電工さんの工具箱 第24回「はんだごて」紀元前から使われている。

はんだって、なんだ  

みなさん、「はんだ」をご存じでしょう。

えっ、白黒の熊だって? それはパンダ! ん、自動車メーカーだろって? それはホンダ! なになに、枝豆のお餅? それはズンダモチ! ぜんぜんちがうやん。

 ここで言う「はんだ」とは、鉛やスズを主成分とした合金で金属同士を接合する「はんだ付け」のこと。その合金自体を「はんだ」といい、接合するための工具を「はんだごて」と呼ぶ。中学校の授業で経験した人も多いのではないだろうか。あの、はんだが熱せられて溶ける様子がクセになる面白さだった。

 はんだは「ハンダ」とも「半田」とも「盤陀」とも表記され、その語源には地名由来や人名由来など諸説あって判然としない。江戸幕府の銀山だった半田山(福島県)に由来するという説が有力だろうか。鉛とスズの混合比がほぼ「半々だ」が、いつしか「はんだ」になったという説が意外と正解だったりするのかもしれない。ともあれ歴史は古く、紀元前3000年頃の青銅器時代にはもう使われていたというから、5000年以上前に登場したことになる。エジプトのツタンカーメン王の墓からも、はんだ付けを使った装飾品が出土しているそうだ。

アートにもなる、はんだ

 現代では、主に電子部品やプリント基板、配線部品などを接合する際に用いられる、はんだ付け。電気工事で電線同士をつないだりもする。はんだ自体、金属用や電気用など用途によっていくつかの種類があり、テレビ、ラジオ、洗濯機から携帯電話にパソコン、自動車、船舶、航空機まで、あらゆる製品や機器に使われているのだ。中学生が技術の授業で手軽に体験するわりには奥が深く、その原理などを追求し始めると、今度は化学の授業へ迷い込んでしまいそうになる。

 また、内閣府が認定した特定非営利活動法人「日本はんだ付け協会」という組織もあり、「はんだ付け検定」とい技能検定が行われている。さらには、“はんだ付けアート”という世界があって、同協会が「はんだ付けアートコンテスト」を主催している。はんだ付けアートとは、はんだを使って動植物などをモチーフとした作品を作るもので、“はんだ付けアーティスト”の作品を観れば、誰もがきっと驚くはずだ。あの無骨な工具で作ったとはとても思えない、繊細で美しい芸術品なのだ。

はんだごて選びのワンポイント

 はんだごて(こて)は、電気による加熱式のものが主流で、それはニクロムヒーターとセラミックヒーターの2種類に大別される。

 ニクロムヒーターは、こて先に巻いたニクロム線に電気を通して加熱するタイプ。こて先が熱くなるまでに一定の時間を要するものの温度は非常に高く、金属の接合などに適している。

 セラミックヒーターは、セラミックの内側のタングステン製ヒーターに通電して加熱するタイプ。熱くなるまでの時間が短いため、すぐに使えて便利だ。温度調節ができるタイプが多いのも特長である。

 この他、コードレスで使用できるガス式のはんだごてもある。また、はんだごての多くは、こて先が交換できるようになっているので、細かい作業は小さなこて先、広い面積の作業は大きなこて先というふうに、作業用途や使用頻度を考えて選ぶといいだろう。はんだは、こて先が効くのである。