換気扇動向

リニューアルや新たなニーズに的確に対応 堅実な市場開拓が奏功 

換気扇市場が依然、堅調に推移している。大きな伸びはあまり期待できないが、この安定した傾向はしばらく続きそうだ。こうした状況下、メーカー各社の商品提案の切り口などについて探ってみた。

堅実な市場開拓が奏功

(一社)日本電機工業会が5月に発表した資料によると、換気扇の国内出荷実績は、2018年4月単月では、数量で前年同月比98.5%、金額で101.1%(前同)となった。

今年1月から4月までの累計で見ても、数量で前年同期比98.1%、金額で100.1%(前同)と、若干ではあるが、プラス伸長となっている。この傾向は2016年度上期から、すでに2年にわたって続いている。過去20年間、建築基準法の改正で市場が急拡大したことはあったが、ここまで長期に安定した推移は例がない。

換気扇市場と密接に関連する新設住宅着工件数は、5月末発表の国土交通省資料によると、4月が前年同月比0.3%増の8万4226戸で、10カ月ぶりの増加となった。

国土交通省では、住宅着工の動向については、「引き続き、今後の動向をしっかりと注視していく必要がある」としている。

換気扇市場は、住宅着工の影響が約半年後に出ると言われているが、換気扇市場は、9カ月連続で下落していた住宅着工件数の影響を受けていない。しかも数量よりも金額の伸びが上回っている。これは従来の換気扇市場にはなかった傾向だ。換気扇市場が安定しているのは、新築だけでなくリニューアルや新たなニーズに的確に対応し、堅実な市場開拓を行っているからだろう。また、金額ベースが上回っているのは、浴室換気乾燥暖房機、熱交換型換気扇、レンジフードファンなど、高付加価値商品の機種構成比が上がっていることも一因になっているという見方が多い。

「空気質」「健康」ZEHやスマートウェルネス住宅などキーワードに

各メーカーでは、省エネ、リニューアル、空気質の向上、省エネ、高付加価値化など、様々な切り口で市場のニーズをいち早く取り入れ、積極的な製品開発と提案を行っている。とくに、「空気質」と「健康」、さらにZEHやスマートウェルネス住宅などをキーワードにした製品開発が目立つ。

パナソニックエコシステムズでは、従来より、IAQ(室内空気質)の向上を標榜してきた。商品そのものが持つ省エネ性や機能向上等の側面の訴求ももちろん(モノ)、その商品を設置ご使用頂くことにより生み出される新たな空気価値から得られる生活の改善向上(コト)——を真摯に提案していく。

ZEH(ゼロエネルギーハウス)やスマートウェルネス住宅を意識し、さらに高いレベルでそれを実現する取組みと提案を加速していく。

単純な法的要求レベルの換気設備ではなく、「空気で生活を変える」新たな切り口で、これまで見えなかった空気価値を具体的に見える化し、市場創造にも取り組んでいる。

その一環として、同社では2017年6月に、愛知県春日井市の換気扇工場内に実験型住宅「IAQ Labo」をオープンした。この住宅は、体感型の住宅として換気方式よる空気価値の違い、温湿度・気流まで踏み込んだ空間を体感でき、各要素を見える化した。

商品としては、天井埋込形換気扇「FY—17C8他30機種」を天井埋込形φ100樹脂性モデルして、基本性能の向上とルーバの薄型化をはかり発売している。新モーター・新羽根を搭載し、大風量と低騒音化を実現した。

インテリアに合わせたルーバのカラーバリエーションも充実し、黒・シルバー色のルーバを追加している。ライフスタイルに合わせた新モデルとして、必要な時に一時的に風量をアップする「パッと換気スイッチ」モデルを2機種陣容強化している。

1968年に日本で初めてダクト用換気扇を開発・発売した三菱電機は今年度、発売50周年を迎える。

発売以来、同社は換気風量、低消費電力、低騒音、施工性の4つのキーワードの下、性能面での飽くなき進化を追及してきた。発売以降50年間で、「風量は約24m3/hアップ」、「運転音は約24dB低減」、「消費電力は約21W低減」、「ダクト接続口スライド脱着式採用による施工性向上」を達成した。

現在の同社ダクト用換気扇は、世界初のハイブリッドナノコーティング採用により、羽根へのホコリ付着を抑制し、使用10年後も「風量低下」「騒音悪化」がほとんどない省メンテナンスを実現している。

東芝キヤリアでは、省エネ、空気質の向上をキーワードにした新商品の提案により換気扇需要の拡大に努めていく。これをキーワードにエンドユーザーや工事店、設計サイドに対して付加価値が提供できるよう、商品開発を進めていく。

商品としては、この6月に羽根径14サイズ鋼板製本体タイプにおいてメタルルーバーセットタイプ1機種(1部屋用)、羽根径10.14サイズ鋼板製本体タイプにおいてスタンダード格子セットタイプ3機種(2部屋用)、羽根径14サイズ鋼板製本体専用別売ルーバー2機種(インテリアパネル、メタルルーバー)を発売し「ツインエアロファン」シリーズが完成した。

ユーザーニーズに対応しながら、様々な切り口で活路を見出している換気扇市場。さらなる需要増を目指し、新築だけでなくリニューアルも含め、「空気質の向上」などをテーマとした新たな商品提案を行う各メーカーの今後に注目したい。

電材流通新聞2018年6月7日号掲載