市場規模 4年ぶりに伸長
2019年度の映像監視装置の国内推定市場規模は、前年度比111.9%と4年ぶりのプラス伸長となった。高機能化やネットワーク化など技術が着実に向上し、安全な生活を守るためのツールとしてだけではなく犯罪捜査に利用されるなど、用途も広がりをみせている。日本防犯設備協会でも防犯設備機器の普及を後押しする事業を展開し、さらなる市場の拡大を目指している。
(表・グラフ出典:公益社団法人日本防犯設備協会統計調査委員会)
日本防犯設備協会が今月に発表した資料によると、2019年度の映像監視装置の国内推定市場規模は約1678億円で、前年度比111.9%と、4年ぶりのプラス伸長となった。また、2014年度の国内推定市場規模を100とした指数でみると105となり、近年では比較的市場規模の大きかった2015年度に匹敵する水準まで回復している。
映像監視装置は、社会における認知度が向上し、果たす役割がますます大きくなっており、さらにはその用途も多様化している。そのなかで、特にネットワークカメラの増加率が大きい。
防犯カメラと周辺機器構成比をみると、前年度は60.7%であったネットワークカメラの構成比が73.0%にまで増加している。比較的単価の高いネットワークカメラの増加は、国内市場規模の拡大要因のひとつとなっている。ネットワークカメラの需要が増加している要因として同協会は、画像解析やAI技術などを活用したソリューションが提案されるなど防犯目的に加え、他の分野への広がりがあったとみられることも一因と捉えている。
映像監視装置の種類別構成比をみると、防犯カメラと周辺機器、デジタルレコーダーの比率が高い。とくにデジタルレコーダーは前年度から7ポイント以上の大きな伸びをみせた。
2019年度は2ケタの伸長をみせた映像監視装置の市場だが、この時点では新型コロナウイルスの影響はほとんど受けていない。用途が多様化している映像監視装置が、ウィズコロナやアフターコロナの環境下で、どのような新たな役割を獲得していくのか、注目されるところだ。
パナソニックが4月に発売するマルチセンサーカメラ
日本防犯設備協会では、防犯設備士と優良防犯機器認定制度(RBSS)の2つを中核とした事業を展開している。
防犯設備士は防犯設備機器の設計・施工・維持管理といった防犯システムの専門家にふさわしい資格で、現在の登録人数は約3万人となっている。防犯設備士が各地において防犯診断などで活躍することで、認知度や貢献度も年々高まっている。
防犯設備士養成講習・資格認定試験はこれまで集合方式で実施してきたが、2021年度からIT方式に移行する。
昨年度までは東京・大阪・政令指定都市において年間4回、日時・場所限定の2日間の開催となっていた。今年度も実施回数は年間4回ではあるが、期間が大幅に長くなる。講習は動画をオンライン配信することで時間や場所の制約がなくなり、繰り返しの視聴も可能となった。資格認定試験は全国47都道府県、280カ所のテストステーションでのCBT(Computer Based Testing)方式となる。これまでは決められた場所と時間に合わせて出向かなければならなかったが、この方式では受験者の都合に合わせてテストステーションを予約することで調整が格段に容易となった。
コロナ禍のなかで、感染予防に最適な環境で安心して受講・受験をすることでき、受験者の利便性が大幅に向上することから、同協会では今後の受験者数の増大と防犯設備士の裾野の広がりを期待している。
こうした協会の下支えもあり、防犯設備機器市場は今後もより一層の拡大が期待される。
トピックス
■監視カメラ世界市場調査(矢野経済研究所・昨年8月公表)
2019年の監視カメラの世界市場規模は、メーカー出荷数量ベースで6480万台(前年比120.0%)となった。全体の6割を占める中国市場は前年比122.1%と成長して世界市場をけん引したほか、その他エリア(中東・中南米・アフリカ・ロシア)の出荷台数が拡大し、世界市場の成長につながった。
需要分野をみると、中国・アジア圏では公共関連や政府関連の比率が高く、北米・欧州・日本では店舗やオフィス関連の民間需要も拡大した。従来の監視/モニタリング用途に加えて、マーケティング用途での活用や画像解析/AI技術の活用が進んだ。
また、監視カメラ本体のみの販売では利益確保がむずかしくなりつつあることから、VCA画像解析や画像解析/AI技術を用いた付加価値ビジネス、監視カメラを用いたソリューション提案型ビジネスへのシフトが進んでいる。
2020年の世界市場規模は、前年比84.0%の5444万台に減少すると予測する。これは監視カメラ/モニタリング用カメラ自体の需要自体がなくなるわけではなく、新型コロナウイルスの影響により新規導入や更新時期が後ろ倒しとなるためである。
中国市場の急成長の陰りや新型コロナウイルスによる経済後退への懸念がある一方で、中国・欧米・日本における更新需要や、アジア圏・その他エリア(中東、中南米、アフリカ、ロシア)の新設需要は中長期的に拡大する。
ほかにも、スマートシティ構想や統合型リゾート(IR)、MICE(Meeting・Incentive Travel・Convention・Exhibition/Event)などの開発プロジェクトにおける新たな需要も期待される。
また、今後は提案型ビジネスへの転換に加え、利用用途の拡大やアフターコロナに向けた投資が増えることも考えられ、監視カメラ世界市場は成長すると見込んでいる。
■セキュリティ関連国内市場調査(富士経済・1月公表)
2019年の監視カメラ市場は、従来型のアナログCCTVカメラのリプレース需要を獲得する高画質な同軸HDカメラがけん引することで、アナログカメラ市場の縮小に歯止めがかかり、IPカメラを含めた監視カメラ全体の需要が旺盛で前年比2ケタ増となった。
2020年は、景況感の急速な悪化によりセキュリティ関連予算の削減や新設・リプレース計画の見直しなどが増え、市場は縮小するとみられる。タイプ別には、アナログカメラは、生産の絞り込みが行われたアナログCCTカメラの減少が続き、同軸HDカメラへのシフトも飽和感が見え始めたことから、今後も縮小するとみられる。IPカメラは2020年に縮小するものの、小売店舗や商業施設、オフィスビルなど幅広い施設で採用されていることや、リプレース案件でもアナログカメラからIPカメラにシフトしていくことで今後も市場の拡大が予想される。
モノ売りからコト売りへビジネスモデルの転換をはかるメーカーが増加している。画像解析/AIを活用したソリューション開発が盛んであり、近年は監視カメラに画像解析/AI機能を内蔵したAIカメラの投入が増えている。工場などの製造現場、公共インフラで需要が高まっており、今後は、ユーザーの認知が進むと共に、AIカメラの需要は本格化すると予想される。