電気の豆知識~いつか役立つ!? でんきの雑学篇~その4 静電気の不思議

セーターを脱ぐとパチパチパチッ! ドアノブにさわるとビリッ! 女性の手にふれようとするとバチッ!? 突然の電撃、地味に痛い静電気は、なぜ起こるのだろう? それでは、静電気の仕組みを“子どもの科学本”風に解説してみよう。

静電気って、なに?

地球上にあるすべての物は、酸素や水素、炭素、塩素といった原子でできているんだよ。そう、きみたちの体もね。原子は、肉眼ではもちろん普通の顕微鏡でも見えないほどの小さな粒で、サイズはだいたい0.1nm(ナノメートル)なの。つまり、100億分の1メートルだ。その微小な原子は、プラスの電気を持つ原子核とマイナスの電気を持つ電子で構成されていて、プラスとマイナスはいつもバランスを保ちながら電気を打ち消しあっているんだけれど、二つの物をこすり合わせたりすると、バランスが崩れて電気が外へ出るんだ。これが静電気だよ。うーん、難しくてよくわからないね!

静電気とは、簡単にいうと、二つの物がこすれ合う摩擦によって生じる電気のこと。小学生の頃に誰もがやった、下敷きを頭にこすりつけて髪の毛を逆立てるあの遊びも静電気だ。人が動けば体と空気、体と衣類、体と地面など、さまざまな摩擦が起こる。

ドアノブにさわるとビリッとなるのは、人体にたまっていた電気が金属に向かって一気に放電されるから。人の体はいつも静電気を帯電しているのだ。動かずその場にたまるので「静」電気と呼び、普段の生活で私たちが使っている電気は常に流れているので「動」電気と呼ぶ。

静電気を見つけたのは、だれ?

静電気の存在は今からおよそ2600年前、古代ギリシャの哲学者であるタレスによって発見された。万物の根源は水であると説き、また、日食を予言したギリシャ七賢人の一人だ。

ある日(かどうか知らないが)タレスは、アクセサリーの琥珀(こはく)に付いたホコリを取ろうと布(たぶんだけど)で磨いていた。しかし、磨けば磨くほど余計にホコリが付いてしまうではないか。「なんでやねん」と思ったタレスは、琥珀を磨くとホコリを吸い寄せる不思議な力に気づいたのだった。しかし、これが静電気だとわかるのは、2000年以上も後のことになる。

良い静電気、悪い静電気?

バチッ!痛ーっ! というくらいなら笑って済むのだが、化学工場などでは毎年、静電気による事故が発生している。静電気の放電が可燃性ガスや液体に引火して爆発や火災が起きているのだ。そのため、特に可燃物や危険物を取り扱う工場などでは静電気対策が入念に行われている。また、身近なところでは、セルフ式ガソリンスタンドにも静電気除去シートなどが設置されている。むろん、実際に火災などが起きているからだ。静電気は他にも、電子部品の製造工場でデバイスを壊したり、パソコンなどの電子機器の誤作動を引き起こしたりと、意外に厄介な存在だ。

一方、私たちの暮らしや仕事に役立っている静電気もある。例えばコピー機やレーザープリンター、自動車の塗装、エアコンや空気清浄機のホコリ等を除去する機能など、静電気は見えないところで静かに活躍しているのだ。JAXA(宇宙航空研究開発機構)の小惑星探査機「はやぶさ」に搭載されているイオンエンジンにも静電気の応用技術が使われている。

静電気は何ボルト?

痛みを感じるほどの静電気となると3000ボルト以上、最大は1万ボルトとも3万ボルトともいわれる。家庭用電気の30~300倍という高電圧だ。なぜ感電死したりしないのかというと、皮膚による抵抗がかかった瞬間に電圧が下がるのと、電圧は高くても電流が非常に微弱なため。しかし命に別状はなくても、けっこう痛い。

静電気かんたん防止法

湿度をアゲアゲ

気温25℃以下・湿度20%以下になると静電気が起こりやすいらしい。冬にバチッ、ビリッっとくるのはこのためだそう。つまり、温度と湿度を上げれば静電気は起きにくくなる。特に湿度と静電気は密接な関係にあり、空気が乾燥していると静電気が発生しやすいので、加湿器などを使って適度な湿度を保つと良い。

壁や地面をペタペタ

ドアノブやクルマのドアといった電気を通しやすい物に触れる前に、壁や地面を手のひらでペタッと2、3秒さわっておくと、電撃をくらわずに済む可能性が高い。これは、コンクリートやアスファルト、石や土などがゆっくりと電気を通すため。木材やクロス紙の壁でもいい。だが、電気を通さないガラスやゴム、プラスチックなどは不可。

スカートをギュッギュッ

静電気でスカートが脚にまとわりつくと不快だし、せっかくのおしゃれも台なし。そんなときは、両手でスカートの裾をまとめてギュッギュッと軽く絞るようにして握れば、静電気を逃がすことができる。何回かに分けてスカート全体をまんべんなく行うと効果的だ。

静電気おもしろ実験

光る蛍光灯

大人になると、さすがに下敷きを頭にこすりつけて遊んだりはしないだろうが、これはきっと、大人でもやってみたくなるだろう。

〈実験方法〉

①Aさんがウールのセーターを着る。

②セーターを着たAさんを、Bさんが風船でこすりまくる(静電気をためる)。

③Bさんが蛍光灯の端を持ち、もう一方の端をAさんがさわると、光る!

曲がる水道水

プラスチックの定規が1本あれば1人でもできる実験だ。あなたもきっと、やってみたくなるだろう。

〈実験方法〉

①定規を脇に挟むなどして、こすりまくる(静電気をためる)。

②少なめの水量で流しっぱなしの水道水に近づけると、曲がる!