今年6月に震度5強の地震が大阪北部を襲い、その後も各地で地震が相次いで発生している。南海トラフ・首都直下型地震の前兆ではないかという学者もいる。
地震に限らず台風、集中豪雨など大災害に見舞われない年はなく、毎年どこかで大きな被害が出ており多くの死者も出ている。いまや災害対策は最重要課題である。
毎年、九州地区・中国地区・四国地区の電気工事業界の首脳陣が集まり「3地区合同会議」が開催されている。今年も10月4日に岡山で50回目の会議が開かれ、地震対策に伴う議題が出された。
その時の内容を紹介すると、山口県の山口電工組から「減災の観点から感震ブレーカーの普及が全般的に期待が持てる状況となっているが、山口県の状況は新築物件ばかりで既築物件での需要の盛り上がりは感じられない。需要開拓に向けた販促キャンペーンなどを実施されている所があればお尋ねしたい」との質問が出された。
これに対し、九州ブロックからの回答として、福岡県工組は、現在は「電気使用安全月間PR活動」のチラシのみ。佐賀県工組も同様。長崎県工組は、平成29年度に「建設フェア」開催時にメーカーの協力を得て、展示説明をおこなった実績はあるが、販促につながった実績はない。現在は「電気使用安全月間PR活動」のチラシのみ。
熊本県工組は、熊本地震での被災県でもあることから、感震ブレーカーについては積極的な販促展の開催を行いたいと考えているが、現時点では実施にまでは至っていない。
大分県工組は、平成27年に地元の信用組合と提携し、省エネ商材を使用し改修を行う事業所に対し、低金利の融資を行う制度をつくり、需要開拓に向けた販促キャンペーンを行った。そのキャンペーンの一環で、電材卸会社と協力し、県下の信用組合営業所でLED照明を巡回展示した。提案営業に積極的な組合員は、この制度により、成果を上げたが、せっかくの制度を提案営業につなげる組合員は少なく、大きな成果を上げたとは言えない。
宮崎県工組は、現在は「電気使用安全月間PR活動」のチラシのみ。鹿児島県工組は、販促キャンペーンは考えていない。スキルアップ研修の中で、地震などの防災に関するテーマを加えることは可能と考える。沖縄県工組は、「電気使用安全月間PR活動」のチラシのみの回答があり実際に販売につながった県は殆どなかった。
九州ブロックのみの回答ではあったが、全国的にみてもほぼ同じようなことが言えるのではなかろうか。
地震などにおける災害はいまや待ったなしである。経済産業省産業保安グループ電力安全課は、「感震ブレーカーの内線規程における整備について」発表している。
先の東日本大震災の教訓を踏まえ、南海トラフ地震に係わる地震防災対策の推進に関する特別措置方法及び首都直下地震対策特別措置法が制定され、切迫性の高い南海トラフ地震及び首都直下地震について、それぞれ被害想定や国の基本計画が設定されている。
なかでも首都直下地震については、密集市街地における同時多発延焼火災の危険性が改めて指摘され、人的・物的被害の軽減対策として、これまでの市街地整備事業や避難地・避難路の整備、延焼遮断帯の整備の推進と合わせて、出荷防止対策、特に感震ブレーカーの普及に努めることとした。
これを踏まえ、消防庁、経済産業省、国土交通省の協力のもと、内閣府により「大規模地震時の電気火災の発生に関する検討会」が設置され、今後の感震ブレーカーの普及方策について検討を行い、本年3月に「大規模地震時の電気火災抑制策の方向性について」がとりまとめられ公表された。
同報告書では、感震ブレーカーの普及に向け、今後追加的に必要と考えられる取り組みについてまとめており、具体的には、現在内線規程において「勧告的事項」に位置づけられている「地震時に著しく危険な密集市街地」について、「地震時の電気火災の発生・延焼の危険解消に取り組むべき地域」に置き換えることが提言されている。