電気の豆知識 ~いつか役立つ⁉︎ 電気にまつわる雑学篇~ 「レンジでピロリロリ~♪」

お弁当、温めますか?

 コンビニの店員さんの問い掛けに「はい、お願いします」と答えれば、ものの1分でホカホカのお弁当がいただけます。「いえ、結構です」と家へ持ち帰って冷蔵庫に入れておいても、食べたいときに“チン”すれば、やっぱりお弁当はすぐにホカホカです。インスタントラーメンでさえ3分かかるというのに。

 この魔法のごとく便利な電子レンジが開発されたのは1945年頃といいますから、今からおよそ80年前。アメリカのレイセオン社で技術者として働いていたパーシー・スペンサーさんは、甘いものが好きだったのでしょうか、ポケットにチョコレートバーを入れていました。そしてレーダー装置の実験をしていたところ、ポケットの中のチョコバーが溶けていることに気づきます。「オーマイゴッド!」といったかどうかは知りませんが、これがマイクロ波の仕業だとわかり、電子レンジの基本原理につながったとされています。その後、発売された世界初の電子レンジは、高さ180cm、重量340kg、消費電力3000Wという巨大なものだったそうです。

温まらない消費者の反応

 日本では、1959(昭和34)年に東京芝浦電気(現在の東芝)が日本で初めて電子レンジを開発。 その2年後に市販第1号機を発売し、汎用電子レンジのデビューとなりました。

また、国際電気(現在の日立国際電気)も業務用電子レンジを開発し発売。さらにその翌年、早川電機(現在のシャープ)が業務用電子レンジを量産し、発売しています。価格は54万円! 大卒の初任給が約1万7000円でした。そして、「いざなぎ景気」が始まった1965(昭和40)年、松下電器産業(現在のパナソニック)から家庭用の電子レンジが発売されます。しかし、当時の電子レンジは高級品であり、温めたり解凍したりするだけの調理機になぜそんな高いお金を払う必要があるのかと、消費者の反応は電子レンジとは逆に冷めていたようです。

どうしてレンチン?

 近頃はむしろ「レンジでピー」や「レンジでブー」です。「レンジでピロリロリ~♪」もあります。温め終わったことを知らせる音が最近はピーやブーといった電子音か、あるいはメロディーなのです。「レンジでチン」、略して「レンチン」の語源となった「チーン」という甲高い音は少数派で、今はより優しい音色になっています。確かにあの「チーン!」という響きは、夜中だと家族どころか隣人にまで迷惑ではないかと少し心配になりますし、なにより自分が驚きます。

 最初、音はなかったそうです。すると、「温め終わったことに気づかず、料理が冷めてしまう」というクレームが多く寄せられたため、試行錯誤の末、「チン」にたどり着いたのだとか。開発したのはシャープの社員の方。ある日、社内行事で行ったサイクリングで、自転車のベルの音にみんなが振り返るのを見て、「これだ!」とひらめきました。電子レンジの発売当初は飲食店などで使われることが多かったため、調理場の喧騒の中でも聞き取れる音でなければならなかったのです。クレームを解消しただけでなく、「電子レンジで温める=チンする」という言葉を生み出した、これも一つの発明といえるのではないでしょうか。

電子レンジで料理を作ろう

 今や、ほとんどの家庭にある電子レンジ。数千円のリーズナブルなタイプから十万円以上の多機能型まで種類も豊富です。最近では、温めるだけでなく蒸したり焼いたりできるスチームオーブンレンジなどが人気で、それに伴って料理レシピも多彩になっています。肉じゃがも舌平目のムニエルも鳥の唐揚げもビーフストロガノフも、食べたことのないような料理だって何だって作れてしまいます。皆さんも挑戦してみてはいかがでしょう。