ジャンボでびっくり!ビッグデータの話

もう無関係ではいられない

「すみませんが、日本語でお願いします」といいたくなる。もしくは「おサルさんでもわかるように」お願いしたい。そんなタイトルの入門書もたくさんあるでしょう。コンピューター関連の話だ。IT関連といったほうがいいのだろうか。アナログ人間には、それさえもわからない。わからないけれど、わからないなりに頑張って、ようやく理解したかと思えば、また新しい技術やら仕組みやらが登場する……。ITの世界は日進月歩というより、果てしなく広がる宇宙である。それを遠くから眺めているだけなら楽しいのだが、好むと好まざるとに関わらず、私たちは宇宙と交信しなければならない。どのような職種であっても、たとえアナログ人間であろうとも、私たちは現代人は、コンピューターと無関係ではいられないのだ。

最近よく聞く「ビッグデータ」って何だ?


下をかみそうなカタカナや難解な専門用語がオンパレードのIT関連にあって、「ビッグデータ」とは、また珍しく親しみやすい名称ではないか。PCだのOSだのIoTだのと、すぐ略したがるのに「BD」と略さないのも珍しい気がする。ともあれビッグデータを辞書で引くと「膨大なデータ」。そのままだ。もう少し詳しく調べてみると――コンピューターや通信機器などが仕事や暮らしに広く利用されることで、日々刻々と生成されている多種多様なデータの膨大な集積のこと――だそう。データの量や種類などに規定はないらしい。つまり定義が曖昧なのだが、数百テラバイトからペタバイト級のデジタルデータだという。テラ? ペタ?
テラバイト(terabyte)は、コンピューターで扱われる情報量などの単位で、TBと略記する。1テラバイトは1024ギガバイト=約1兆995億(2の40乗)バイトである。ペタバイトも同じく情報量などの単位で、PBと略記し、1ペタバイトは1024テラバイト=約1126兆(2の50乗)バイトである。……らしい。


とにかく、その膨大でビッグなデータとは具体的にどんなものかというと、例えば、会社のパソコンで作成された文書やメール、ツイッターやフェイスブックなどのSNSで発信されるコメントやプロフィール、ウェブで配信される音声や動画、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの購買情報、カーナビゲーションシステムの走行記録、医療機関の電子カルテなどなど、ありとあらゆるデータだ。それが膨大な量になることは、なるほど素人にも想像がつく。というより、想像を絶する量なのだろう。

男は、おむつとビールを一緒に買う


それで、そのビッグデータが一体どうしたのかというと、すでに私たちの身の周りで活用されているのだ。ビッグデータの話をするとき、ある有名なデータマイニングの事例を引き合いに出すことが多いようだ。ちなみにデータマイニングとは、企業などが蓄積した大量のデータを分析し、価値ある情報を抽出する方法のこと。その有名な事例が〝夕方、おむつを買う男性はビールも一緒に買う〟である。

妻「ちょっとあんた、ゴロゴロしてないで子どものおむつでも買ってきなさいよ!」
夫「い、いま行こうと思ってたのになあ~」

おそらく、このような夫婦の会話があって、文句をいいながらも車で買い物に出かけた男性は、おむつを買うついでに自分のビールも買う確立が高いという、米国の大手スーパーマーケットのデータ分析だ。そこで、おむつとビールを並べて陳列したところ、売り上げが増えたという。
陳列棚に商品を並べたり、新聞広告やチラシなどをレイアウトする際は、〝Zの法則〟が一つの常識になっている。

商品や広告を見る消費者の視線は「Z」の文字のように移動するという法則である。飲料メーカーのダイドードリンコもこの法則に従って、自動販売機の左上に主力商品を配置していたそうだ。ところが、自動販売機にセンサーを取り付けて調査し、データを収集・分析した結果、消費者の視線が自動販売機に限っては下段に集中していることがわかったという。そして、主力商品を下段に配置して売り上げを伸ばした。ビッグデータが常識を覆したというわけだ。
少し前になるが、「PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)」にはこんな記事が載っていた。

コンビニエンスストアのローソンが31位の菓子パンを売り続けるのはなぜか、というような内容である。
「ほろにがショコラブラン」は、ローソンの菓子パン部門で売上順位が31位だったそうだ。売れ筋商品ではないし、そのままだと消える運命にあったのかもしれない。しかし、ポイントカードなどによる購買情報を分析した結果、一部のヘビーユーザーが頻繁にリピート購入しているのがつかめたという。つまり、「ほろにがショコラブラン」の販売をやめると、大事な顧客を逃がしてしまう可能性があるのだ。売上順位や売上高がすべてではないということがわかる。

電設関連のビッグデータ活用
電設関連において、暮らしに身近なビッグデータ活用といえば、やはりスマートメーターだろう。

ここで説明するまでもなく、スマートメーターとは通信機能を備えた次世代型電力計のことであり、現在、置き換えが進められている。一般家庭、オフィス、店舗、工場など、リアルタイムにきめ細かく集約されるデータはまさに膨大だ。それを分析することで、多様なニーズに沿った料金体系や新しいサービスをつくりだすことができるだろう。また、家電製品と接続して使用電力を抑制し、電力の供給を機動的に制御することも可能であり、季節や天候に左右されやすい太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーが使用しやすくなるなど、さまざまなメリットがあるようだ。ちなみに関西電力のホームページには、「スマートメーターの膨大な検針データ(ビッグデータ)を分析し、太陽光発電出力の推定精度を向上させました!」とある。電気を取り巻く環境も、時代とともに大きく変化している。

このようにして、ビッグデータはすでに実社会で幅広く活用されており、また、さまざまな分野で新たな活用法が検討されていることだろう。ここに取り上げた事例は、ほんのわずかな一例に過ぎない。ITという宇宙は、今日も果てしなく広がっているのだ。