古河電工 低ヤング率耐熱無酸素銅 パワー半導体を高性能化

 古河電工は11月27日、低ヤング率耐熱無酸素銅「TOFC」を開発したと発表した。2025年度中の量産・販売開始を予定している。

 ヤング率とは、材料が弾性変形する際の応力とひずみの比例定数で、材料の硬さや変形しにくさを表すもの。同製品は、一般的な無酸素銅よりヤング率が低く、高い熱伝導性を維持したまま、高温下でも軟化しない耐熱性を実現。はんだ付けや樹脂接合が行われる300℃以上でも無酸素銅の硬さが維持できる。また、600℃以下の領域でも一般的な無酸素銅より低いヤング率を保つことに成功しており、熱膨張率が異なる部材間の接合界面で生じる剥離などが抑制されるため、大幅な接続信頼性の向上が期待できる。

 このような特長を持つ同製品は、パワー半導体モジュールの放熱板や端子用途に適している。また、熱性が要求される大電流用バスバーなどに用いることで、一般無酸素銅やタフピッチ銅と比較して高温使用時の強度低下を抑制でき、再生可能エネルギーのインバータ用途やxEVのパワーコントロールユニットなどへの展開も可能だ。

 近年、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの活用や、xEV、データセンターなどで、電力の変換・制御を行うパワー半導体の使用が急速に拡大しており、特にSiC(炭化ケイ素)チップなどを使用する次世代パワー半導体モジュールでは、高出力・高性能化に伴い発熱量が増大している。無酸素銅は、その優れた熱伝導性から、放熱基板や端子としてモジュールに搭載されているが、はんだ付けや樹脂との接合時には熱が加わることによる軟化や反りによる接合信頼性の低下、使用時の発熱によって生じる応力による部材間の接合界面での剥離や割れが課題となっていた。

 同社は、TOFCなどを通じ、今後も幅広い用途へ高機能無酸素銅条を提供し、パワー半導体モジュールの高性能化に貢献するとしている。

電線新聞 4415号掲載