日本電線工業会 2020年度電線需要 見通しの改訂まとめる

新型コロナ感染拡大の影響受け
1970年度以来の低水準予測

日本電線工業会はこのほど、本年3月に策定した2020年度の電線需要見通しの改訂を取りまとめた。
今年度は、例年通り当初需要見通しの策定作業を実施したものの新型コロナウイルス感染拡大による影響を盛り込んでいなかったために公表を控えた経緯があり、今回の需要改訂が今年度最初の需要予測の公表という位置づけとなる。したがって、当初見通しは新型コロナ緊急事態宣言前に策定した参考値となる。
内需は、日本経済マクロ指標を前提に公知情報(電線出荷の足元状況含め)から統計的手法による分析に基づいた各社のアンケート結果を集約し、輸出部門については国際問題専門委員会幹事会で策定した。
なお、2024年度の需要予測については、新型コロナウイルス感染拡大の収束が見通せないため、策定しなかった。

1、概要

2019年度の日本経済は、米中貿易摩擦を背景に中国経済の減速の影響、消費税増税など景気を押し下げる要因もありながらも、企業の設備投資、東京五輪関連など公共投資を受けて堅調に推移した。
2020年4月から5月においては、新型コロナウイルス感染症により中国をはじめとした欧米諸国等でのロックダウン(都市封鎖)の影響を受けて世界経済は急速に悪化した。わが国では2020年4—6月期の実質GDPは、緊急事態宣言の発令を受けて、外出自粛や店舗の営業自粛の影響で民間消費が急速に落ち込んだことを主因とし、このほか設備投資や住宅投資も減少し、前期比年率−27.8%と過去最大のマイナス成長となった。また、参考指標となる4月の鉱工業生産指数は前月比−9.1%の減産幅となり、リーマンショック後2009年1月の前月比−8.9%を上回った。全製造業および観光業をはじめとする非製造業においてもこれまでにない非常に厳しい状況に陥っている。緊急事態宣言解除後、新型コロナウイルスの感染予防対策を講じながら、しばらく下げ止まりの状況を続け徐々に回復傾向に向かうものと考えるが、まだこれから冬を控えて再び新型コロナウイルスが蔓延する懸念もあり、予断を許さない状況が続くものとみている。
2020年度の銅電線出荷量は、内需60万8千㌧(2019年度実績比−10.3%)、輸出1万1千㌧(同−34.5%)、内外需計で61万9千㌧(同−10.8%)と予測し2年連続の前年度比減少となり、1970年度の61万8千㌧以来の低水準となる見通しである。
需要部門別の内訳をみると、自動車部門の7万3千㌧(同−19.2%)をはじめ電機部門が11万9千㌧(同−11.8%)、建設・電販部門が31万4千㌧(同−8.2%)と大幅な減少、電力、通信部門においては、コロナ禍による工事延期等の影響はあるものの設備更新需要から若干の減少と予測した。
アルミ電線の2020年度出荷量は、内需2万4千㌧、輸出5千㌧で、合計2万9千㌧と予測した。電力部門は、既設線路の更新需要が見込まれるが、前年度比−2・7%と若干の減少。輸出部門は前年度比−15・3%と予測した。

2、前提条件と

主な参考指標
●(1)日本のマクロ経済指標(2020年度)
※〈〉内は当初予測時の指標
・実質GDP成長率
−6.0%〈+0・4%〉
・民間最終消費支出
−5.9%〈+0・1%〉
・民間企業設備投資
−3.3%〈+0・2%〉
・民間住宅投資
−7.8%〈−1・5%〉
・鉱工業生産指数
−13.4%〈−0.6%〉
●(2)内閣府「月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料」2020年8月
●(3)一般社団法人日本鉄鋼連盟「2020年度の鉄鋼需給の動き」2020年8月
●(4)一般財団法人建設経済研究所「建設経済モデルによる建設投資の見直し」2020年7月
●(5)民間調査機関資料
・大和総研「第206回日本経済予測」2020年8月
・みずほ銀行「主要産業の需給動向と短期見通し」2020年6月
●(6)日本銀行「第185回全国企業短期経済観測調査」2020年6月

3、需要見通し結果

〈通信〉
通信インフラの光化進展は継続すると見て、当初据置、2019年度比減。
〈電力〉
新型コロナ感染拡大による工事延期等はあるものの、高経年ケーブル、設備の更新需要に期待し、当初比微減、2019年度比減。
〈電気機械〉
新型コロナの影響による企業の収益悪化で民間設備投資が抑制され、当初比減、2019年度比減。
●(1)重電
発電所の更新需要が低調で、民間設備投資も伸びず、当初比減、2019年度比減。
●(2)家電
東京五輪開催延期と新型コロナ感染拡大により個人消費が低迷し、当初比減、2019年度比減。
●(3)電子・通信
5G・IoT関連需要への期待はあるものの、新型コロナによる経済減速の影響で、当初比減、2019年度比減。
●(4)電装品
自動車生産台数が大幅に減少すると予想され、当初比減、2019年度比減。
〈自動車〉
新型コロナの世界的な感染拡大により、国内・海外とも需要が大幅に減少、自動車生産台数も減少すると見込まれ、当初比減、2019年度比減。
〈建設・電販〉
東京五輪需要の収束に加え、新型コロナの影響による工事中断、新規設備投資需要の抑制もあり、当初比減、2019年度比減。
〈その他内需〉
新型コロナの影響で国内消費は低迷し民間設備投資の伸びは期待できず、当初比減、2019年度比減。
〈輸出〉
新型コロナの世界的感染拡大により、景気回復の兆しが見られる国は一部あるものの、米中貿易摩擦と相俟って依然厳しい状況であり、当初比減、2019年度比減。

電材流通新聞2020年11月19日号掲載