電工さんの工具箱 第2回「ヘルメット」 進化する保護帽

カッパ型からアメリカンタイプまで
用途を果たせば何でもいい、という時代ではもうない。工事用のヘルメットだって、最近はオシャレでカラフルだ。名称からして、法令で規定されている「保護帽」とは呼ばない。さりげなく「メット」だ。形状も、古くからあるMP(ミリタリーポリス)や広く普及している野球帽型に加えて、近年はデザインが豊富なアメリカンタイプが人気のよう。カラーも白や黄色だけでなく、ブルー、グリーン、ピンク、ツートンカラーなど、まさに色々とある。目の上方の視認性が良い、つばの部分が透明なタイプも売れている。


MP型


野球帽型


アメリカンタイプ

日本で最初の保護帽は、1932(昭和7)年に谷沢製作所が製造・販売した「鉱山用保安帽」とされる。まるでカッパのお皿のような形から“カッパ型”と呼ばれ、鉱山や炭鉱を中心に広く使われたそうだ。このカッパ型、実は紙で出来ている。ファイバー系の紙を積層硬化した素材が用いられており、頑丈だが雨にぬれると徐々に軟化したという。


日本で最初の保護帽「鉱山用保安帽」(写真提供:株式会社谷沢製作所様)

戦後には軽合金製の保護帽が登場する。丈夫で軽くて涼しいと好評だったものの、耐電性がないため次第に合成樹脂製に押されていった。また、進駐軍が鉄かぶとの内側に着用していたベークライト帽を再生した保護帽も登場。ここからMP型と呼ばれるようになったそうだ。

作業環境に合った保護帽を選ぶ
ご存じの通り、保護帽には「飛来・落下物用」と「墜落時保護用」、また「電気用」などがあり、最近は兼用型が多くなっている。素材も、現在はFRP(繊維強化プラスチック)、PE(ポリエチレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、PC(ポリカーボネート)などがあり、それぞれ特性がある。

FRP製の保護帽は耐候性や耐熱性に優れているが、耐電性に劣るため電気用としては使えない。そもそも、厚生労働省の「保護帽の規格」に適合し、形式検定に合格したものでなければ使うことができない。人間の頭をしっかりと保護するべく、材料や構造、性能など、さまざまな規格が労働安全衛生法によって定められているわけだ。デザインやカラーにもこだわりたいが、やはり安全第一である。

参考文献
「知っておきたい保護具のはなし」田中 茂 著(中央労働災害防止協会)
「保護具ハンドブック―安全衛生保護具・機器のすべて―」社団法人日本保安用品協会 編著(中央労働災害防止協会)