最近の建販市場では、アルミケーブルの存在感が急速に増している。建販市場全体では、人手不足や資材費高騰などの要因から荷動きが多少重くなっているが、とあるメーカーによれば「昨今のアルミケーブルの受注は月あたり約100件、この一年で約1千200件にのぼる」という。
背景には、太陽光発電の現場などで頻発している銅ケーブルの盗難事件がある。最近は通信基地局や鉄道の線路設備、無人倉庫などにも被害が拡大し、視認性の高い青シースのアルミケーブルが急速に普及している。
5月28~30日に開催された「JECA FAIR 2025」においてもアルミケーブル関連の展示が多かったが、各社の展示内容からは2つの傾向が見て取れた。
まず、アルミケーブルを防犯対策のツールとして捉えるプレイヤーが増加、システムソリューションとしての展開例も目立つようになった点だ。盗難防止の第一歩として、ケーブルの視認性を高めるべく青シースを最初に採用したのは古河電工グループおよびSFCCだが、ユーザ間において「アルミケーブル=青シース」という認識が浸透し、今年に入って住電HSTケーブルと西日本電線がアルミケーブルに青シースを採用すると決定。また、電線メーカーは警察や保険会社などと連携しながら盗難防止への啓蒙活動を行っている。
さらに、住電HSTケーブルでは、すでに上市されているドラム監視装置「Drum-i」に続き、同展示会でケーブル監視システム「Cable-i」(特許出願中)をお披露目した。同社によれば「太陽光発電設備において、危険を承知で高圧ケーブルを切断するケースもあるが、より多く盗難に遭うのはドラム巻よりも束取りのケーブル」とのこと。同社は機器メーカーと連携して、束取りケーブルにもドラムにも簡単にセットできる警報システムを開発することで、盗難防止に貢献する。
ドラム巻では、ケーブルの始端・終端に専用キャップ付きの見守りコードを取り付け、コードが外れたりケーブルが切断されれば即座に警報機が起動する。また、複数の束取りケーブルの中心を通すように専用コネクタ付きの見守りチェーンでロックすることで、複数製品の連結管理も可能となり、異常を感知した場合は専用アプリを介してクラウド経由で管理者の端末へ通知が届く。
発売は夏頃を予定しており、「お客様によって買い取りやレンタルなどさまざまな希望が出ており、販売形式は検討中。我々としてはケーブルが売れるに越したことはないが、お客様が望むのならこのようなシステムも開発していく。アルミケーブルでは我々は後発だし、銅ケーブルに比べればまだまだポーションは小さいが、引き合いはかなり増えている」と同社は述べている。
また、昭電でも、ケーブル盗難検知システム「Kebin Loop」を初紹介した。同システムは、NTTアノードエナジーとの共同開発品。ケーブルを二重ループで敷設して、犯罪者が乗り越えるフェンスへのトラップセンサおよび太陽光パネルの幹線ケーブルへの断線センサを用いたダブル検知システム。ダミーケーブルを切断されても発電自体に影響はない。小規模発電所における2ch構成の最小システムから大規模メガソーラにおける30ch以上の構成まで対応できる。
GBPが急成長
2つ目の傾向は、中国系ベンダの台頭だ。2月に開催された「PV EXPO」もそうだが、今回の展示会でもアルミケーブルをアピールする中国系企業が3社(GBP、和光同輝集団、寧波KIBORケーブル)出展していた。GBPとKIBORは日本の太陽光発電施設向けにアルミケーブルの納入実績があり、特にGBPは急成長している注目企業だ。GBPは日本企業という触れ込みだが、湖南省の製造拠点含め中国色が強く、日本国内のOEM先も確保している。
この3社に共通するのは、低圧から高圧までのケーブルはもちろん、専用の端子やダイス、圧着工具、工事までもワンストップで請け負うことが可能な点、そして日本の認証を取得している(和光は来月取得予定)点だ。KIBORの低圧はJCS4348準拠で全サイズ(38~400sq)PSE/S―JET認証取得済、さらにGBPは先々月に日本かつ業界で初めて3.3kVのJET認証を取得した。また、日系ベンダに比して短納期で価格競争力もあり、製品納入後のアフターフォローや施工に関する技術指導まで行っていることはユーザから高く評価されている。
日本においても、HSTがパンドウイットのバイメタル端子や同社製およびミルウォーキ―ツールジャパン製のダイスレス圧着工具などのソリューションを提案したり、古河電工メタルケーブルがアルミケーブル施工の技能訓練を行ったりしている。しかし、中国系の短納期で安価なワンストップソリューションは、日系ベンダにとって現状かなり強力な競合相手だ。
特に、GBPは日本国内で橋頭堡を築くべく、アルミケーブルの製造工場確保を検討中だ。一方、今年から日本に進出した和光同輝集団は、直営の日本法人トラスネクスの他にエスアール和光というJVも設立しており、窓口はいずれも日本人だ。同社は「ワンストップサービスもできるが、我々は日本の商流を重視しつつ、OEMも含めた協調的なビジネスをしたい」と語っている。