矢野経済研究所 照明用途に使用される半導体レーザーを調査

矢野経済研究所はこのほど、照明用途に使用される半導体レーザーについて調査し、世界市場規模、製品アプリケーション別トレンド、関連企業動向、将来展望を明らかにした。

レーザー照明の世界市場規模推移・予測

市場概況

2020年のレーザー照明世界市場規模(メーカー出荷ベース)を1029万ユニット、5534億円と予測する。半導体レーザー(レーザーダイオード:LD・VCSEL)は直進性や単色性、高光密度、省エネ性などに優れ、これまで光ディスクやレーザープリンター、各種センサーなど様々な用途に使われてきた。照明用途の半導体レーザーについてもそうした特長を生かし、レーザーポインターや建築用途等に使われる墨出し器、プロジェクターなどにおいて普及が進んでおり、2019年には業務用照明である投光器に半導体レーザーが採用され、様々な機器(アプリケーション)への搭載(および開発)が進んでいる。
現状、本格的な採用は半導体レーザーの直進性を活かした機器開発が中心となっており、出力の安定性や精度、制御しやすさ等を生かしたアプリケーションでの採用事例は未だ少ない。
レーザーポインターや墨出し器、プロジェクターは以前より高い半導体レーザー採用率となり、継続して採用され、今後さらにレーザー搭載率が向上していく。投光器は遠方照射する用途であり、観光地や景勝地における夜間のライトアップに使用される。従来ではキセノンランプを搭載した投光器を使用されていたが、レーザー投光器の登場で投光器自体が小さくコンパクトになる。さらに、半導体レーザーの特長を活かし超狭角配光が可能となり、加えて、同じ明るさで消費電力は約4分の1となる。

注目トピック

先行する端面発光だが面発光が追い抜く兆しあり
半導体レーザーを使用した車載用ヘッドライトは特に高級車を中心に普及する。とはいえ、2014年にBMWやAudiが目立った採用をして以降6年が経過していることから、各OEMメーカーの採用動向において積極的な動きは確認されていない。現在、半導体レーザーをヘッドライトに採用しているBMWやAudi以外でも、高級グレードを中心とした普及しか確認されていない状況である。
一方、既存で採用されたものは端面発光半導体レーザーしかないが、今後は面発光半導体レーザーの採用を視野に入れて半導体レーザーメーカーによる開発が進められている。特に面発光半導体レーザーはその特徴として、端面発光半導体レーザーよりも省エネルギーでコンパクトであることから、端面発光半導体レーザーと比較し後発ではあるものの、その優位性から今後、飛躍していくものとされている。さらに面発光半導体レーザーには急に不点となる現象がないとされていることも、重要保安部品であるヘッドライトが求める項目に合致しており、端面発光に勝るとも劣らない状況になっている。
なお、面発光半導体レーザーの方が製造上のコストを低減するポテンシャルがあるとされていることは車載アプリケーションにとっては重要なポイントである。

将来展望

今後、半導体レーザーの特長を生かした開発が進み、車載用ヘッドライトやヘッドアップディスプレイ(HUD)、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、家庭用・業務用照明器具などの機器において、本格的な採用が進展する見込みである。2027年のレーザー照明世界市場規模(メーカー出荷ベース)は2801万ユニット、1兆1104億円に大幅な成長を遂げると予測する。
アプリケーション別に市場を見ると、家庭用照明が頭角を現し、省エネ効果とともにIoTやAIを組み合わせたスマートライティングとして半導体レーザーが採用されていく見通しである。特に半導体レーザーの特長である直進性は従来の光源では無い点であることから、単純な従来照明の代替になりにくい。しかしながら、他の特長である高輝度や省エネ、高エネルギー変換効率等の価値を最大化することで必ず活用される。

電材流通新聞2020年10月15日号掲載