【電線新聞】トップインタビュー 古河エレコム 福地光社長

建販 量より適正利益を重視
管路材など 非電線に傾注し、収益改善

古河エレコム 福地光社長

古河エレコムの福地光社長は「電線事業は昨年中盤から、量を追わずに適正利益の重視へ戦略転換した。今後も、これを貫き黒字を目指す。電線の切断や端末加工、小口配送は有償で展開している。配送費分の値上げは未達で根気強く交渉を進める。また、低圧アルミ導体CVケーブルに注力し、19FYから本格展開する」としたうえで「比較的収益性が高い非電線事業にも一層力を注ぎ、安定した利益が計上できるよう体質改善を図る。自動車や電機・FA市場等で継続的に成長する基盤を構築したい。具体的には管路製品と自動車向け高耐熱機器用電線等に傾注する」と述べた。その結果、電線と非電線事業の売上高割合は18FYから5対5になった、という。

―御社の主力事業における建販やエレクトロニクス事業分野などの市場情勢は?

「建販向け工事用汎用電線市場は現状、五輪施設関連や都市再開発など電設を軸に活況を呈している。19年度もこれが継続すると見ている。ただし、消費税率の引き上げを巡って受注への影響も懸念される。しかし、20年度以降も、件名先物などが控えており、ある程度の需要は期待できるだろう。

管路材の市場については、順当に推移している。建販用途に動くほか、電線の地中化で伸びている。さらに、太陽光発電向けの需要もピークアウトしたものの、堅調だ。

エレクトロニクス市場は、自動車や産業用ロボット向けに需要が伸びていたが、最近は米中貿易摩擦の影響を受け、やや減速している。また、世界経済の影響などで多少の乱高下はあっても、中期的には自動車の電動化や同ロボット市場の拡大で、おしなべてみると需要は伸長するだろう。

このほか、先行き第5世代移動体通信規格(5G)のインフラ整備に向け、基地局の部品やケーブル類の需要も期待できる」

―御社の18年度業績は?

「18年度業績は、6%減収も黒字を確保した。要因は、電線事業が6%の減収となったものの、比較的収益性が高い非電線事業が4%増収になったためだ。この結果、売上高割合は電線5割、非電線5割と同等になった。非電線の増収には、らくらく商品シリーズ(非電線)と自動車向け機器用電線などが寄与した。とりわけ管路製品が同5~10%増収と健闘し、特に『角型エフレックス』が好調に伸びた。

電線事業の減収は、年央から受注量を追わずに適正利益の確保を重視した戦略に切り替えたことによる。この結果、18年度の出荷銅量は前年度比2割強減少した」

電線と非電線別の売上高割合5対5

―御社の19年度事業計画は?

「19年度は平均銅価を㌧70万円(同6・3%減)に設定し、出荷銅量は18年度並みで減収、数%の営業増益を目指す。適正利益の確保を、引き続き貫く。電線事業は同㌧70万円に設定したことから減収の見込み。

非電線事業は米中の貿易摩擦を考慮し横バイとした。管路材は数%の増収を見込む。電線と非電線の売上高割合は、銅価次第で変動する。ただ、同㌧70万円では5対5で18年度と同じと見ている」

―御社の19年度事業方針は?

「『セグメンテーションと売り方次第で、国内でもしっかり利益のでることを実績で示そう』を19年度スローガンに掲げた。時には物品が売れないこともある。その時は会社を売る、それでもだめなら自分を売る、心構えで業務に取り組む。つまり、自分が売り物になるように自己研鑽を怠らず、得意先との良好な関係の維持に努めることである。

例えば、らくらく商品に代表されるように、『もの売り』から『こと売り』へ意識改革を行うことなどである」

―4事業本部の事業戦略は?

「①営業本部は、歴史的に継承された得意先を基軸に可能性のある事業を見出し、建販分野での黒字化を図り、継続的発展を続ける。②電装・エレクトロニクス本部は、自動車市場、電機・FA市場で将来有望な仕向先と継続的に成長する基盤を構築する。③管理本部は、お客様に相対する営業部門に、管理・統制された業務環境とサービスを提供する。④CSR推進本部は、『正々堂々』、『主体・迅速』を実践し、ルール順守の社内風土醸成とリスク感度向上を実現する」

切断や端末加工と小口配送は有償で

―御社の建販事業の注力製品は?

「例えば、低圧アルミ導体らくらくCVケーブルがある。現場ジョイントに最適な『低圧アルミ導体用接続材』を新開発し、施工を行いやすくした。さらにユーザーを対象に各社の営業拠点や古河電工グループの電線工場などで、低圧アルミ導体らくらくCVケーブル施工・工事の講習会を実施している。昨年は種蒔き・トライアルの年で、今年から本格展開を図る。建販市場が活発化する情勢下、ユーザーに寄り添いながら、採用実績を確実に増やしていきたい」

―非電線事業の注力製品は?

「例えば、管路製品と自動車向け高耐熱機器用電線ケーブルがある。管路製品の主軸をなす『エフレックス』は今年で52年目を迎え、国内シェア№1を維持している。また、ニーズに応じ一昨年度に上市した『角型エフレックス』については、無電柱化などが進む中で好評を博し、とりわけ台風の上陸が多い沖縄に加え、離島や北海道などでも引き合いが強い。そのため管路材の増産を図っている。生産設備を改造すると同時に、生産ラインの稼働率を向上させて対応している。自動車向け高耐熱機器用電線ケーブルは、自動車の電動化で市場が拡大しており、古河電工グループとの連携を一段と密にして積極的に事業を推進する」

―電線の切り分けや配送費高への取組は?

「建販電線ケーブルの切り分け・切断及び端末加工、小ロット配送については、有償で展開している。配送費アップ分の値上げは未達であり、引き続き根気強く交渉を進めていく」

―御社の中期的な事業戦略は?

「先に述べたように、20年度以降も建販電線市場は、あるていど堅調に動くだろう。ただ、過当競争は続くと見られ、利益にこだわった事業展開を推進する。

これと併行して非電線事業を、一層伸ばしたい。一例を挙げると、屋内露出配管システム『プラフレキ』製品事業を、中期的に伸ばすことである。屋内の壁面・天井への『プラフレキ』を固定する際に最適な新製品・部材『プラチャン』などを上市し、その活用範囲の拡大や利便性の向上に努めたい」

―今年度の最重要課題は?

「一年を通して安定した利益を計上できる企業体質にすることに尽きるだろう」

電線新聞 4161号掲載