きらめく海へレッツゴー!
誰が何といおうと、夏といえば海です! 海と戯れない夏なんて、流れのいい排水管のようなもの。つまり、そのこころは、ツマラナイ……。さて、つまらない話で気持ち良くスベったところで、今回は海の生物にスポットを当ててみましょう。
七つの海と称される世界の海はすべてつながっていて、陸地全体の2倍以上の広さがあり、地球の表面積の約70%を占めています。そして、そのほとんどが深さ2000m以上の深海です。人間が素潜りで到達できる水深は百数十メートルほどですが(それでも驚異的)、世界で最も深いマリアナ海溝は1万920m。地上最高峰のエベレストをはるかにしのぐ距離です。
そんな広くて深い海は不思議に満ちています。私たちが波と戯れるとき、海は太陽の光を浴びてキラキラと輝いていますが、夜の海や暗くて冷たい深海にさえ、“光”は存在するのでした。
発光生物の8割が海にいる?
光る生き物といえば、真っ先に思い浮かぶのは昆虫のホタルでしょう。光る種はお尻の辺りに発光器があり、求愛のために光を放つと考えられています。たくさんのホタルが森の水辺を乱舞する風景は、まるで夢の世界のように幻想的です。しかし、ホタルだけではありません。自然界には光る生物が数多く存在します。カタツムリもミミズもキノコもコケも光ります。地球上の発光生物は数万種ともいわれており、その8割が海に生息しているといいます。
色とりどりに光る不思議
クシクラゲ
よく知られているのが深海魚のチョウチンアンコウです。まさにその名の通り、頭から提灯をぶらさげたような格好で、丸い魚体と大きな口はどことなくユーモラスであり、まるで「暗いから、あかりつけまひょか」とでもいっているような。でもこのチョウチン、デンキウナギのように自ら発電しているのではありません(「電気の豆知識」バックナンバー2020.07.02)。その光の正体はバクテリア。チョウチンアンコウの頭に付いている“提灯”の中には発光バクテリアが共生しており、それを光らせて、餌となる小魚などをおびき寄せているのだそうです。
クラゲの仲間も光ります。漆黒の海に妖しく浮かび上がるその姿は、もはや宇宙空間を漂うエイリアンのよう。クラゲと一口にいっても多種多様ですが、お椀を逆さまにしたような形のオワンクラゲは体内に発光する細胞があり、刺激を受けるとお椀の縁がグリーンに彩られます。また、多彩な光を放つクシクラゲは、実はクラゲでもなければ自ら発光しているわけでもないのですが、櫛板(くしいた)と呼ばれる細かな繊毛が波打つように動き、そこに光が当たると反射して輝きます。それはまるで七色のイルミネーションのように美しく、水族館などでも人気があるようです。
深い海ばかりではありません。月明かりに照らされた海面、寄せては返す波が青白く輝いているのを見たことはないでしょうか。その実態はプランクトンの一種である夜光虫や甲殻類のウミホタルですが、とてもロマンチックな現象です。そういえば、人気漫画『キン肉マン』に登場するザ・ニンジャの得意技も「忍法夜光虫」でした。
バクテリアは電気が大好物!?
生命の源である母なる海には、まだまだ不思議な生き物がたくさん暮らしています。深海に住むバクテリアの仲間には、なんと電気を食べる“変わり者”がいるのだとか。チョウチンアンコウの提灯の中にも生息しているバクテリアとは、肉眼では見ることのできない原核生物で、他の生物の死骸や糞などを食べている種が多いようですが、電気を栄養にするこのバクテリアは電気細菌などと呼ばれ、鉱物の中に存在するといいます。それも驚きですが、深海に電気があるというのも驚きです。話が専門的すぎて詳しくはわかりませんが、海底から噴出する熱水が岩石に触れると電流が生じるのだそう。
こうした深海の現象や発光生物のメカニズムは長年研究が進められており、将来、電気エネルギーへの応用などが可能になるのかもしれません。いえ、もしかすると、私たちが“発光人間”になる日がやってくるかもしれません。