LED誘導灯・非常灯特集

従来光源からの取り替えが当面の課題

コンパクト化が進む誘導灯

いまも古い器具が目立つ


一般用LED照明器具の出荷構成比は、2020年を待たずに政府目標の100%に近づいているが、問題はストック需要の掘り起こしで、現状は35%前後の水準。同様のことは誘導灯や非常灯にも共通しており、従来光源からの取り替えが当面の課題といえる。


誘導灯のストック市場におけるLED化率については、確かな数値は把握できていないが、建物内で目にする限り、従来光源のものがきわめて多いのも事実。LEDは、省エネはもとより、環境保護につながるものだけに、早めの取り替えが望まれるところだ。
ところで、誘導灯は、1975(昭和50)年に日本照明器具工業会(当時)が認定を始める。直接のきっかけは、1965年から75年に多発したホテルや旅館、デパートの火災だったようだ。
もとより、誘導灯については、その歴史は古く、工業会の前にも、東京、大阪、名古屋の消防局が消防法にもとづきながら、独自の認定を行っているが、当時は、誘導灯の見え方など、さまざまな問題点を抱えていた。
たとえば、当時は、小型(縦12㎝、幅36㎝)の器具が1種類あるだけ。
建物火災で多くの犠牲者を出した原因のひとつに、火災時の避難誘導が適切でなかったことが指摘されるが、適切でなかったのは、誘導灯自体の小ささにも問題があったのではないか。
ともあれ、その後も建物火災は続く。蛇足ながら、平成29年度の消防白書から、火災の現況を拾ってみる。
平成28年の出火件数は、前年よりも2280件減少の3万6831件。このうち、建物火災は、2万991件、前年比1206件減少。
最近は、地震、台風といった自然災害ばかりが目を引くが、その一方で、今日においても多くの犠牲者を出すのが建物火災である。先ほどの消防白書によれば、28年の罹災人員の総数は4万970人(前年比3473人減)におよぶ。
話を建物火災に戻すと、1972(昭和47)年の大阪千日前のデパートビル火災では118人、翌年の熊本市のデパート火災でも103人の死者が出すなど、惨状が繰り返されたため、消防法令の改正が行われた。大形、中形の誘導灯が市場に出るのは、これが発端である。
以来、誘導灯は、ニーズに応える形でさまざまな改良が加えられてきている。たとえば、点滅形誘導灯をはじめ、誘導音装置付誘導灯、高輝度誘導灯など。さらに最近はLEDランプの搭載により、軽量・コンパクト化が進んでいる。
そういった製品と不可分の関係にある法改正だが、平成11年10月に誘導灯・誘導標識に関わる消防法施行令、消防法施行規則の一部と基準が改正され、施行された。
新しい機能を付加した製品の開発や用途、形態の多様化に対応するのが目的である。
それから3年後の平成14年10月にも消防法の大幅な改正が行われるが、これは、歌舞伎町雑居ビルの火災がきっかけとみられる。
また、7年後の平成21年9月には、「消防法施行規則等の一部を改正する省令」、「誘導灯および誘導標識の基準の一部を改正する告示」が公布される。
さらに、平成23年6月にも「消防法施行規則および危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令」が公布される。
こうした一連の動きのなかで、電材業界にとっては、省エネ、環境保護のみならず、人命尊重の視点からも、誘導灯や非常灯は注目していきたい商材のひとつといえよう。
本紙では、昨年1月の誘導灯特集において、日本照明工業会の協力を得て山田憲幸認証部長兼企画部長に市場を取り巻く状況について聞く機会をもった。若干の変動があるかも知れないが、貴重な意見として再掲する。

【誘導灯・非常灯の販売実績について】

2017年1月から12月の非常灯の販売実績は、約300万台。非常灯のLED化率は、約80%。LED非常灯の販売予測は、誘導灯同様、公表していないが、おおむね堅調とみている。

【今後の方向性について】

1:1高輝度誘導灯は、2006年頃からLED誘導灯が順次発売されるようになった。2010年以降の出荷分からはほぼ100%がLED誘導灯になっている。
非常用照明器具は、2015年から一部の製品で国交省の国土交通大臣認定制度を活用して、LED非常灯が発売されるようになった。
当初は、電池内蔵形のみの発売で、電源別置形は未発売だったが、2017年6月に建築基準法の公示が一部改正されて、非常用の光源にLEDを使用できるようになった。

【器具の傾向について】

誘導灯と非常灯のどちらにも共通するが、内蔵バッテリーが確実に非常点灯するのか、要求される非常点灯時間を維持できるのかを確認いただきたい。必要に応じて、バッテリー交換や15年以上経過した器具の適正な交換をお願いしたい。
ちなみに、誘導灯、非常灯あるいは非常用照明器具は、防災照明器具のカテゴリーに属するが、いずれも、メンテナンスを怠ったり、経年劣化で停電時に点灯しない場合もある。
2つの器具の違いは、どこにあるか。誘導灯は、初期段階の避難誘導が目的。このため、耐熱性に欠ける。これに対して、非常灯は、消防隊の「救助作業時の照明確保が目的で、耐熱性と30分間非常点灯させた状態での照度確保が必要。
目的は異なるが、併用すれば効果的という意見もある。というのも、電源が落ちてしまうと、誘導灯だけでは、安全な避難が困難となるからだ。 併せて、省エネ、環境保護の観点から、LED器具の速やかな取り替えを望みたいところだ。

既築ビルへの設置課題

誘導灯は、ことわるまでもなく、火災時に適切な避難誘導を行うための照明器具である。
高輝度誘導灯は、1999年の消防法令により、従来型に比べて輝度の高い小型誘導灯の総称として登場した。のちに主流となるLED誘導灯とは別物である。
誘導灯の存在は、1960年以前に遡ることができる。初期の頃は、多くの問題を抱えていた。たとえば、搭載している豆球の照度が暗いなどもそのひとつ。このため、1974年には、消防法が改正され、中形、大形の誘導灯が登場する。
きっかけは、各地で惨事を引き起こした火災だった。118人の犠牲者を出した1972年の大阪・千日デパート火災や103人の犠牲者を出した1973年の熊本・大洋デパートなど。適切な避難誘導を行えなかったことが原因という。
その対策とともに、誘導灯にも改良が加えられる。具体的には、カメラに使っていたキセノンランプ搭載の「点滅形誘導灯」や、『非常口はこちらです』の音声を発する誘導灯などが開発され、1987年には、消防庁が誘導音付きの採用へ踏み切っている。
こうした幾多の変遷を経て、登場したのが今日、高輝度誘導灯と呼ばれるものだ。その後も、性能の規定はあっても、光源の指定がないことが、誘導灯のLED化を促す結果となった。
電気を流すと発光するLEDは、その特色から小形でありながら、十分な照度があり、しかもデザイン性に富むなど、数々の利点を附加し、今日に至っている。
新築ビルでは、最新の誘導灯が空間のアクセントとして重宝され、LED誘導灯の普及率は100%に達しているようだ。
問題は、徐々に取り替えが進みつつあるといっても、既築ビルでの普及率がまだまだ低い点であり、これが今後の課題といえる。