25FY(19FY比)目標 2割増収、営益50億円  古河電工のエネルギーインフラ事業

再エネ向けを加速
国内 超高圧地中線に注力

古河電工 小塚崇光執行役員専務


古河電工の小塚崇光執行役員専務エネルギーインフラ統括部門長らは7日、エネルギーインフラ(電力事業+産業電線・機器事業)事業説明会を行った。黒字基盤確立を目標に21FYは、売上高1千50億円(前年度比4.1%増)、営業利益10億円(同―)を目指す。中期計画では、25FYに売上高が19FY比2割増、営業利益50億円、30FYには売上高19FY比で5割増以上に設定した。今後は、再生可能エネルギー・国内超高圧地中線事業を中心に、SDGsを意識した事業展開の強化を図る。


古河電工のエネルギーインフラ(電力事業+産業電線・機器事業)事業は、黒字基盤確立を目標に取り組み、21FYには売上高1千50億円(前年度比4.1%増)、営業利益10億円(同―)を目指す。
特に、再生可能エネルギー・海底送水管事業を中心に、SDGsを意識した事業展開を強化する方針だ。電力事業は、次期中計に向け五大施策(四大施策+新施策)を推進する。うち四大施策は、これまでの継続となり、①受注確保、②ケーブル製造能力の増強、③工事施工能力の増強、④技術開発を、それぞれ推進する。さらに新施策として、⑤再生可能エネルギー・直流事業の強化を図る。
産業電線・機器事業は、ウイズコロナの市場動向に応じ、さらに事業体質の改善を推進する。具体的には、ⅰらくらくアルミケーブルの拡販推進、ⅱ再生可能エネルギーやデータセンター、防災・減災関連用途の需要取り込みを進める―とした。
8年間の設備投資は^n21FYに5割が完了予定
このうち電力事業の五大施策の具体的展開をみると、

①受注確保では、従来戦略を維持し「アジアのメインプレーヤー」を到達目標にしながら、セグメントを絞って特定分野に注力する。具体的には、a国内超高圧地中線の25FYシェアが50%以上、b国内再エネ(海底線+地中線)の25FYシェアは50%以上、c海外海底線(アジア)で高品質対応を強化する。ターゲット市場(国内)売上高比率は、20FYの約40%を25FYには約65%に引き上げるとした。

②ケーブル製造能力の増強は、25FYまでにケーブル製造能力を17FY比で2倍にする。これは国内超高圧地中線と再生可能エネルギー(海底線+地中線)の需要増、さらに海外大型海底線の長尺製造に対応するためとした。また、生産性改善については、絶縁押出し長尺化(接続部削減)などの生産技術開発の推進により、品質向上と納期短縮を図る。また、8年間(18~25)累計で150億円規模の設備投資(千葉工場)を計画通りに進め、21FY中には、計画の5割が完了する予定だ。内訳は、海底線対応で約50億円投資し、接続部削減により長尺海底線製造能力を2・5倍にする。生産性向上などに約100億円投資し、千葉第2工場は既に再稼働しており、今後は設備更新とシステム化投資を継続し生産性を2倍超にする。

③工事施工能力の増強は、25FYまでに工事施工能力を17FY比2倍にし、電力会社向け幹線更新の需要増と再エネ案件向け工事の増加に、それぞれ対応させる。人員増強や提携協力会社数の拡大、施工効率性の高い接続部品の導入、工事需要の高い地域への拠点開設により、顧客サービスの向上と効率化を図る。

④技術開発の推進では、再エネと直流分野に注力する。主に、浮体式洋上風力発電向け超高圧ダイナミックケーブルの開発を一層進め、さらに緊張係留方式用海底送電システムの開発も推進する。一方、海底・陸上向け直流52万5千V押出絶縁ケーブルシステムの長期実証試験は完了し、今後は直流押出絶縁ケーブル用石化材料の安定供給態勢の構築を図る。加えて、直流深海ケーブルの開発、海外海底線および国内洋上風力向け海底線における国際規格への対応などを推進する。

新施策の⑤再生エネ・直流事業の強化では、再エネ関連の広域連携線の市場拡大に応じ、海底直流送電線の売上高を25FYには、20FY対比で4倍以上に伸ばす。高品質なケーブルの製造・供給ノウハウに、エンジニアリングサービスを加えた新戦略を打ち出す方針。同社が国内外のプロジェクトで培ってきたノウハウを活用し、アセットライトなビジネスモデルを創出する。

国内の再エネ市場規模(海底線+地中線)
25FYには500億円

一連の電力事業の需要背景として中期的には、a従来の電力会社向けに加え、b再生可能エネルギープロジェクトの立ち上がりで、国内市場の拡大が加速することを主因とした。
a従来の電力会社向けでは、幹線更新(OFケーブルからCVケーブルへの張り替え)を背景に需要は倍増し、国内超高圧地中ケーブルの市場規模は、現行100億円程から、25FYには200億円程に達する見込み。つまり全国規模で、各電力会社の電力ケーブル網の維持・更新需要が増えると期待される。連動して、工事能力の逼迫に対応し、電力会社と長期計画を共有することが必要になる見込み。
b再エネルギー案件の立ち上がりでは、洋上風力発電導入で市場が急拡大する見込み。国内再エネ(海底線+地中線)市場規模は、現行約100億円から25FYには500億円に拡大する模様。既に、再エネ海域利用法による促進区域指定が進み、20年7月に3カ所(4区域)が指定され同年11月から発電事業者の選定のため公募手続きが行われている。なお、産業電線・機器事業の取組は、次号に掲載予定。

電線新聞 4243号掲載