電線新聞は、「Wire2026欧州電線・光事情視察団」を4月7~15日の日程で派遣した。独・デュッセルドルフで開催された「wire&Tube2026」(主催:メッセ・デュッセルドルフ)を軸に、欧州2カ国のケーブル製造機械メーカーを視察した。フィンランド・マイファー社では、プレゼンテーションの後、2014年に開所したR&Dセンターを見学した。今回はその内容をレポートする。
マイファー社は1900年にスイスで創業した、120年以上の歴史を持つケーブル製造機械メーカーである。1920年に同事業へ参入し、以降、押出機を中心に事業を拡大してきた。1987年には、通信インフラ・技術企業大手として知られるフィンランドのNOKIA傘下に入り、事業基盤を強化。その後、事業再編を経て2001年に独立した。2017年には、米国の押出機メーカーであるデイヴィス・スタンダード社のグループに加わった。現在は、電力ケーブル、通信ケーブル、自動車用ケーブル、特殊ケーブル、光ファイバ向けなど幅広い分野で押出機などを提供する世界的メーカーとして事業を展開している。同社はスイスとフィンランドに拠点を有しているが、ケーブル製造機械はフィンランド工場で生産しており、同工場には190人が勤務している。
同社が強みとしているのが、CVケーブルの製造ライン構築だ。電力用ケーブル向けのCVラインについて、24年までに累計で642ライン(CCV:535ライン、VCV:107ライン)を構築している。最も多いのが中国(249ライン)、次いで欧州(179ライン)、アジア(108ライン)となっているが、現在の実績は700ラインを超えているという。「製造工程における不良品のリスクやミスが少ないことが評価されており、こういった点からユーザーのリピート率が高い」と同社の担当者は語る。
そんな同社がここ5年ほどで注力しているのが、AIの実装だ。すでに独自のニューラルネットワーク(人間の脳の神経回路を模倣したデータ処理を行う機械学習モデル)を構築しており、社内にもデータサイエンティストチームを整えている。将来的には、ニューラルネットワークを活用して生産プロセス全体を自動で最適化することを目指している。ケーブル製造機械メーカーでこのような取り組みはまだ珍しく、同社は他社に先駆けて取り組んでいるという。
すでにAIを搭載したユニットとして2016年から提供されているのが、電線の表面をリアルタイムでモニタリングする「トポグラフィースキャナー」だ。0・01㎜ごとのレーザースキャンが360度から異常を検出する。ユーザーは欠陥を適宜分類することもでき、トポグラフィースキャナーは学習を繰り返して評価能力を高めていく。人手が減少しエネルギー消費は拡大し続ける中、すでに高度な自動化・合理化を目指す20以上の工場で導入されている。
工場設計もサポート
同社は電線製造で培った卓越した機械設計・生産技術・プロジェクト管理を融合させ、生産能力の拡張や新工場立ち上げ用に工場内の設計も行っている。工場設計では製品種別や生産能力、工場の面積などユーザーからヒアリングした内容だけでなく、適切な原材料の保管や製品在庫、ユーティリティ消費量も評価する。工場設計の実績については世界ですでに70件ほどあるという。
また、同社は工場の3Dシミュレーションを制作できる「SimFactory」を展開している。このソフトウェアでは、生産フローをはじめ、生産量や効率化の効果などもシミュレートすることが可能で、故障やその際の修理時間などもシミュレーションに組み込むことができる。さらに、VRゴーグルを装着すれば3Dでシミュレーションした工場内を歩き回ることも可能だ。
PP化の動きにも追従
欧州では近年、中圧・高圧電力用ケーブルにおいて、XLPE(架橋ポリエチレン)ではなくリサイクル性に富んだPP(ポリプロピレン)を活用する動きが高まっている。EUでは、交流および直流の高電圧環境におけるPP技術を開発するプロジェクトが発足しており、同社も参画している。すでにPPに対応するCVライン用3層クロスヘッド(THC70/150HE PP)やXLPE・PPに対応する中高圧電線向けの押出機「NXW 200―24D」などを展開しており、展示会にも出展されている。
R&Dセンターを見学
同社は2014年、フィンランド工場内にR&Dセンター(研究開発センター)を開所し、世界各国のユーザーのサポートおよびコンサルティングサービスを提供している。工場見学では、押出機の組み立てラインや、VCVのテストライン、25年12月に設置されたPPケーブルの試験ライン、試作ケーブルの調査のための試験機器などを備えた検査室などを見学した。









