進み、いよいよ本格的に普及できる環境が整ってきたと考えている。また、露出配管システムやハンドホールと管路とのセット販売など、ニーズにマッチした単なる『モノ』売りから、『コト』売りへと、一歩前進していきたい。より工数や人手を減らせる商品群を開発するだけに限らず、『コト』売りを進めることで、ユーザーの効率化に貢献し、人手不足への対応にもつながると考えている」
―御社の19年度業績および20年度の事業計画は?
「19年度は、建販市場が第3Qまで比較的好調だったことに加え、徹底した利益重視の受注に専念したこともあり、電装エレクトロニクス市場の米中貿易摩擦の影響などによる伸び悩みをカバーし、何とか利益を確保することができた。
20年度の事業計画は、前述のように汎用線事業をSFCCに譲渡したこともあり、売上は大きく減少するが、利益は確保していく予定。ただ、この新型コロナの影響が非常に大きくなりそうであり、その場合は利益計画の修正が必要になり、楽観視できない」
大きな変化点を迎え新事業をスタートへ
―御社の中期事業戦略は?
「20年度は、新体制での利益体質の定着が急務だ。中期的には、建販市場は、ほぼ堅調な動きになるなかで、5Gに代表される新インフラ構築に向けた需要が動く情勢下、それに対し、どのような貢献ができるか。これまでと同様のインフラ構築に必要な部材の提供はもちろん、繰り返しになるが、『モノ』に加え高付加価値な『コト』を提案しながら、事業基盤を築きたい。
また、電装エレクトロニクス市場においても、CASEに代表されるように、新しく構築されるインフラを利用した様々なサービス技術などが進むものと思われるので、当社も素材から部品、システムまで、それらを下支えする提案をしていきたい」
―今後の支店・物流網については?
「当社(本社除き)は全国に4支社6支店を設けており、基本的には、この体制を今後とも継続するつもり。ただ、今後の様々な環境の変化によっては、必要に応じ新増設や統廃合などにも機敏に対応したい。
一方、物流網に関しては、製造元であるSFCC、古河電工ともよく協議しながら、ユーザーに対し一層きめ細やかなサービス、より効率的な運用を念頭に取り組みたい。当社の物流拠点は、現時点で、全国に8カ所あるが、新たな物流センターの開設などの計画はない」
―20年度の最重要課題は?
「前述のように、今年度は工事用汎用電線の事業譲渡後、初年度となり、転換点を迎えた新事業スタートとなった。この新しい体制において、ユーザーに従来以上のサービスを提供したうえで、適正利益を計上できる体質を定着させることが、今年度の一番の課題と認識している」