R &M Japan 黒瀬和則代取社長

R &M Japan 黒瀬和則代取社長


R&M Japanの黒瀬和則社長は「前年度は新型コロナウイルス感染症の影響もあって、売上が落ち込んだが、今年度は前年実績に対して2倍程度の売上を想定している」と語った。海外ITラックメーカーの買収や国内メーカーとの連携により、Cat6Aの普及やインテリジェント・システムの構築を進めているという。環境配慮に関しては「Cat6Aに移行するなかでエコケーブルに注力し、グローバル全工場で、電力7%減、水道8%減を達成した」と述べた。


LAN部材 Cat6A普及加速を推進 21年度シェア55%予想

 ―前年度実績と今年度の計画は?

「前々年度はGIGAスクール等の需要もあって好調だったが、前年度は新型コロナウイルス感染症の影響や外資案件の低調もあって落ち込んだ。ケーブルとコネクティビティ分類においては、ケーブル分の販売が落ち込んだ形だ。今年度は前年の実績に対して2倍程度の売上を想定している」

 ―Cat6A市場の変化は?

「これまで国内ではCat5Eが約60%のシェアだったが、昨年度JIS規格の一部から除外されたことで、より高速で広帯域のCat6及び6Aへの移行が進んでいる。市場全体でみると、19年度にはCat6Aのシェアは8%程度であったが、20年にはGIGAスクールの需要もあり20%程度までが拡大した。21年度予測ではCat6とCat6A合わせて55%と、Cat5Eを上回るシェア予測となっている。。22年はCat6単体で50%程度までシェアを拡大する見通しだ。

当社のCat6Aにおけるシェアは20年実績で約20%、21年が15%、22年は微増の18%程度となる見通しだ。当社のようなサプライヤーはCat6Aを推奨しているが、単純な比較論においては単価高騰の課題もある。規格化されたWi―Fi6はアップリンク要求で20Gbitになることから、幹線には10Gbps(Cat6A)以上の導入が必要条件だ。通信インフラの平均使用年数は10~15年くらいなので、現在は1Gで充分であったとしても、先行して10G環境を構築しておけば、将来の機器を含めたCat6へネットワーク全体が移行される時点では、容易かつ複数年度積算で考えれば結果として安価で構築できることになる」

災害時に煙害のないエコケーブルを発信

―御社の経営戦略は?

「新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークが進み、オフィス内のLAN構築アップデートの需要は減少したが、一過性のものと考えている。将来的にはCat6Aへの移行は必要。継続してCat6Aを普及させていく」

 ―御社の注力商品は

「ハロゲンを含むPVC被覆が国内では主流だが、災害時などには煙害や汚染などの二次災害のリスクがある。Cat5EからCat6Aへ移行するなかでエコケーブルの需要が高まっている。当社では被覆材にハロゲンや有害物質が含まれていないLSZHケーブルの販促に注力している。火災時の安全性の向上や環境負荷の低減を念頭に置き、SDGsの観点からも同LSZH(エコケーブル)を強く発信していきたい。

電源ケーブルを使わずにLANケーブルのみで通信と給電を可能にするPoE製品にも当社は強みがある。監視カメラ、ウェブカメラ、無線機器など、様々な環境下で需要が増えている。PoE対応製品はレベル4の(90W)まで対応しているため、負荷がかかるパッチコード用のモジュラープラグには接触抵抗の変位が少ない圧接式(IDC技術)を採用している。当社独自の技術だ。

 ―スイス本社の開発戦略は?

「ITラックメーカーである中国のデュラックとイタリアのテクノスチールの2社を買収した。海外拠点との連携を強化し、ケーブリングとラックを合わせて販売するため。中でもデータセンタ向け新機軸製品であるラックFLシリーズに注力している。現地で組み立てるラックなので、欧州からアジアへの輸送コストは64%減を実現している。オフィスの移設時などでも一般のエレベータで運搬できるので、国内での需要増も見込んでいる。

また、テレワークやオフィスのフリーアドレス化などのリモート環境に合わせて、遠隔で操作可能なインテリジェント・システムを提案している」

 

―国内メーカーとの連携は?

「国内市場シェア№1のN社とタイアップして、Cat6Aの普及や啓蒙活動を協働している。F社にも参加いただきN社と共に、主にインテリジェント・システムでの市場開拓、啓蒙活動を継続して実行している。当社の製品を先行導入することで、後からインテリジェント・システムを構築できるのが特長だ」

5年10年先を見据えた10Gへの先行投資

 ―業界全体の課題・問題点は?

「10Gやインテリジェント・システムなどが、5年10年先を見据えた先行投資であることを、いかにユーザに理解していただくか。また多少コストはかかるが、カーボンニュートラルなど環境に配慮した製品を啓蒙していくことは業界全体の課題だ」

 ―ロシアのウクライナ侵攻の影響は?

「グローバル企業で欧州、中国、アジアに拠点がある分、物流に影響が生じている。上海のロックダウンもあり、船便の運航にも支障が出ている。それに伴うインフレ傾向から物流費も高騰している。材料を扱う当社などは3カ月ほど納期に遅れがあり、機器メーカーは1年近い納期遅れがあるのではないか」

 ―カーボンニュートラルへの取り組みは?

「グローバル全工場で、エネルギー(電気、水道)の削減目標を設定し、20年度には前年度比で電気7%、水道8%削減を達成した。また、製品の設計段階からリサイクル可能な材料を選び、環境破壊物質流通量の削減に努めている。同時にエコ製品の供給も強化していく。当社のスイス本社ビルは設計構造を活用し、同サイズのビルと比べて空調の利用を軽減し、CO2発生量を80%削減している」

 ―今年度の最重要課題は?

「国内のSDGs活動に貢献できるように、ケーブルなどのエコ材料への置き換えを推進していく。また、通信インフラの高速・広帯域化に向けて継続的に10G普及に力を入れていきたい」

電線新聞 4278号掲載