昭和製線 万博に太陽光発電ベンチ

 銅線材加工や溶解めっきを得意とする昭和製線は、万博に太陽光発電ベンチを提供する。廃棄されたパネルをアップサイクルしたベンチで、発電機能を備えているためスマホやPCを充電することができる。同社の廣瀬康輔代表取締役社長に、SDGsへの取り組みや万博への期待を聞いた。

―御社と太陽光パネルの関わりは?

 「太陽光パネルの製造時に使用される、インターコネクトやバスバーといった部材について縁があり、15年ほど前から開発案件に関わってきた。太陽光発電は、循環型でエコな発電方式と言われているが、太陽光パネルは発電効率が悪くなれば廃棄されるため、とてもエコとは言えない。さらに、日本では2012年のFIT制度を契機に、短期間で大量の太陽光パネルが導入されたが、固定価格での高価買取は20年で終わるため、2030年以降は、大量の太陽光パネルが廃棄されることが確実視されている。これは日本だけでなく世界中の大きな社会課題だ」

 ―SDGsへの取り組みは?

 「3R(リデュース、リユース、リサイクル)の中でも、リユースを手掛けることにした。中古品は新品よりも価格が安いことが魅力だが、太陽光パネルは中国で生産される新品の価格が下がり続けており、中古品ではコストメリットを出すことが難しい。そのためリユースする際に重要となるのは、中古品の価値を高めることだと考え『アップサイクル』に取り組むことにした。

 『アップサイクル』は要らなくなった物、捨てられる物に、アイデアやデザインなどの付加価値を加えて、別の用途で新しい物にアップグレードして生まれ変わらせるという新しい考え方。アップサイクルを検討する中で生まれたアイテムがこのベンチだ」

 ―ベンチの詳細は?

 「太陽光パネルは大きくて重たいガラス板のため、設置するために頑丈な架台が必要だ。この架台部分をベンチにしたのが今回のアイテムだ。発電機能を備えているため、災害時でも活躍できる。1号機(赤)、2号機(緑)、3号機(赤)の3台を、万博の期間中設置する。屋根の太陽光パネルで実際に発電でき、搭載されたUSBケーブルでファンで送風したり、スマートフォンやPCを充電できる。今後はLED照明を搭載する予定だ。また、各ベンチにはQRコードを貼り、特設サイトに誘導することで、来場者の皆さまに当社の取り組みを知っていただきたい。

 架台部分は、現在は太陽光パネルのサイズに合わせて作成している。大量廃棄を見据え、今後はさまざまなパネルのサイズに合う架台を開発・設計する必要がある」

 ―御社の太陽光関連の注力製品は?

 「ソーラー発電付ベンチ『そらいす(SOLAISU)』を開発した。現品のリスクアセスメントを行い2025年秋の販売を目指している。

 他に、太陽光パネルを看板に転用する取り組みもある。廃棄された太陽光パネルに自由に文字を書き、メッセージボードとして活用するというものだ。文字を書いても発電効率はほぼ変わらないため、実際に充電でき、別途導入する蓄電池を使うことで、発電した電気を冷蔵庫などに電源供給することが可能だ。年間50台の販売台数を目指している」

 ―社内プロジェクト「まちを明るくするチーム」を作ったきっかけは?

 「当社の創業は1920年(大正9年)で、創業者の廣瀬博三が世の中を電灯で明るく照らす電気の力に感動して、電気を運ぶ電線を製造することに端を発する。

 コロナ禍の頃から、自分たちでできるSDGsについて考えはじめ、ただ作って売るだけの会社から、商品を使った後のことまで考えることが重要と考えた。ソーラー発電付きベンチなどの超小規模発電所を公園や河川敷など身のまわりに設置して、少しでもまちを明るくしたい、安心・安全な環境づくりに貢献したい、という思いを込めて2020年にチームを立ち上げた」

 ―今後の活動予定は?

 「大阪・関西万博に設置する、キャノピー付き太陽光発電ベンチ3台を通じて『デコ活』をPRしたい。12月にはSDGs展示会への出展も計画している。

 22年末以降「まちを明るくするチーム」は、富田林市のイベントを中心に積極的に参加し、地元を中心に活動している。

 併せて立命館大学発ベンチャー企業である「スカラーズ」や日本技術士会近畿支部と連携して事業を進めている。2025年が事業のスタートと考えており「2025再エネをもっと身近に」というスローガンを掲げている」

 ―大阪・関西万博に期待することは?

 「『ワクワク感』だ。みんなが新しいことに挑戦する思いを見て感じたい。自分たちが想像する未来に情熱をつぎ込んでいるので、おもしろい万博になると信じている」

電線新聞 4388号掲載