太陽光発電協会 太陽光発電コスト 低減可能性調査

主力電源としてさらに 導入拡大目指すために
業界が取組む姿勢示す

太陽光発電協会(JPEA)はこのほど、太陽光発電コスト低減可能性調査の結果を公表した。日本とドイツの発電・EPC事業者を対象に、発電所規模、売電価格、運開年、設置場所等を調査・ヒアリングした。
日本はドイツとの比較でコスト高とされているが、詳細な比較・分析やエビデンスはなく、具体的にどのようにしてコストを下げるか業界として取組む必要性があった。今回、第6次エネルギー基本計画の策定に合わせて業界がコスト削減に取組む姿勢を示すべく、定量的な評価を基に方向性を示し、2050年に向け導入拡大(導入目標アップ)をはかるためデロイトトーマツコンサルティングの協力を得て実施した。
調達価格等算定委員会の発電コスト目標(2025年:7円/kWh)に対して、JPEAが表明している2025年にトップランナー7円/kWh、2030年までに業界平均7円/kWhの目標達成に向けて調査・分析を実施。業界による自助努力とそれ以外の政策支援が必要な方向性を其々示すことでコスト削減に役立たせるとともに、将来の主力電源としてさらに導入拡大すべきと訴求するためのエビデンスとする。

日本とドイツのコスト比較

日本とドイツの発電コスト(LCOE)の差は2.2倍で、そのうち建設費(CAPEX)が2.9倍、O&M費(OPEX)が1.5倍となっている。建設費の差は13.7万円/kW(64%)で、内訳では工事費・設備費・開発費の順に大きい。
工事費は、農地設置による造成費用の削減がもっとも大きく、機械化・PV施工方法(標準化)による差異もあり全体で6万円/kWの差となっている。内訳は、造成等が2・3万円/kW、機器設置が2万円/kW、付帯工事が0.9万円/kW、電気工事が0.8万円/kWとなっている。
設備費は、設置環境による仕様の差異も一定程度コスト差の要因とみられるが、直接調達による差も大きく全体では4万円/kWの差となっている。内訳は、太陽電池が1.6万円/kW、架台が1.0万円/kW、インバータが0.7万円/kW、変電設備が0.5万円/kWなどとなっている。
開発費は、ドイツでは農地・耕作地の地価が安く短期間で許認可を所得可能なことから3.6万円/kWの差が生じている。内訳は、土地が1・7万円/kW、許認可等が1.6万円/kW、系統接続が0.4万円/kWとなっている。

発電コスト削減シナリオ

経済産業省調達価格等算定委員会の2025年発電コスト目標7円/kWhを達成するには、造成不要の平坦な土地を確保し、かつ工事費・設備費の大幅な削減をはかる以外にはない。
工事費のコスト削減4.5万円/kWのうち、平坦な土地活用で2.8万円/kW(62%)、その他高効率機器の採用や工期短縮等で1.8万円/kW(40%)削減できるものとみている。平坦な土地への設置により、その他コスト(仕様・物流)削減効果も一定程度見込まれる。
設備費のコスト削減3.9万円/kWのうち、習熟効果が3.1万/kW(79%)、直接調達が0.6万円/kW削減できるものとみている。高効率モジュール採用や高電圧対応ケーブル等の削減効果よりも削減効果が大きく、各社事業環境が異なるものの調達コスト改善への取組みが必要となる。
開発費のコスト削減は全体で0.9万円/kWで、農地は地価が高く許認可費用等と合わせても0.4万円/kWの削減効果となっている。そのほか、高効率モジュール採用が0.3万円/kW、系統接続(ノンファーム接続)が0.2万円/kWとなっている。

その他

 ◇工期短縮
欧州にはPV施工専門業者が多数存在し、ノウハウ蓄積・ラミング杭打設置既機導入工法標準化で工期短縮を実現している。

 ◇荒廃農地の転用・除外
全市町村対象の荒廃農地発生要因アンケートをみると、荒廃農地のうち約30%が農地転用・除外により太陽光発電設置可能性があると設定される。

電材流通新聞2022年3月10日号掲載