電気の豆知識 ~いつか役立つ!?電気にまつわる雑学篇~ 「万博に見る未来の乗り物」

ダイハツの電気自動車

1970(昭和45)年3月15日から9月13日までの183日間、大阪府吹田市の千里丘陵で日本万国博覧会が開催されました。 俗にいう大阪万博です。「人類の進歩と調和」をテーマに76カ国が参加したその世紀の一大イベントには、世界の人々を驚かせる新しいモノがたくさん登場しました。たとえば、ワイヤレステレホン、エアドーム、動く歩道、回転ずし、缶コーヒー、ファストフードやファミレスなどなど。そして、広大な会場には“未来の乗り物”が走っていました。

四角い車体で、カラーは白と淡いピンクの2種類。6人乗りで、時速は10km前後。ダイハツ工業が「ハイゼットバン」をベースに造ったEV、電気自動車です。会場内を巡るタクシーとして、パビリオンカーやプレスカーとして計275台がお目見え。当時の日本は公害が社会問題となっており、また、環境問題が世界共通の課題となる中で、ガソリンを使わないこのクルマに大きな関心が集まりました。

三菱の「トラベーター」

でも、もしかすると、来場者が電気自動車よりも驚いた“乗り物”は「動く歩道」だったのかもしれません。

大阪万博に登場した「動く歩道」は「三菱未来館」の展示演出で、名称は「トラベーター」といいます。パビリオン内の5つの展示室を全長約152m・分速約16mの「トラベーター」に乗って巡るという趣向で、徒歩よりもゆっくりとしたスピードでしたが、それは人々が初めて体感する“未来の道”でした。

実は、日本初の「動く歩道」は1967(昭和42)年に大阪市の中心地で始動しています。現在も多くの人が利用する阪急梅田駅近くの「ムービングウォーク」です。そう、設置されたのは大阪万博が開催される3年前なのですが、三菱の「トラベーター」が「動く歩道」を一気にメジャーに押し上げ、その後、全国に普及しました。

ちなみに、興味深いのが「三菱未来館」の展示です。当時のパンフレットの一部をご紹介しましょう。

「家事はすべて機械がやるために、主婦は電子チェアにすわって、家事プログラムに合わせたボタンを押すだけ」

「会社は、24時間業務を続けるが、人間の働く時間は1日4時間に短縮される」

「勉強の場は家庭に移り、テレビ放送で教育を受けるように。学校そのものは、遊びや体育を通じて『人間性や団体生活を養う』場に」

「ガンは克服され、交通事故以外では手術も必要なくなる」

「スポーツは盛んですが、遊びではなく『日常的な義務スポーツ』に変わっていきます。グライダーや海底散歩が一般的に人気に」

このように、“50年後の未来”を詳細に予想しています。海底散歩はまだ一般的ではありませんけれど。

そして、そこからさらに5年後の2025(令和7)年4月13日、再び大阪で万博が始まりました。

「大阪・関西万博」のスマートモビリティ

「大阪・関西万博」に登場した未来の乗り物といえば、なんといっても“空飛ぶクルマ”でしょう。これまで私たちが想像していた、SF映画などに出てくるタイプとはずいぶんイメージが違いますけれど、まあ、それはさておき。

開幕前は商用運航が計画されていたので、「さすがは万博、空から会場へアクセスできるのか」と期待しましたが、残念ながらデモ飛行になりました。ガソリンやジェット燃料を用いれば、もっと簡単に実現できるのでしょうね。知らんけど。やはり、これからの乗り物だけに、環境に配慮した“電動”というのは大きなポイントです。

「大阪・関西万博」の公式サイトによると、今回の万博は「スマートモビリティ万博」であり、カーボンニュートラルが実現された未来社会の姿を描き出すとのこと。

具体的には、旅客船としては国内初の水素と電気のハイブリットで航行する水素燃料電池船、自動運転および走行中給電といった新技術を融合させたEVバス、そして次世代モビリティとしての空飛ぶクルマなど、未来社会の実証実験の場となっています。

皆さんもぜひ一度、体験・体感してみてはいかがでしょう。