パワー半導体再編、電線各社も注視 事業統合に向け3社協議へ

 電子部品大手のロームと東芝、三菱電機の3社はEVやデータセンター(DC)など、幅広い製品の電力制御に使うパワー半導体の事業統合を軸に、協議を本格化させる。3社は今夏頃に一定のめどを示す方針で、統合が実現すれば世界シェア約1割で業界2位相当の「日の丸半導体」連合が誕生することになる。電線各社でも走行中のEVに無線給電するシステム開発を進めていることから、3社統合の行方を注目しているようだ。

3社メリット前面に

 ロームは、省エネ性能が高い炭化ケイ素(SiC)を原材料とする車載向けに強みがある。足元では世界的なEV需要低迷が響き、黒字化を目指し、同社は経営の立て直しを図っている。

 世界の半導体市場は年内にも1兆㌦(約160兆円)に達すると見込まれる。

 3社統合に向けて、ロームはすでに東芝とパワー半導体事業の統合交渉を進めており、そこに三菱電機が合流する形だ。統合の形態や出資比率を含め今後の交渉で詰めるという。東芝は電力分野で幅広い顧客層を持ち、三菱電機は鉄道など産業用分野に強いことから統合メリットは大きいとみられる。

 三菱電機の漆間啓社長は、4月の会見で、3社の事業統合の意義について「日本企業が一致団結して他国に負けないことが大事だ」と強調した。

 ロームは本年2月、自動車部品大手のデンソーから1兆3000億円規模で買収提案された。デンソーが車載用に強いロームを取り込み、グローバル競争力を高めたい考えだったからだ。しかしローム側の賛同が得られず、買収案は撤回された。デンソーは、新たな連携戦略を模索するとみられるが、昨年5月の半導体分野での提携は継続するという。

 日本勢と組んでこなかった三菱電機がローム・東芝陣営への合流に名乗りを上げたことで一気に再編が進む可能性もあり、デンソーの出方が焦点になっていた。

欧米中への対抗焦点

 パワー半導体は、電源から送られた電圧を変換する電子部品で、EVの他に人工知能(AI)の普及で需要が高まるDCサーバーなど幅広い製品の電力を制御する役割をもち、今後高い成長が見込まれる。

 日本企業が世界シェア上位に複数入る伝統的に強い分野でもあるが、個々の企業規模が小さい欠点があった。経済産業省が事業再編を後押しする中で、欧米勢や低価格攻勢で追い上げる中国勢に対抗できるかが最大の焦点となりそうだ。

 2024年の世界シェア(米オムディア調査)は、業界最大手の独インフィニオンテクノロジーズが17・4%で首位を堅持し、2位は米オンセミ8・5%。日本勢は三菱が4位、東芝が10位に入っておりロームは東芝に次ぐ水準にある。3社の事業統合が実現すれば、米オンセミに匹敵する規模になると期待されている。

EV普及の拡大にも

 調査会社の富士経済によると、2035年のパワー半導体世界市場は自動車の電動化などを追い風に2025年比2.2倍の7兆7000億円まで伸びる見通しだ。今後、EVでの採用率は上昇し、EV販売台数の70%程度になるとみられている。

 1999年にNECと日立製作所の「一時記憶用のDRAM」事業を統合して「エルピーダメモリ」を設立したが、2012年に経営破綻した経緯がある。単に規模が大きくなれば競争力が強化されるわけではなく、3社の事業がどうグローバルな競争力強化に資する統合となるか、という指摘もあり協議の行方が今後注目される。

 パワー半導体はEVの普及拡大にもつながるとされている。走行中のEVに無線給電するシステム開発が自動車各社や電線業界でも進められており、2029年度の技術確立を目指している。

 無線給電を巡っては欧米の先行が指摘されているが、給電インフラ敷設の高コスト化や航続距離が短いなどの課題が生じている。日本では規格の標準化を図る「EVワイヤレス給電協議会」がすでに設立され、電線業界からも住友電工やタツタ電線が参加している。

電線新聞 4435号掲載