【北海道電力】道内全停電 「ブラックアウト」発生

北海道電力
北海道胆振(いぶり)東部地震 最大震度7

9月6日に北海道胆振地方を震源とする最大震度7の「北海道胆振東部地震」が発生した。
その影響で、道内の火力発電所が緊急停止し、北海道全域の約295 万戸が停電した。北海道電力の管内全域が停電するのは初めて。
さらに、電気事業連合会によると、管内のほぼ全域で電力が止まる「ブラックアウト」が起きるのも今回が初めてとのこと。なお、停電は8日にほぼ解消された。

● ブラックアウトの原因
地震発生時の道内の電力需要は約310 万kWであり、その半分近くを供給していた苫東厚真火力発電所が緊急停止したことで、電力需給バランスが崩れてしまい、一定であるべき周波数が乱れた。
送電線でつながったほかの発電所の設備や、その先の利用者の電子機器などが壊れるおそれがあったため、連鎖的にほかの発電所もすべて停止し、道内全停電(ブラックアウト)となった。
● 苫東厚真火力発電所の概要
苫東厚真火力発電所は、1号機(35 万kW)、2号機(60 万kW)、4 号機(70 万kW)があり、合計165 万kWとなる。
なお、3号機はすでに廃止済みである。

● 苫東厚真火力発電所の被害状況
地震発生後、苫東厚真発電所の1号機と2号機では、ボイラ管の損傷により蒸気漏れが発生、4号機はタービン付近から出火した。

● 節電の呼びかけ
苫東厚真火力発電所の停止分を補うため、水力発電所やほかの火力発電所を早急に再稼働させ、併せて北本連系設備60 万kWを活用した本州側からの電力融通も行った。
その結果、ピーク供給力は356 万kWになる。しかし、北海道エリアの地震前のピーク需要は383 万kWとなるため、こうした対応をとってもなお供給力が足りない。そのため、不足分の10 %程度の節電が必要となり、そこで同社は8日に「節電のお願い」を出した。
併せて苫東厚真発電所1号機の復旧も急務とした。1号機の35 万kWが回復することで、ピーク供給力は合計391 万kWとなるため、計画停電や節電は不要となり、電力需給は安定することになる(第1図)。

● 苫東厚真火力発電所の復旧状況
苫東厚真発電所1号機は、19日に復旧した。1号機の復旧により供給力を上積みすることができたため、「できる限りの節電」(節電タイム(平日8時30 分から20 時30 分)において、需要減1割確保)に取り組んでいたが、今後は、例年のように冬に向けての「無理のない範囲での節電」をお願いするとのこと。
4号機は9月25 日に復旧した。2号機は10 月中旬以降に復旧する見通しである。

● そのほかの被害状況
地震による土砂崩れで多くの電柱に被害が出た(写真1、写真2)。

 9月16 日時点での同社の被害状況は以下のとおりである。

【送電設備の状況】
No.71、No.107 鉄塔倒壊( 地滑り)、No.52 鉄塔基礎損傷のおそれ(周辺地の地崩れ)

【配電設備の状況】
支持物は折損、傾斜、損壊、流失などで計327 箇所、電線は断線等で295 箇所、変圧器は損傷と傾斜で396 箇所の被害。

● 電力各社から応援派遣
地震発生直後より、電力各社から1 706 名、高圧発電機車151 台の応援派遣があった。

オーム社「電気と工事」2018年11月号掲載