電気の豆知識 ~いつか役立つ!? 電気にまつわる雑学篇~ 「続・電池の話」

電池はいつ、どこで、誰が作った?

電池が日本にもたらされたのは1854(嘉永7)年、ペリーさんのお土産です。黒船でやってきたアメリカ海軍のペリー提督がダニエル電池(ボルタ電池を改良したもの)を幕府に献上したそうです。170年ほど前の江戸時代の話ですが、世界で最も古い電池となると、紀元前までさかのぼります。

世界最古の電池といわれる「バグダッド電池」は、イラクの首都バグダッドの郊外にあるホイヤットラブヤ遺跡で発見された素焼きの“つぼ”型電池で、約2000年前のものと推定されています。

つぼの大きさは高さ10cmほど、中には鉄の棒を芯にした銅の筒が固定されており、底の方には何らかの液体が入っていたと思われる染みが残っていました。さまざまな調査や研究が進められ、実際に同等の物を作り、酢酸やワインなどを電解液に用いて実験すると、1ボルト程度の電気が発生したといいます。

微弱な電気とはいえ、アレッサンドロ・ボルタが電池を発明する1800年も前に、このような装置が作られていたとは驚きです。が、実はこのバグダッド電池、本当に電池がどうかわからないらしいのです。電池としてではなく、金や銀の装飾メッキ用に使ったのではないかという説もありますが、真相は謎。学者ならずとも興味をかき立てられます。

幅広く奥深い電池

さて、もしかしたらいつか役に立つかもしれない電気の豆知識や雑学を軽くご紹介するはずが、奥深い電池の森へとうっかり迷い込んでしまった当コーナーです。前回に引き続き、もう少し進んでみることにしましょう。

簡単におさらいすると、電池は形状を含めて細分化すれば約4000種類にもなるとされ、大きくは化学電池と物理電池の2種類に分けることができます。

化学電池は、電池内部での化学反応を利用して電気エネルギーを生み出す仕組みで、使い切りの一次電池、充電して繰り返し使える二次電池、そして燃料電池の3種類があります。

一方の物理電池は、光や熱といった外部からのエネルギーを電気エネルギーに変換する仕組みで、太陽電池、熱電池、原子力電池などがこれにあたります。

充電して繰り返し使える電池

前回は、私たちの暮らしに身近な一次電池、乾電池の主な種類とその特性を見てみました。今回は、充電して繰り返し使える二次電池、充電池や蓄電池と呼ばれる電池を探ってみましょう。

現在使われている主な二次電池は4種類。乾電池と同様、私たちの暮らしに身近な存在です。

鉛蓄電池

「なまりちくでんち」と読みます。フランスの科学者ガストン・プランテが1859年に発明した世界初の二次電池です。現在も自動車のバッテリーをはじめ、バッテリーで駆動するフォークリフトやゴルフカートといった電動車などに多く用いられています。

原材料の鉛が豊富なため安価で生産できるのが大きなメリットです。一方のデメリットは、強い酸である硫酸を電解液に使用しているため、漏洩や破損した際の危険度が高く、メンテナンスは欠かせません。

ニカド電池

正式名称は「ニッケルカドミウム電池」といい、100年以上前から使われています。内部抵抗が低いため大きな電流が得られることから、電動工具やハンディ掃除機、コードレス電話など、パワーが必要な機器に用いられています。ただし、自己放電率が高いので毎回充電する必要があり、電気が残った状態で継ぎ足し充電をすると充電容量が減ってしまいます。

また、電極に使われているカドミウムは有害物質なので、捨てる際には家電量販店などに置いてある回収ボックス等に入れる必要があります。

ニッケル水素電池

1990年代に携帯電話やデジカメ、ノートパソコンなどの小型電子機器が急速に普及しました。それを陰で支えたのがニッケル水素電池です。

ニカド電池の負極に使われているカドミウムを水素吸蔵合金に置き換えた構造で、環境に配慮した二次電池といえるでしょう。エネルギー密度が高く、長寿命で、過充電・過放電に強いという特性があり、充電タイプの乾電池や、最近ではハイブリッドカーにも用いられています。

リチウムイオン電池

電子機器の性能が高度化・多様化する中で、ニッケル水素電池をしのぐエネルギー密度を持った二次電池として登場したのがリチウムイオン電池です。開発者の3人は2019年にノーベル化学賞を受賞しました。米国の物理学者2人と、そして日本のエンジニアである吉野彰氏です。

大容量かつ小型であることから、スマートフォンやノートパソコン、ゲーム機、加熱式たばこ、モバイルバッテリーなど、多様な電子・電気機器に使われており、最近では、ニカド電池やニッケル水素電池が得意としていた電動工具、さらには電動アシスト自転車や電気自動車にも搭載されていて、需要はさらに広がっています。

ノーベル賞にまで輝いたリチウムイオン電池ですが、もちろん欠点もあります。

それは、過充電や過放電に弱いこと。電解質の液体が可燃性のため、高温になると内部で化学反応が起きて発火する恐れがあること。逆に、低温下で電解質の液体が凍結すると内部が破損して、これも発火する危険性があること。落としたりして強い衝撃が加わるのもよくありません。スマートフォンなど、何か異常を感じたら直ちに使用をやめてメーカーなどに相談してください。

さて、今回はこのへんで終わりますが、想像以上に広く深い“電池の森”、また探索してみたいと思います。